むんっ!!
「えぇ~っと……」
じぃ~~っと見つめてくる二人。
冷や汗が背中を流れていく。
「どういうことですか?」
理央に詰め寄られてきた。伊織に目線で合図を送ると、伊織も俺の感情を読み取ってくれたみたいで、コクンとうなずいてくれた。
「その……。実はこの前の帰りに、ちょっと伊織と話したんだ」
「「それで?」」
ふたりでハモッた。
伊織が俺の方を見てまた一つうなずく。
「実は、お
「伊織ちゃんが?」
「はい。あの……実は私にも
「えぇ~!!」
驚いたのは理央だけだった。
「ふ~ん……。やっぱりそうなんだぁ……」
カレンは何かを確信したみたいな顔で、手元のグラスの中をストローでぐるぐるとかき回していた。
「カレン?」
「えぇとね、何となく……ホントになんとなんだけど、そうじゃないかなぁって……あたしは思ってたんだ」
「「ええ!?」」
これには俺と伊織がビックリした。伊織にしてみれば、ここまで俺達には誰にも話してなかったし、俺にさえそんな行動もとっていないはず。だからカレンにそう思われているとは思ってもいなかっただろう。
俺にしてみれば、俺でさえここまで一緒に暮らしてきた
――なんかカレンに後れを取ったみたいでショックがデカいな。
「どうして気付いたの?」
理央がカレンに聞いた。
――うん。俺もそれ気になる。
「ええとね、理央にはあまり話してなかったかもだけど、あたしがシンジ君と初めて会ってから少しの間ふわふわ浮いてたじゃない? あの時に伊織ちゃんからの視線ががシンジ君を通り過ぎてあたしに来てるなって感じてたんだ」
「そうなのか伊織!?」
「ふえぇ!? あ……う、うん」
「それからこの前もそうだったけど、
「…………」
「…………」
「何よ? みんなで黙り込んで」
カレンがそこまで考えていたなんで全然思っていなかった。たぶんここにいる二人も同じようなもんだろうな。言葉が出てこないとこ見ると。
「いや、お前って、時々ポンコツお嬢じゃなくなるんだなぁって思って……」
「ポンコツお嬢って何よ!! って言うかアンタどんだけあたしの事バカだと思ってんのよ!!」
「あ、いやその……ごめん」
フンっ!! と言って鼻を鳴らしプイっと顔を奥の方へと向けてしまった。
「それで? これからどうすんの?」
「ハ、ハイ。まずはその被害にあってる方にお会いして、どんな
「そうだな……。視てみないことには対策のしようもないしな」
そんな話をしていたらカレンがクスリと笑った。
「なんだ、結局助けようとしてるじゃない。あんたってやっぱり……そういうやつだよね」
――何だろう。
褒められてんのかあきれられてんのかわかんないな。まぁカレンの事だから悪い意味では言わないんだろうけど。
「じゃぁ連絡来たらあたしにもちょうだいね。これから事務所に行かなきゃだからおさきにぃ!!」
慌てるように店から駆け出していくカレン。
残った三人で今後の事を話し合う。
「でもさ……真司君てカレンから信頼されてるんだね?」
「え? そんなことないと思うけど」
「ん~ん! そんにゃ事にゃいひょ!」
珍しく物をクチにふくんだまま話をする理央。あまりなかったことと、普段がおとなしい系なので伊織もその姿にビックリしているみたいだ。
「ご、ごめんなさい! えと、そんなことないよ。カレンてああ見えてとっても疑り深いんだから」
「そうかなぁ……」
「確かにカレンさんはお義兄ちゃんを信頼してると思います。そうじゃなければ毎回こんな危険かもしれないことに一緒になんて来れないと思いますから。アイドルしながらなんてとても考えられません」
「アイツにそんな感情は無いと思うぞ。ただ面白そうって思ってるだけじゃないかな?」
そんな軽口を言いながらしばらくの間その場で俺達は笑いあった。
お義兄ちゃんがお会計をしてる間に二人で先にお店から出る—―
「私も頑張んなきゃ!!」
むんっ!! と気合を入れる。
「あらぁ、伊織ちゃんがんばってねぇ。カレンは結構手ごわいわよ?」
「ふぁ!? り、理央さん。なんのお話ですか?」
「あらあらぁ……? まぁいいんじゃない?」
そう言ってくすくすと笑う理央さん。そのまま駅の改札へと歩いて行ってしまった。
—―なんか私の気持ちが見透かされてるみたいですね……
「良し!!」
それからもう一度気合を入れなおした。
「どうした伊織?」
「ひゃ!!」
「こんなとこで気合なんか入れて」
「ん、何でもないよ!! さ、帰ろうお義兄ちゃん」
「お? おう」
—―危なかったぁ!!
心の中で思いながら駅まで並んで歩いて行った。
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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