ニブちん

 「おまえ、の事言ってたのか!?」

 俺は今更ながら混乱していた。

――確かにそんな話をしてたような気がしているけど、まさか今更そんな話が持ち上がるなって思ってなかったから—―あれからどれくらい経ってると思ってんだコイツ……


「そうよ!! だって約束したでしょ!! だから私が今シンジ君のカノジョなわけよ」

「だって、まさか本気で思ってるなんて考えてなかったし。それに……」

「何よ!?」

カレンがフーフー息を切らせながら聞き返す。

「みんなからそんな事聞かれてもおまえも否定してただろ?」

「あたし、否定した覚えなんて一回もないけど?」

 首をかしげてこちらを向くカレン。


――こんな状況じゃなければかわいいって思っちゃうんだけど。今はそれどころじゃないな。


そんな事言ったって、響子さん達に聞かれた時とか――


あれ? 


セカンドのみんなに聞かれた時とかも――


あれ? あれ??


――た、確かに思い出してみれば、俺が否定してるだけでカレンは一回も否定はしていない!!

ブワッ! っと体中から汗が噴き出してくるのが分かる。


「まて、だいたいあの時のカレンは自分の意識のもとで霊になったわけじゃないんだから、普通は戻ったら記憶とか無くなってるはずなんだよ。そのままなんて事は考えてなかったから想定外だ」


「じゃぁ今から考えなさいよ」

「え!?」

「答えを出せって言ってるわけじゃないわ。考えといてって事よ」


 顔を真っ赤にしてカレンが下を向く。


「あの、え~っと……私ってお邪魔ですかね?」

 部屋にいたけど声を出せずに固まったままだった伊織が涙を眼にいっぱい貯めて聞いてきた。


「え、あ、そんなことないよ伊織ちゃぁ~ん。大好きだよぉ~」

 すぐにカレンが飛びついてまたすりすりし始めた。


 こういう時のカレンって改めてすごいと思う。



 それからしばらくして、言いたいことを言い終えたカレンが帰って行った。

 見送りに行っていた伊織が勢いよく部屋の中に戻ってくる。


なぜか母さんも外側に出て来ていて――


『真司。ちょっとそこに座りなさい』

「はい……」


—―ですよねぇ……


『真司、あのとはどこまで進んでるの?』

「はぁ!?」

「お義母かあさんは黙っててください!!」

『はい』

—―あ、母さんが怒られて凹んだ。初めて見る光景でなんか新鮮。


「お義兄にいちゃんどういう事? いつの間にそんな事になってたの?」

「いや、だから、誤解だって。カレンとはそんなんじゃないよ。だってほら今までだってそんな素振りしてなかっただろ?」

「それは……お義兄ちゃんがニブちんなだけでしょ!?」

「に、にぶちんって。そ、そうなの?」

「『そうです!!』」


「でもほら、さっきも言った通り今は彼女じゃないって決まったわけだし」

「それはそうだけど……」

「それに、今の関係を壊したくないんだ。せっかくみんな仲良くなれたんだから。俺にはそっちの方が大事なんだよ。わかるだろ伊織」

「う、うん……」

――相変わらず伊織は素直でかわいい良い子です。


 カレンから連絡が来たら報告しあうと約束したところで、この緊張感のある話し合いは終わった。


『あ、真司。言い忘れてたけど、私はただいてるわけじゃないわよ。守護霊ってやつかな』


母さんがそれだけを言い残して伊織の元へと戻っていた。

自分一人だけになった部屋に静けさが戻る。

大き目のため息をついた。


—―まったく。なんなんだ今日は……


 しかし伊織に憑いていた母さんが伊織の守護霊という話は少し納得できるような気がする。伊織のあの耐性はもしかしたらそこに秘密があるのかもしれない。小さいころからずっと中にいるって事は、それだけ消耗も激しくなるわけでそれを今まで続けて来てるんだから、やっぱり伊織は凄い。


 なぜ俺にではなくて伊織に母さんが憑いたのか……それだけが疑問に残る。

 もう少し時間がたったら聞いてみようと思いながらベッドに倒れ込むように横になった。







※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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