多いよね……

 この日の朝はすごく早く目が覚めた。

 集合時間は午前十時。カレンや市川姉妹の通う学校の最寄り駅だ。

 時計を見るとまだ午前六時。

 水を飲もうと部屋を出てキッチンへと向かう。いつもの日曜日なら、まずこんな時間に起きることは無いので少し変な感覚だ。大体がお昼ぐらいに伊織に起こされるから。その伊織もまだ寝ているはずだ。

 キッチンに着くとわずかに居間の方で物音がしたような感じがした。

 静かに居間へと向かう。


「父さん……」

「ん? おお、真司か。おはよう早いな」

 久しぶりに見る姿。なかなか帰ってこない父に久しぶりに会った気がする。まぁ、最近はめったに帰ってこなくなった義母かあさんの方が我が家的にはレアキャラになりつつある。


「おはよう父さん。早いね」

「いや、早く起きたんじゃなくて、帰って来たばかりなんだ」

「へぇ~。忙しそうだね」

「俺たちが忙しいのはありがたい話じゃないんだけどな」

 などと軽口を交わしながらキッチンに戻って冷蔵庫を開け、ペットボトルのお茶と缶コーヒーを手に取って居間へと戻る。

「どっちがいい?」

「ん、ああ悪いな。じゃぁお茶をもらうか」

 お茶をハイっと手渡して、俺はコーヒーのプルトップを開ける。

「最近はどうだ真司。えてるのか?」

 俺は少し戸惑った。父さんは俺がそういうチカラがあることは知ってはいるが、自分からはその話題を振ってくることはめったにないからだ。

「ん、あぁ、まあぁ見えなくなる事なんてないよ……。そうだ!! 父さん少し調べて欲しいことがあるんだけどいいかな?」

「お前がそういう時はか。事件なのか」

「う~ん、もしかしたらそうなるかもしれないんだ」

 はぁ~~。

 父さんは大きなため息をついた。

「まったく……いいぞ、言ってみろ」

「うん、それじゃぁ――」



 父さんと話が終わって、珍しく俺が朝メシの用意をしようとキッチンに立つと、伊織が起きてきて大きな目をして俺を見た。

「び、びっくりだよ!! お義兄にいちゃんが私より早く起きてるなんて!!」

「俺は伊織がビックリしたのにびっくりしたよ!!」

 あっ!! っという感じで両手をクチの前に持ってきてペロッと舌を出す伊織。

 その仕草が我が義妹ながら可愛いかった。

 伊織はそのまま顔を洗いに行ったみたいだ。

 ちなみに父さんは「寝る!!」って言って部屋に行ってしまった。あの人は寝つきが昔から早かったので、もう寝てるかもしれない。


 伊織が顔を洗い着替えてきたところで、今度は俺が着替えに部屋に戻った。数分で戻ってきた時には伊織がお湯を沸かしてくれていた。

「「いただきます」」

 自分で作った朝メシを伊織と一緒に食べるのは久しぶりだ。いつもならそんなに話しながら食べたりはしないけど、今日はこれから一緒に出掛けることになっているので、その事について二人で話した。

「お義兄今日の事どう思ってるの?」

「どうって?」

「この前会った秋田真由美さんの言ってることと、今日行くことを比べてって事」

「そうだなぁ……今日は真由美さんにも関係することが分かってくると思う。そしたら真由美さんののもそれ以外のモノの狙いも分かってくるはずなんだ」

 伊織の疑問をゆっくりと頭の中で整理しながら会話の言葉を選んでいく。

「あの真由美さんにも狙いがあるの?」

「たぶんね。だから俺のようなを探してたんだと思う」

「む~~」

 なぜか伊織のホホがぷくっとふくらんでいる。

「どした?」

「お義兄ちゃんってすごいね」

「え!? ど、どこがだよ」

「いろいろとだよ」

 そう言って伊織はまた下を向いて、ご飯を食べることに戻った。

 いまいち伊織の行った事が理解できずにいたが、そのまま俺も朝メシを食べることに戻ることにした。



習合場所にて――

「え~っとだな……」

 集まったメンバーを見回しながら俺は固まっていた。なぜならそこにはいつものメンバー以外の人がいたからなのだが、なんというかその…華やかなのだ。

 ていうか、いつの間にか人多くねぇぇぇぇぇ!! って感じ。

 いつものメンバー五人に、三和・遠野・妻野までいるし、さらになぜか正晴まで。一番危ないって分かってんのかなコイツ。

「何で……こんなに多いの?」

 俺は率直な疑問を五人の方に向けた。

「ええと、玲子にあの後連絡したら、遠野さんと妻野さんもその神社に興味あるっていうから、じゃぁ一緒にどう? って話になって、こんな感じかな?」

 相変わらずのんびり屋さんっぷりの響子が俺の方にウインクする。


――はぁぁぁ~。

 先が思いやられてため息が出た。


「じゃぁ、そろそろ時間だから行くけどいいかな?」

「「「はぁ~い」」」

「「「いいよぉ」」」

「よっしゃ!!」

 なんだろう。なにか複雑な気分だなこれ。

 バス停に向けて歩き出した女子組の後を男子二人が付いていく。

「なぁ~、真司」

「なんだよ?」

「どのがお前のカノジョなの?」

「はぁぁぁ!?」

正晴の顔を見るように首をひねる。

「とぼけんなって! いるんだろ?」

「い、いやいねぇし!! そもそもいたらそんな湖なんか怖くて行けないからな!! つうか、お前が一番気をつけなきゃなんねぇんだからな!! 普通来ないぞ!! お前バカなの!!」

 息を切らせながら正晴に否定する。

「わかった!! わかったから!! で、どのなん?」


――ぜんぜん分かってねぇなぁコイツゥゥゥゥ!! 


 今日の行き先にとてつもなく不安がよぎっていく。






※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

誤字脱字など報告ございましたら、コメ欄にでもカキコお願いします。


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