カレン!!(怒) 

 今度の土曜日に決まったとさっき響子からメールが届いた。

 俺は手短めに「了解しました」とだけ打って返した。

 正直今はそれどころではないから。俺の頭の中はこれから義妹いもうとにする質問の言葉どうするかでをいっぱいいっぱいなのだ。


「ただいまぁ……」

「あ、お義兄にいちゃんおかえりぃ……」

 玄関先でちょうどてこてこと歩く伊織と鉢合わせた。

「お、おう、ただいま……」

「もう少ししたらゴハンできるから部屋で着替えて来てよ」

 にこっと笑う義妹はほんとにかわいいんですよねぇ……でもなんか、いつもと変わらない伊織の感じに少し寂しさも感じる。

――けっこう俺は考えこんでいたんだけど、伊織にとってはそんなに大したものではなかったのかなぁ……

 トボトボと歩いて着替えるため部屋に向かった。


 十分後――

「お義兄ちゃぁぁん! ごはんできたよぉぉ!」

 伊織からのゴハンの呼び出しに応えて部屋を出ていく。

――はぁぁ~。

 この時もまだため息は止まらなかった。


 用意されてるゴハンを見ながら自分の席に着く。

義母かあさんと父さんは?」

「お母さんは急患だって帰ってこれないみたいで、お義父とうさんは事件で帰れないんだって」

「そうか……」

「何か考え事?」

 伊織にそう問われ、自分の本心を言うわけにもいかず、響子に相談を持ち掛けられたことを話した。

 う~んとうなりながら伊織が考え込む。

「お義兄ちゃん、その相談私も加わっていいかな?」

 俺のハシが止まった。

「な、なんで?」

「ちょっと……考える事あって……かな?」

「そうか……うん……いいんじゃないかな?」

「良かった。よろしくね、お義兄ちゃん」

 このニコってのは殺人級の威力があると兄は思うのです。



 それから数日後――

「ごめんね伊織ちゃんまで来てもらって」

「いえ、お義兄にいちゃんが心配なだけですから」

 カレンと伊織が仲良さそうにきゃーキャー言いながら話している。

 俺はというと――

 中に入って行けないからコーヒー飲んでいた。

 響子が今日の相談者と来る予定になっていて、少し遅れてくるらしい。今はその隙間の時間だ。


「おまたせぇ。ごめんねぇ」

 パタパタと走って席の隣へとやってきた。

「紹介するね。こちらが今回の相談者で友達の三和玲子みわれいこさん」

 響子の後ろからつきて来ていた女の子がペコっと頭を下げた。

「は、初めまして。私は三和玲子と言います。今日はありがとうございます」

 この三和という女の子だけど、外見は肩くらいまでの黒髪ストレート、細身でスラっとしていて制服の上からでも何か運動をやってます感がある。そしてそれはこの子の制服からも分かっていて、彼女の着てる制服はこの付近ではスポーツに力を入れている学校、清桜せいおう学園高校ののものだったからだ。

「ごめんなさい。私のためにわざわざ」

 そう言って、手を握ってブンブン振っている。を。

 握られたまま伊織も目を見開いたまま固まっている。間違いなくビックリしている目だね。


「あ、あの!!」

伊織の表情がハッとしている。

――あ、やっと自我が戻ったみたいだ。

「あ、ご、ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって」

「い、いえ、そうではなくて。私ではなくて義兄あにの方だと思うんですけど……」

「え!?」

 慌てた三和が周りを見回した。

 カレンが親指でこっちこっちと俺を指していた。



「先ほどは失礼しました」

「あ、いやいやお気になさらずに」

 俺と伊織の隣にカレンが座り直して、その向かい側に座る形で響子と三和がすわった。

 ペコっと頭を下げた三和に何かしっかりと体育会系的なものを感じる。

「それで、相談というのはですね――」

 三和が語り始めるのを俺は割って入った。

「あっと! その前に言っておきたいんだけど……」

「なんですか?」

 三和が不思議そうな顔をして俺の顔を見つめる。


「俺は確かにそういうが見えたりするけど、取り除いたりとかはできないし、俺……基本的にそういうの嫌いなんだ。慣れてないし慣れたくない」

 一息に言った。さすがに息切れする。しかし、知ってて欲しい事は先に言わないとね。

「え~と、あの……ですかぁ?」

 ゼハゼハ言ってる俺を心配してくれてるこの子は、すごくいい子みたいだ。

 クスクスクス

 っていつものふんわりな感じで笑うのは響子だ。


「大丈夫よ玲子そんなに心配しなくても、シンジ君はちゃんとえる人だから」


――そっちの心配かぁぁぁぁぁい!!

こころの中で突っ込んだ。


「あっははははははは」

 軽快に笑うカレンに少しムッとする。

「大丈夫よ、こう見えて頼りになるから。それで相談内容って?」

 更にフォローもしてくれてるみたいだけど、微妙だし。

「あ、と、そうですネ。それじゃ。えと私は清桜せいおうのバドミントン部なんですけど、部活の合宿でこの前の連休に〇市に行ったんですけど、そこに行ってから部員の二人がおかしくなっちゃって」

 下を向いて辛そうにする[三和]。


「で、どうおかしくなったの?」

 とカレン。

「その、毎日夜になると変な夢を見るそうで[水の中から声がする]んだそうです」

「それだけなの?」

 と響子

「ううん、最初はそれだけだったんだけど、今はその…学校の中にも、部屋にも出るんだそうです」

「出るって……いうのはその……」

 暗い顔した伊織。

「ええ、女の人の幽霊だって二人とも……。それから怖くなって二人とも学校に来なくなっちゃって」

 

俺は頭を抱えて下を向いた。

――これって普通に[心霊体験]ってやつだよね? とても自分たちだけじゃどうにもなりそうにないな……


「どうなの? シンジ君」

カレンが俺の顔を見る。

「どうなのって言ってもなぁ……。ちなみにその二人とは会ったり話したりできるのかな?」

「あ、ちょっと確認してみます」

 そう言って三和はバッグからケータイを取り出して電話をかけ始めた。

「真司君ごめんなさい。難しそうなら断ってくれていいからね」

 そう言いながら両手を顔の前で合わせている響子。


 確かに難しそうではあるし、俺達だけで解決するのは難しいかもしれない。それに――この三和はこんな話を誰も聞いてくれないと思っていただろうし、それに友達を助けてあげたいと願ってる気持ちは本物だろう。


――だから……


「連絡取れました。二人一緒にならって条件でですけど、会ってくれるそうです」

 電話を切ってこちらを見た三和が言う。

「わかりました。会ってみましょうお義兄ちゃん」

「え?」

 それまでオレンジジュースを時々飲むくらいで、動きも声すらも出さなかった義妹いもうと伊織が突然話しかけてきた。なぜか伊織は目をキラキラさせてムンッっと気合が入ってる感じ。

「あ、ああそうだな。俺もそう思ってたんだ」

「ほんとにぃ?」

 カレンの目がジト―――って感じになってみてる。


「ああ、ほ・ん・と!! とりあえず何もできないかもしれないけど、その二人に会ってから考えてみいいんじゃないかなって思ってさ」

 俺的は少しカッコつけたつもりだったんだけど――

「さすがシスコン!! 義妹いもうとちゃんの言う事は聞くんだネ」

 カレンの無差別が突然飛来した。


――お前はまたかぁぁぁぁぁぁ!!

 思ったのは言うまでもない。





※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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