写真の霊(ひと)

「――では、明日から夏休みですが羽目を外さないように。以上!!」


 そう言って担任の先生が教室から出ていくと――


「「「よっしゃー!!」」」

「「「夏休みぃぃ!!」」」


 いろいろな声が教室を揺らす。

 俺も楽しみではあるんだけど、高校生になって初めての夏休みだし。

 今までは部屋からあまり外出の予定はなかったけど、今年は少し違う。

 何と言っても今年の夏休みは水着が待っているのだ。しかも四人も!! (伊織を含む)


「さて……と」

 夏休みに入った途端に飛び出していく生徒たち。

 俺はその波に巻き込まれないように、ゆっくりと立ち上がり、誰もいなくなった教室を後にする。

 四月に入学してもうすぐ四か月になるけど、長かったような短かったような…。

 知り合いが増えたし、親友と呼べる存在がそうさせてるのかもしれない。そう考えると、この学校生活は悪くない出だしだと思える。知り合えたのが――女の子ばかりというのが少し気がかりではある……


 ブブブブッ ブブブブッ


――こういうタイミングで電話をかけてくる奴は分かっている……

 ポケットにしまっておいたケータイを取り出して、着信表示の名前を確認する。

「え!? 日暮……さん!? っと、もしもし!?」

「あ、ごめんなさい。藤堂クン?」

「あ、うん。ど、どうしたの?」

 予想外の人物、しかも女の子からと言うだけでブワァ!! って全身から滴るほどの汗が出てくる。夏休みの件もあるし連絡用のアドレスや番号も交換し合ったと言は言え、正直自分にかかってくるとは思ってなかった。


「少し話しておきたいことがあるんだけど、もう帰っちゃったかな?」

「え~っと、まだ学校にはいるんだけど日暮さんはどこに?」

「良かった。じゃぁこのあいだ話を聞いてくれた喫茶店にいるから来てもらえるかな?」

「う、うん。じゃぁこれから向かうよ」


 まさかの出来事に少し動揺してるけど、とりあえず彼女の待つ喫茶店を目指して急いで階段を駆け下りていった。


 喫茶店で待っていた日暮さんは、奥の席に座って本を読みながらコーヒーを飲んでいた。

 俺に気付いて恥ずかし気に片手を胸元までスッと上げる。見たところ今日は相馬さんは一緒じゃないみたいだ。そうなるとちょっと――デートの待ち合わせっぽくて緊張してくる……


「お、お待たせしちゃったかな?」

「あ、いえ、大丈夫です」

 荷物を空いてる椅子の上に置くと自分もコーヒーを注文する。


「藤堂クンにどうしても話しておかなきゃいけないと思ってきてもらったの」

「それはいいんだけど、相馬さんにも言えない事なんだね?」

 日暮さんの体がビクッと震えた。

 仲のよさそうだった相馬も今日は一緒ではない。けれど話しておかなきゃいけない。となるとまぁそんな感じなんだろうと察しはつく。


「藤堂さんはもうお気づきですか? 私の後ろにいてるひとがどういう関係なのか」

「いや、そ、そこまでは良くわかってないけど、なんか……日暮さんを心配してる感じが、割と近しいひとなんじゃないかとは思ってたよ」


――前に会って話した二回、そして今回もだけど、日暮さんの後ろにいるからと言ってなんというか――あまり嫌な感じはしてなかった。

そりゃあ幽霊なんだし基本的には嫌いで苦手なんだけど、すぐに逃げたいとかそんな風には思えないひとなんだよね。


くすっ

 日暮さんが俺を見ながら少し笑う。

 慌てて顔とか確認する。俺どこかおかしかったりするんじゃないかと心配になって。

 日暮さんはそれに手を振りながら否定してくれた。


「あ、違うよ。変だからとかじゃないから。夢乃に聞いてた通りの人なんだぁって思って。あまり話したことないから、けっこうドキドキしてたんだけどね」

「あ、そそ、そうなの? なら良かった……のかな?」

「うん。聞いてた通りの人……だから安心して話すね。藤堂クンが見てる女性はたぶん私のお姉ちゃんだと思うの」

 そういうとスッと写真をテーブルの上に滑らせた。

 俺はその写真とそのひとを比べてみる。確かに同じ顔をしてるし、同じような服装をしてる。


――なぜか写真を一緒に覗き込んで恥ずかしそうに顔に手を当ててるんだけど……

仕草がちょっとかわいいじゃないですか。


 考えてた顔を不思議そうに見ている日暮さん。


「う、うん間違いなくこの女性ひとだね」

 慌てて話を振って誤魔化した。

 幽霊のお姉さんもうんうんとうなずいてるし。


「誰にも言ってないんだけど、お姉ちゃんが前回のお祭りで亡くなった人なんだよ」

「え!?」

「だから調べて欲しいんだ。何があったのか」

「日暮さんは信じてないんだね」

「うん。絶対に違うと思ってる」


 テーブルの上に置いていた手をグッと握りしめる。

 その時の顔が真剣そのもので、俺はこの姉妹の事を信じて調べてみようと思った。






※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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