体育館裏

 今、鼓動はバクン! バクン! いっている。立っているだけなのに手汗がびっしょりだ。

 授業が終わった放課後だというのに、涼しくなるどころか熱い日差しもあって、全身から汗も噴き出して滝のように流れている。


 俺は今、体育館の裏で女の子と二人だけで向き合っている。なぜかって? それは――二時間ちょっと前にさかのぼる――


 昼飯を食べに屋上に行っていた俺は、予冷が鳴る前に自分の教室に向かった。

 特に早く戻ってもやることは無いけど、席について[ぽ――っ]と窓の外を見ているのが結構好きだったからだ。

 しかしなぜかこの日は、俺が教室へ戻るとクラスメイトがざわついた。いつもそんなことはないから少し気になったが、特に変わった様子はないので自分の席に着いたのだ。


 [藤堂 真司 様へ]


 見慣れぬかわいい封筒に俺の名前。


「よう、真司。なんかさっき女子がソレ置いて行ったぞ」

「なんだ藤堂やるなぁ!!」

 とか、周りの男子は言ってるけど。

「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!!!」

 叫んだのは言うまでもない。



 ――と、いう事で今である。

「あの……手紙……読んでもらえたかな?」

「う、うん……」

 こんな感じのシチュエーションに憧れてなかったわけじゃないけど、自分がいざその立場になってみたらわかる。

――これはやばい!! 下手すると死んでしまうくらいヤバイ!!


「あ、あのね!!」

 ゴクッ!!


「あ、あの!! 藤堂クンって[幽霊]見えるってホント!?」


「は、はいぃぃ!?」

今すっっごい所から声が出た。自分でも聞いたことないくらいの高いやつ。


「あ、あのね、聞いたんだ友達から。それでね、えと、助けて欲しいかなって……」

ここで俺の夢ははかなく散ったのであった。

――ちくしょう~!! あれ? ちょっと待てよ……今ななんて? 友達から?


「えと、君は――」

 ――誰の友達?

「あ、ごめんね。わ、私、相馬夢乃そうまゆめのって言います。一年A組の」

「そうじゃなくて。あ、まぁそれもそうなんだけど、その……を聞いた友達って誰かな?」

「あ、えと、三和玲子って知ってますよね?」

—―えーと、そうきたか。うん。なんとなくわかる様な気がする……。


「どういう風に俺のこと聞いてるのかな? ゴメンね質問ばかりして」

「いえ、そうですよね。突然そんな事言われたら驚きますもんね」

—―俺の場合そればかりが理由じゃないんだよね。最近なんか[友達]という関係から、[友達の友達]にまでが広まってるのが問題というか……

える]イコール[好き]とか[慣れてる]とかでは決してないんだけどなぁ……


「実はですね、玲子とは中学校まで一緒で仲も良くて、今でも時々遊んだりするんですけど、つい最近遊んだ時にある相談をしたんです」

「相談?」

「はい。ここ最近……と、言うか一か月ほど前からなんですけど、の周りで不思議な事……いえ、怖いことが起こり始めて、それで玲子に「怖いんだけどどうしたらいいかなって」

――だんだん話が見えてきたぞ。


「そしたら玲子が、「それならいい人知ってるよ!」って言うから、紹介してって言ったら……」

「言ったら?」

—―もうわかってるけどねぇ……


「「あら、近くにいるじゃない。藤堂真司クンよ」って」

「…………」


—――何だろう。すごく暑いはずなんだけど、背中に流れるのが冷たい汗に感じるなぁ……


「う~んと、まず相馬さん……だっけ?」

「は、はい!」

「その話に間違いないのなら、確かに答えはイエスだけど、俺には何の力もないんだよ。それを払ったりとかなら、神社とかお寺とかに頼んだ方が確実にいい」

「え!? でも玲子が頼りになるわよ!! って言ってましたけど」


――はぁ~~。

 下を向きながら大きくため息をつく。


「聞いて、もらえないかな?」

「知り合いから相談されてるのなら、聞かないわけにはいかないかな」

「ありがとう!! 言ってみて良かった!!」

「それじゃ、ゆっくり話聞きたいから時間に余裕が出た時に連絡してくれないかな?」

 ケータイを取り出してお互いのメールアドレスを転送する。

 もちろんアドレスを相馬に教えた。


 彼女は「また連絡するからねぇ」って言いながら走り去って行ったが、俺はその場に立ち尽くしソノ後ろ姿を見つめていた。


――はぁぁぁ~

それからまた大きなため息がもれるのであった。





※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。




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