file4 エピローグ

 一週間がたって—―


 俺達はまたあの喫茶店に集合していた。

「いやぁ~、一時はどうなる事かと思ったぜぇ」

「まったくぅ。だから来なくていいって言ったのに」

「だってようぅ、女の子ばっかりのトコに真司が一人とか、うらやま……違う、あ、危ないだろ?」

「今、なんて言った!?」

正晴と三和のやり取りを聞かされ続けている。


 さっきからこんなイチャコラをずっとである――

 今日は遠野と妻野はそれぞれがデートで来れないらしい。正晴と三和だけが影響を受けたことと、俺繋がりという訳でここに来た。

 あとはいつもの女子組四人だ。

「それでシンジ君、あの後どうなったの?」

 この後アイドル業に行くアイドルバージョンカレン(いつもより少し派手め)がグラスを手にしながら聞いてきた。

「ああ、あの後は父さんに頼んどいた事が動いて、無事に男性も秋田真由美さんもあの湖から発見されたよ」

「へぇ~、秋田さんも」

 のんびり口調の響子だ。

「うん。俺達が彼女に初めて会ったあの浜は、少し行くとかなり深くなってて、底に樹木や水草なんかが冷たい冷水のおかげで腐らずに残ってるんだって。そこに奇跡的にとどまってたらしいよ。彼の方はもう体は無くて骨しか残ってなかったらしいけどね」

「そっか。でも二人とも無事に会えたんだね」

 と理央。

「うん。十何年ぶりの再会さ」


 そんな報告がされた後、またキャイキャと騒ぎ始めた。

俺はそれには混ざらず、窓の外を見つめた。

――彼女と彼があっちで仲良くできたらいいなぁ……


ちなみに――

 この騒ぎの最中にテレビ収録に行ったカレンの出来はナチュラルハイな状態で撮られていたため、一人だけ浮いているという散々な出来だったにもかかわらず「飾らないとこがいい」とか「自然な受け答えで好感が持てる」などの感想が寄せられ、それまでどちらかというと男性よりだった人気が、女性と五分五分になったと事務所では喜んでいるらしい――



 その帰り道――

 俺と伊織はウチに向け最寄り駅から歩いていた。

「お義兄ちゃん、公園に寄って行かない?」

 義妹いもうとからそんな言葉をかけられる。


「え?」

「話しておきたいことがあるんだ」

「お、おお、良いぞ」



俺にとってここ最近はいい思い出が無い場所だが、嫌な予感がしないでもないけど義妹から話があると言われれば断ることはお兄ちゃんとしてできるはずもないのだ。

 少し前にもこれに似た事があったけど、まさか同じ展開にはならないだろうし。

 ある程度大きくなってきた今は少し手狭に感じる公園内の中には、申し訳程度に置かれた遊具とベンチがある。その遊具の中のブランコに伊織と二人で並んで腰を下ろした。


「懐かしいなこのブランコ」

「そうだね……」

 それから少し沈黙が訪れる。


「私……。私もね、視えてるんだ……が」

 伊織の声が少し震えていた。

 —―それは俺がここ最近悩んでいたことの一つ。どうしても言い出せず、本人に聞く事をためらっていた事。それが今—―その本人の口から放たれた。

 兄として自分から言い出せなかったことが悔しくて、情けなくて俺は黙って下を向いてる事しかできなかった。


 もうすぐ梅雨に入りそうな感じのする温かく湿った感じの風が二人の間を吹き抜けていく。

「……知ってたよ」

「え?」

「いや違うな。最近……ホントに最近だけど気づいたんだ。そうじゃないかなぁって」

「そ、そっか……」

「うん……。 ずっと聞けないまま……言い出せないまま今までいたんだよ、本当なら俺から切り出してやりたかったんだけど、情けない兄ちゃんだろ?」

「そ、そんなことないよ!!」

 それからまた黙り込んだ。


「お義兄ちゃんごめんね」

「ん? なんだよ急に」

下を向きつつ伊織が小さな声で俺に謝ってきた。

「本当はもっと前に言おうと思ってたんだけど」

「そんな事を気にしてたのか? 逆に俺の方がごめんなさいだよ。気付いてやれなかったんだからな」

 伊織の顔を見ると目に涙がうっすらと溜まっているのが見えた。


「もう……ウチに帰ろう伊織」

「うん!!」

 伊織は顔を軽く拭うと笑顔を作って立ち上がった。


「お義兄ちゃんは私が守るからね」

「う~ん、できれば俺が伊織を守るって形がいいんだけどなぁ」

「え!? そ、それは嬉しんだけどな……」

 途端に伊織が下を向いた。

 俺は伊織の頭をポンポンなでなでしてやった。


 そうして二人でゆっくりと歩きながら家路についた。





※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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