お待ちしてました
「とりあえず荷物を置こうか」
「あ、うん……」
これは俺も予想してなかった。まぁ兄妹なのだから同じ部屋になっても不思議ではないんだけど、これまでの俺の人生で伊織と二人きりの部屋に寝るいうシチュエーションは無かった。
こういう時どうしたらいいか困る。
「「あの」」
――こういう時にハモッちゃうあたりは――
「あ~と、伊織がお先にどうぞ」
「え、あ、と、その、わ、私は別にだいっ丈夫だよ。うん」
「そ、そうか……まぁ伊織がイイなら俺も別にいいんだけどな。
「そ、そうだよ!! 兄妹なんだよ!! やだなぁお
わたわたと荷物を下ろしたり持ったり繰り返してるって事は、伊織もまだかなり動揺してるみたいだな。
――俺は特に何も言ってないんですけど、まぁいいや……
それにこの家に入ってから感じるこの空気感の事を少し伊織にも話しておいた方がいいかもしれない。
「伊織」
「ぴゃぅ!!」
――ぴゃぅ!! ってなんだよ。声かけただけでそんなにビックリしなくてもいいのに兄ちゃんちょっとショックだぞ。
「ご、ごめんお義兄ちゃん。なに?」
「あ、うん。伊織は本当に大丈夫なのか? けっこう俺は感じてるんだけど」
「う~ん」
アゴに手をにせて考え出す伊織。
――考え込むことで少し落ち着いたかな?
「私はそんなにつらくなるほどじゃないんだけど、お義兄ちゃんはどんな感じなの? 感情とか流れ込んできたりしない?」
「感情……か。そうだな。なにかいろいろなものが混ざった感情が流れてきてはっきりとは言えないけど、一番強いのは「帰りたい」そう思ってるみたいだな」
「帰りたい……か」
「母さんは何か言ってこないか?」
「残念だけど、この辺りに来てから呼びかけても返事がないんだよ」
「えと、お邪魔かな?」
考え込んでいた俺達二人のそばまで日暮さんが来ていた。
「いや、大丈夫だよ。少し考え事してただけだから」
「そう? 落ち着いたかなって思って。お茶の準備ができたから呼びにきたんだ」
「ありがとう」
日暮さんのお誘いをありがたく受けることにした。のどが渇いていたって事もあるけど、何よりこの辺りの土地に詳しい人たちから話を聞きたいと思ったからだ。そのまま素直に後についていく。
通された場所は客間というか大広間というか、百人程度は入れると思えるくらいかなり広い部屋だった。
外側から見ただけでも大きいとは思っていたけど、中にはいって感じるのはそれ以上かもしれない。
落ち着いた俺達がテーブルのある一角に腰を落とすと、相馬さんがお菓子を日暮さんがお茶を持って入ってきた。
少し遅れて日暮さんのお父さんも何やら古そうな書物を抱えて部屋に入ってきた。
淹れてもらったもらたお茶がのどを潤していく。とても甘くおいしい感じがするくらい俺ののどは相当乾いていて、身体も同じくらい水分を欲していたと感じる。
俺が一心地ついて落ち着いた事を確認するように、周りでも安心したような顔をしてお茶をすすり始める。
様子を見ていた日暮さんのお父さんが、書物を開きながらこの辺りにまつわる話や、伝わってきている話をゆっくりと語り始めた。
語られる話は日暮さんも初めて聞く事が多くあるみたいで真面目に聞き入っている。伊織は何やらメモを取りながら話を聞いている。さすが優秀な妹は違うなぁって感心してしまう。相馬さんはすでに飽きているようで持ってきたお菓子をパクパク口に運び込んでいた。
ゴハンを食べる前にそんなに食べて大丈夫なのかと心配になってくるけど、女の子には言えない。
「――と、言うのがこの土地にまつわる話だよ」
それから一時間ほど話が続いて、その言葉で締めくくられた。
「少し質問してもいいですか?」
「なんだね?」
「この日暮家とはそもそもこの社を守る宮司さんなのですか?」
この家に来てから感じていたことを素直に聞いてみる。
「うちは宮司ではないのだよ。もともとこの社には宮司さんとかはいなくてね。代わりに巫女様のような管理してくれている人たちが代々守ってきたモノらしいんだ」
「では日暮さんの家系というのは……」
「うむ。その巫女様のなかの一人の血筋なんだよ」
明日から行われるお祭りも、巫女様を中心としたものらしい。
それから少し巫女様の話になり聞き入っている間に、日暮さんも明日の舞台の練習の時間が近づいてきたので、俺達二人はは部屋に戻ることにした。
『お待ちしてました』
部屋に入るとすぐに俺は固まった。
伊織が前に廻りこんでくる。
『そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。ここは私の家でもありますし何もしませんから』
その部屋で待っていた
『ようこそ、藤堂クン。お待ちしてましたよ』
彼女は日暮綾香。綾乃の姉である。
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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