水着!?
試験が終わった安堵感で少し浮かれながら待ち合わせ場所へと急いでいた。
相談事の名目で日暮さんと会った三日後の放課後、いつものようにカレンの事務所近くのファーストフード店へと向かっている。
隣には俺よりも一日早く試験日程が終わっていた伊織も並んでいる。
あの電話の後、連絡先を聞いて二人と別れた俺はまっすぐに自宅に帰り、事のあらましを伊織に話した。
こういう話などをまとめる能力は、俺なんかよりも
こうしてあれからまだ間もない早い段階で、招集に応えてくれたのも伊織からの説明が大きく関係していることは間違いない。
俺ならばたぶんここまで早く皆に連絡を回すことすら難しかったと思う。
「伊織、今日は何人来るんだ?」
「えと、いつもの人たちに日暮さんも来ていただくので、私達も含めると六人かな?」
「みんなに連絡してくれてありがとな」
伊織の頭をなでなでする。
「ううん。大した事はしてないから」
こちらを向いた伊織の顔が少し赤くなっている。
――ちょっと嫌だったのかな? 怒ったかな?
「お
「は、はい!!」
――少し大きな声で呼ばれてビクッとする。
「あそこでこちらを待ってるというか……こちらを見てる方がいらっしゃるんだけど、もしかしてあの方が日暮さんですかね?」
少し前の交差点でこちらを見ている女の子がいる。
一度しか会ってないけど、彼女の後ろに居る
そして彼女の立つ交差点に近づいたとき、日暮さんからペコっと挨拶をされた
「こんにちは。今日はよろしくお願いします」
「あ、いや、こちらこそわざわざ来てもらってゴメンね」
「大丈夫です……そちらは?」
少し俺の後ろにいた伊織の方を向いた。
「あ、俺の義妹の伊織です。よろしくお願いします。この子もその……視える
「こ、こんにちは。初めまして藤堂伊織です。今日はよろしくお願いします」
「え!? 妹さん……なんですか?」
首をかしげて不思議そうな顔で俺と伊織の顔を行ったり来たりする視線。
――何が不思議なんだろう?
思ったけど言葉にはできなかった。伊織も下を向いてなぜかもじもじしてるし。
「あ、あの、じゃぁそろそろ行こうか。遅れるとうるさいやつがいるからさ」
「そうですか。じゃぁ急ぎましょう」
慌てて三人で走り出した。
そこにはもう三人とも集まっていて、すでにガールズトークの真っ最中だった。
そこに俺だけ一人だったら絶対に話しかけられないだろう。そんな華やかさがその三人のいる一帯から放たれている。事実その席の周りの人たちがケータイを向けたりしているのだから、男の俺が入って行けるような勇気はない。
「ごめんなさい!! 遅れました!!」
「あー!! 伊織ちゃんだぁ~!!」
「キャッ!!」
声を掛けた伊織にカレンが飛び上がりながら抱きついた。
—―それだけを見ても絵になる。それなのにこ四人が並んでるって――贅沢な空間だ。
「あ、あの……俺もいるんだけど……」
「真司君はこちらにどうぞ」
カレンのテンションにどうしていいかわからずにおろおろしてる俺に、響子が自分の席の隣をポンポンとたたいて誘ってくれた。
「お義兄ちゃんはここですよ」
グイっと伊織にひっぱれる形でその隣に座る。
残念そうな顔をした響子とクスクスと笑う双子の妹理央。
「えと、こちらが今回の相談者……でいいのかな? 日暮綾乃さん」
「初めまして皆さん。よろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
――おおう!! そこでみんなでそろって挨拶とか、やっぱりこの三人はコミュ力が高いなぁって感心する。
「で、話って具体的に何なの?」
落ち着いたカレンが日暮さんの隣に座る。
「藤堂クンには少しお話したんですけど、お祭りに関係することを調べて欲しいんです」
「へぇ~。またそういう事になっちゃうんだねぇ」
「真司君らしいと言えばらしいけどね」
なぜか市川姉妹が納得している。
「それと私たちを呼んだ理由って関係してるってこと?」
「うん。お祭りの期間がかぶってるんだ……別荘に行く期間が」
「私たちもう水着買っちゃったからキャンセルはナシよ?」
「水着!?」
その言葉にテンションが上がる。そして少し想像してしまうのは男として仕方ない……
「ううん!!」
「いってぇ!!」
セキ払いと共に伊織に足をギュ~~!! って踏みつけられて我に返る。
「で? どうするの?」
俺はみんなの顔を見渡した。
「えと、その、みんなにも手伝ってもらえないかなって……」
「「「いいわよ」」」
—―俺の頼みは――ホントにあっさりと承諾されたのだった。
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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