元凶

「ちょっと、正晴!! この藤堂クンが前に言ってた人だよ!!」

 かなり強めに突っ込まれてたけど、痛そうだなぁ。しかしこの二人、くっついたり別れたりしているだけあってさすがに仲がいいし。ぎこちなさが無い。

「え? 真司が!?」

 どんな話されたのかは分からないけど、この子も相手が男だとは伝えてなかったみたいだな。

 さりげなく会話するふりをしながら、俺は正晴の様子をうかがう。遠野と妻野のカレシは影響が出ていると言っていたから、目の前の、正晴にも出ていると思ったからだ。しかしそんな気配は感じられなかった。

 それとは別に三和の方は――

「何だよ真司、それならそうと昔から言ってくれりゃいいのに」

 真顔でそういう正晴。

「言えるわけないだろ…….そんな事」

俺は苦笑いで返した。


 二人がカレン組の方へ腰を下ろしてようやく始まりの盛り上がりは落ち着いた。

「三和さん体調良くないんですか?」

 俺の隣で静かにホットチョコレートを飲んでいた伊織が三和の方を見て話しかけた。

「ええ、その……わかりますか?」

 皆がうなずいた。

「最近少しづつですけどダルさとか出て来ていて、はまだ見えてるし。声まで聞こえるようになってしまって」

「あの二人はどうなの?」

「それが、響子ちゃんからあの湖に行って来たって連絡あった日から、そういうのは全然なくなったって言ってて。私だけいまだに続いてるの」


 響子の問いかけにも疲れている感じに答える。

 少し解決を急いだほうがいいかもしれない。俺の心がそう言い始めてる気がする。


「すいません三和さん、聞きたいことがあるんですが、その現象が現れた日は一人でそこに行ったわけじゃないですよね?」

「え? ええ、そうです」

「そしてそれはですよね?」

 三和は大きく目を見開いた。

「ど、どうしてそれを? 誰にも言ってないのに……」

「やはり、そうですか。でも誰かに聞いたりしたわけじゃないんです」


 そして、ソレから自分で考えている事を素直に話すことにした。

「実はよく調べたんですが、ここ最近あの湖で亡くなった人はほとんどが男性なんです。女性は巻き込まれた感じで事故扱いになってるんです。もしかしたら助かった人も中にはいるかもしれない、その人たちは自分から名乗り出ないだろうから、被害者数的にはもっと多いかもしれない」

「それってどういう事なの? シンジ君」

 カレンがこちらのテーブルに身を乗り出して顔を向けてきた。

「うん。それは三和さんと遠野妻野さんとでは影響されてるモノが違う。そしてそのモノが三和さんと正晴にこれから影響する可能性があるんだ」

「俺がか!?」

 三和の隣で関係ないみたいな顔してコーヒーをクチに運ぼうとしていた正晴が驚いてこぼしそうになる。

「だって触ったんだろ? 

 更に正晴は驚きの色を隠せないでいる。

 そして俺の考えている事が事実なのだとしたら、危険なのは[三和]ではなく正晴の方なのだ。

「これは、そこに行ってみないと正確には分からないけど、君たちはどこで湖の水面に触れたんだ?」

「あそこの湖には十五年くらい前に縁結びの神社が建てられたんだよ。そこで絵馬を湖水に浸けてから奉納すると永遠なる縁に結ばれるって、インターネットで見たから玲子とそこに行って来たんだ」

 やはりなと真司は思った。今回の怪現象のそもそもの源はそっちなのだと。


 二人が部活があるって出ていった後の喫茶店内にて、新たな行動計画を立てることになった。

「今回の元凶は間違いなくなのね?」

 大きく一つため息をつくカレン。

「ああ、あのおじさんが言ってた事が気になって調べたんだ。間違いはないと思う」

 コーヒーをクチに運びながら話す。

「じゃなまたみんなであの湖に行かなきゃね」

「そうねぇ、しかも縁結びの神社なら一度は行っておかなきゃでしょう」

 と理央アンド響子姉妹。

「絶対に一緒に行きます!!」

 むんっ!! と両手を握りしめ気合が入る伊織。

「え~っと、この五人で行くって事で決定……なのかな?」

「あたりまえでしょ! ここまで参加したのにそこに行かないでどうすんのよ!」

 カレンがなぜかやる気満々である。

「それにこの件はもともとが私が持ち掛けた話でもあるし、私は最後まで付き合うわよ」

 そのカレンに響子も続く。

 理央も伊織も「もちろん!」って顔してる。

「わかった。みんなありがとう」

 俺は立ち上がって、ペコっと頭をさげた。

 頭を上げたのと同時ぐらいにカレンが手帳を出して何かを確認し始めた。

「そうと決まれば早い方がいいよね。じゃぁ明日決行よ!!」


 その一言に俺はあきれたのだが、不思議と否定の声が上がることなくそのまな確定した。集合場所や時間。移動手段や費用の話までが次々と決められていく。

 もちろん俺はただそれを横目に聞きながらコーヒーをすするだけだった。


「じゃ、これで決まりでいいよね、シンジ君」

「ぶふぅ!!」

 いきなり話を振られた俺はコーヒーをちょっと噴き出した。それを伊織が黙って布巾でふきふきしてくれた。

――ありがとう伊織、さすが我が妹だって心で思う。

 そしてみんなの視線が俺に集まる。

「な、なんで俺に聞くの?」

「何言ってんの? シンジ君がリーダーでしょ?」

 うんうんとみんながうなずいている。


――そんなの聞いてねぇぇぇぞぉぉぉぉぉ!! だいたい俺発言してねぇしぃぃ!! 


 なんて思っていても、俺のことなどお構いなしにいろいろな事が決まっていくのであった。






※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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