そこにあなたがいたから
「ああ、真司。例の
「ホントに!! じゃぁ、少ししたらかけ直すよ」
「わかった」
父さんの方から電話をきった。
—―これでまずするっことは決まったな。
「よしみんな!!」
「「「おう!!」」」
俺の言う言葉に対応するため、みんながグッと前傾姿勢になる。
「一時撤退!!!」
「「「えぇぇ~~!?」」」
言いながら、そこにクルっと背を向けて先ほど来た場所を駆け戻っていく。
俺の行動に合わせて、女子組の四人も後ろを追いかけるように駆けてきた。
—―なんか途中でカレンがブーブー言ってたみたいだけど気にしない。父さんから連絡が来たなら今は目の前の—―
勝てないと分かってて勝負するよりも、勝算が少しでもあってからの方が全然気持ちが違う。まぁ俺の心構えの問題――なんだろうけどね……
元のお土産屋さんまで戻り、カレン達は腰を下ろした。座ることも考えたけどここは伊織に席を譲って電話をかけることにした。
プルルル~、プルルル~
「はい」
「あ、父さん、ごめんさっきの件だけど――うん、うん、そうか—―じゃぁあの件頼むよ。うん、父さん、ありがとう」
大きな深呼吸をひとつした。
「シンジ君、何かわかったの? 」
席の端でペットボトルのお茶を飲みながら休憩していた理央が話しかけてきた。
「うん……。でもあまりいい話じゃないんだ。これから父さんに聞いた話に、俺の考えを加えたものをみんなに話すよ。
自分んで説明しやすい言葉を選びながら、それでもみんなに分かりやすく説明した――
「行くんでしょ?」
いつの間にか横にいたカレンが肩をポンと叩いた。
「うん、やっぱり話をしなくちゃいけないからね」
その言葉を聞いた伊織に響子、理央も腰を上げた。残りの遠野と妻野にはまた万が一の為二人を見てもらうために残ってもらう事にした。
「さぁ、開放してあげに行こうか」
「「「うん」」」
「はい!!」
俺達は再びあの女の霊と対峙するべく先ほどの場所へと戻っていった。
『またお前たちか。邪魔するなと言ったはずよ』
先ほどの威圧感と同じくらいのモノを感じ、また冷や汗が噴き出るのを感じながら俺は語り始めた。
「そうはいきません。もうやめましょう」
『何ですって?』
「あなたが望むもの、望む人はあなたには付いていきませんよ」
『なぜ?』
いったん言葉を切る。周りにいたみんなの顔を見回した。
みんなが無言でうなずく。
「あなたがその人を好きで欲しがったのは分かります。でもあなたは、あの秋田真由美さんをどんなことをしたか知りませんが罠にはめたんですよね? その結果彼女はこの湖で亡くなった」
『そうね。その通りよ。アイツは邪魔だったわ。婚約したからって村中でお祝いした。でもね、隣村の男と浮気したって噂が流れたのよ。そしたら村から追い出されて、他の男に襲われて、挙句には湖で亡くなったらしいわ。その噂を流したのは私なんだけど――』
—―やはりこの霊も自分のしたことに関しては少し思うところがあるらしい。そこを突かなければこの霊を口説き落とすのは難しいだろうな。
「そろそろその男性を介抱してあげませんか? あなたがやったんですよね? その男性も」
『ええ、そうよ。探しに行くんだって言ってまったく振り向いてくれないんだもの。まぁ見つかってないんだから仕方なかったかもしれないけど』
だんだんとこの霊から放たれていた冷たく暗いものも薄れ始めていた。
「その男性がこの近くに居るんですね?」
「「「え!?」」」
これには女子組3人が驚いていた。
女子組はもちろん俺とこの女の幽霊との会話は聞こえないし見えているわけでもない。先ほど説明した時もあえて言わなかったことだから。
なぜか伊織だけが悔しそうな顔をしていた。
『あなた、なかなかすごいわね。そうこの人は
「それで……あなたが亡くなった理由はなんですか?」
『私は—―この人の事が心配で車で見に来たら見えたのよ。あの女が。それで事故を起こして湖に――』
女の霊はハッ! としたような顔をする。
「そう、もうあなたの望みは叶ってるんですよ。その男性が心配でここに来たのなら、その男性がここにいることを知った。あなたはもう向こうに
俺の言葉を聞いて納得したかどうかは知らないけど、女の霊は少し悲し気に微笑みながらスーっとその場から消えていった。
それと同時に先ほどまで立ち込めていた暗く冷たい空気も少しずつ元を取り戻していった。
—―ふうぅぅ。
俺から大きなため息が漏れる。
これでここにいた男性を狙う女の霊はもう大丈夫だろう。
問題は……
『大丈夫ですよ』
「え?」
振り向いた先。そこには笑顔で男性を見つめる秋田真由美の姿があった。
『大丈夫。この
――やっぱりこの人にも狙いはあったみたいだ。薄々は感じてたけど……
ここまで来たんだからこの人を信じてみようと思った。俺は彼女に向けコクンとうなずいた。
「さぁ、帰ろう!!」
「なに? 終わったの?」
それまで俺と伊織の後ろにいた女子組がため息をもらした。
「ああ、
俺たちはお土産屋さんまで戻り、居残り組の四人と合流した。
三和と正晴が少し疲れている様子だったけど、時間が経てば元にまで回復するだろう。
しばらく休んでからみんなで歩いてバス停まで戻る。
俺はもう一度湖に振り返った。
そしてケータイを取り出し。
「あ、父さん。うん。こっちはもういいよ。お願いできるかな?」
こうしてこの日は終わりを告げた。
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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