帰り道
「あ~!!」
湖からの帰り道。
理央のから離れたモノの影響を考えて少し時間を休ませてから来た道を歩いている。真由美は言いたいことを言い、俺たちが協力することを伝えると、すぐに理央の中から存在を消していた。その場に崩れ落ちそうになる理央をカレンと響子が慌てて受け止めた。
先程の声は、俺の前を歩いていたカレンの突然の咆哮である。
もちろん皆がビクッとした。林にいた鳥もバサバサと飛び立つ。
「な、なんだよカレン!! ビックリするだろ!!」
「思いだした!!」
「何を?」
皆の視線がカレンに集中する。
「あの秋田真由美って名前。どこかで聞いた事があるなぁって思ってたあんだけど……」
「だけど?」
「話のなが~~~いおばあぁちゃん家で聞いたよ!!」
「「「えええぇ!!」」」
「な、なんで言わないんだよ!!」
「だって、今思い出したんだし、それに話が長くて今まで忘れてたんだものん!!」
やっぱりカレンはポンコツお嬢だと思う。ステージの上の[カレン]とは別人だ。
浜辺で話した[幽霊]である秋田真由美は、今まで会ってきたモノの中でも、表現が合ってるかはわからないけどいい人だったと思う。
だから素直に話を聞いたのだが、彼女はただ静かにいたいだけなのだと言っていた。自分はここから離れてはいけないのだと。
そしてここ最近の湖周辺での事故や事件にはかかわっていない。別のモノがしているのだとも言っていた。
ならば俺たちはまた別の方向からこの件を考えなくてはならないだろう。
「『今までしたことはあの子たちには申し訳ないと思ってるわ。もうあの子たちには影響しないし、これかも他の方々にはしないわ。約束する』」
真由美はそう言ってくれたのだ。俺はそれを信じたいと思う。
「これからどうするの?」
てくてく歩きながらカレンが問いかける。
「うん、あの人の言う事を信じるならまずはこの件を調べ直さなきゃいけないと思う」
「そうね。中に入られてた私が言う事じゃないかもだけど、あの人、嘘は言ってなかった感じがしたわ」
体を使われていた理央が少しダルそうな体を振り向かせて共感してくれた。
「それに、気になることも言ってたし」
「そうなの?」
響子は少し頭を傾けた感じで聞いてきた。
「うん。ただそれももう一度聞いてみないとわからないんだけどね」
湖に向かう前の村に到着し、理央の体調を考慮して少し休む。十分ほどしてから荷物を背負いなおして歩き出した。帰りの道は少し時間をかけてゆっくりと進む。
それから間もなくして合宿所だった体育館へと到着した。
「あ、あの!! 皆さん!!」
体育館に到着し、近くの街まで来ているはずのカレンのマネージャーに迎え等の連絡を入れる。
迎えが来るまでの間に各自の荷物の整理や、聞いた話を確認しようとしていた時、それまでの帰り道でも静かだった伊織が声を大きくして話を切り出した。
自然とみんなの視線が伊織に集まる。
「帰り道で考えてたんですが、遠野さん妻野さんと、三和さんでは最初から影響を受けたモノが違うのではないでしょうか?」
女子組の三人には「???」と頭に浮かんでるみたいだ。
「伊織ちゃん、それどういう事?」
最も頭に「???」」を浮かべている顔をしたカレンが聞く。
「はい。三和さんの話によると、初めは五人でその場に行ったうちの二人が幽霊らしきものに影響を受け始めます。これが[秋田真由美]さんの影響だというのは間違いないでしょう」
「それで?」
「それから影響を受け始めたのは受け始めたのが当の三和さん。時間差が出てますよね。これがその秋田真由美さんではないモノが絡んでいるのだとすると、この時間差に何かが隠されてる気がするんです」
なるほどぉって感じで女子組三人がうなずいている。
それは俺も同じだった。俺は漠然とした考えで違いがあるとは考えていたが伊織はそれ以上に考えがまとまっていた。
「そうなると、また三和さんに聞いてみるしかないわね」
「そうねぇ、私の方から連絡しといてみるわね」
何かやたらと話が進んでいく。俺抜きで。それにこのメンバーで動くことが当たり前のように。
それから十分程度待っているとカレンのマネージャーさんの運転するワゴン車が到着した。
ここに来るまでのバスでのはしゃぎようが無かったことみたいに、車の中は誰一人会話することは無かった。
今日の出来事でみんな疲れてしまっているのは見ていて分かった。
自宅近くの駅に到着した時には俺も疲れ果てていた。
何より気を遣うのだ。自分の周りには女の子しかいなかったのだから。これが伊織と二人とか家族と一緒とかなら全然違うんだけど。
家に向かい伊織と共に歩いて行く。あれから伊織は帰りの車の中でも話をすることは無かった。
「伊織、少し話してもいいか?」
「ふえぇ? なな、何かな?」
突然声をかけた俺にビクッと身体を震わせる伊織。
「今日の事なんだけど、その、ありがとうな」
「え? どうして?」
「ほら、俺って人と話すのとか慣れてないからさ、どうやって話をしたらいいか悩んでたんだけど、伊織が代わって言ってくれたから」
「そ、そんなの全然大丈夫だよ」
けっこう駅から歩いてきた。そこの角を曲がると公園があって、その先数分のところにウチがある。
歩きながら再び今日の出来事を思い出し、次に何をすればいいか考えていた。
「お
もうすぐ公園に差し掛かるという時に、隣を歩いていた伊織が立ち止まって俺を見上げながら言う。
そんな
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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