電話

 ほどなくして――


「お義兄にいちゃん!! どうして私のケータイに知らない女の人から電話とかメールが来てるの!?」

 義妹いもうとが結構なお怒りモードで俺の部屋に突撃してきた。

 何を言ってるのか意味を理解できないでいた俺に、伊織がケータイ画面を目の前に「ほら!!」って感じで差し出してきた。

  暑くなり始めたこの時期は部屋の入り口は寝る時以外は開いていることが多い。


「お義兄ちゃん?」

「え? あ、ああそうかケータイにだっけ?」

「そうだよ!!」

 ぐぐぅ~!! って感じにケータイがさらに押しつけられてきた。


「ほ、ほら!! あれだよ!! 前に伊織が言ってたじゃないか!!」

「え! 私が!?」

「そうだぞ! ほら! 前にさお義兄ちゃんが知らない……」

「わぁぁぁぁぁ~!!」


 取が目の前でワタワタしてる。なんかこういう伊織の仕草ってあんまり見たことないから新鮮だ。しかもかわいいし。


「で? これはどういう事? また関係?」

「ああ、そ、そうなんだよ実は……」


 なぜ知らない女の子から妹に連絡が行くようになったのか、数日前に起きた事を伊織に伝える。


 はぁぁぁ

 伊織から大きく重くため息が漏れた。


「お義兄ちゃんってホントにお人よしというか、巻き込まれ体質というか。今回もお話聞くだけじゃないんでしょ?」

「そりゃまぁ……。知り合いからの紹介って言うか、頼って来てくれたんだからそんなに無下むげにも出来ないだろ?」

「うん、そう……だね」

 考えるように小さくうなずいた。

「わかった。じゃぁ私から連絡取っておくけどいつがいいかな?」

「そうだなぁ、次の土日とかでいいんじゃないかな?」


 伊織は「オッケー」って言い残して二階の自分の部屋へと戻って行った。



正直言うと、俺はまだ戸惑っている最中なのだ――

 前にあった出来事の最後に義妹いもうと伊織からの発言が、俺の心の中でモヤとなって漂っている。

 それまでの自分はが見えていて他人ひとには見えてない世界があたりまえだった、でもすぐそばに同じ世界をみている人物が現れただけでも驚きなのに、それがまさかの義妹なのだ。

 あの時の公園での告白からまだ日にちはそう経っていないんだけど、伊織はもう平常運航でいつもと同じ優等生な義妹になって、俺はなんかとろけたスライムみたいにねばついている。


――何とかしたいんだけどなぁ。


 ブブブブッ、ブブブブッ


 ベッドの上に置きっぱなしのケータイが俺を呼んでいる。

 と、取るのを少しためらう。


――まさかなぁ。

 表示を見ると日比野カレン。俺が唯一まともに会話できる女の子の一人だ。


「はい」

「あ! シンジ君? 聞いたわよ!」

 女の子同士の情報伝達の速さは予想以上だな。さっき伊織に言ったばかりなのに。

「おお。なんかそんな話になってさ」

電話してきたという事は伊織から連絡が逝ったものとばかり思った。


「――そんな話って何の話?」

「何のって……じゃないのか?」

リアクションの違いに少し戸惑う。


「う~ん、それもちょっと気ななるけど、シンジ君が告られたって話だよ」

「はいぃ!!?」


――いったいどこからそんな情報が回ったのか知らないけど、まったく心当たりのない事をコイツ今サラッと話したぞ!! 


「な、なに言ってんだよ!? そんな事ねぇよ!! あったら嬉しいわ!!」

「あれ? だって体育館の裏に呼び出されて告られたって聞いたけど?」

「あれかぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 確かにある種の告白ではあったけど、こんな勘違いをされてるとは思ってなかった。と、言うかあの相馬さんは一体どんな説明をしたんだろ? コイツに伝わったのがこの状態という事は……


「ちょ、ちょっと!! う・る・さ・いぃ!! 今のリアクションで分かったわよ。なかったんでしょ? 良かったって言うか……」

「わ、悪い。取り乱した」

「いや、うん。で? そっちのって何よ?」


—―落ち着け俺!! って心に言いながら、この間の体育館の裏の事から、この電話の事までを素直に話した。


「ふ~ん……。じゃぁ土日空けとくわ。決まったら連絡ちょうだい」

「え? カレンも来るのか?」

「なによ!! 私が行っちゃダメなの!! 邪魔なの!?」

「いや! 邪魔ってわけじゃないけど……その、今回はカレンには遠い存在というか、友達の友達というか、そういう相手だから興味ないのかと思ってさ」

 カレンは黙り込んだ。


「カ、カレン?」

電話の向こう側で深いため息をついた声だけが聞こえた。

「いい? 私は友達というか……。だから関係者なの!!」

 耳にキーンッとなるほどの音量で返事が返ってくると、そのまま電話は切れてしまった。


「なんだよ、アイツ……」


 そういう言葉とは反対に、心の中では「さんきゅ」ってカレンに感謝していた。






※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


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