それぞれの想い

『あんた康介じゃないじゃない!! 誰なの!?』


 ふわふわ浮いたまま大声で叫ぶカレン。

 壁と弟にぶつかった拍子に気絶して[霊体]になったらしい。

――まぁ、そういう事がおこっても不思議じゃないけどね、元々が[生き霊]さんだったわけだし。

 叫んでる声も、たぶん俺と[康介]にしか聞こえてないんだろうなぁ。

しかし今はそれどころではない。

 どういう事だ?。「あんた誰よ」ってカレンが言うって事は、この康介は本当の康介じゃないってことなのか?


「どういうことだカレン。アイツは康介じゃないって」

『どういうって、こっちが知りたいわよ!! この人は私の知ってる康介じゃないわ。顔が全然違うもん』


――ガビーン!! Σ(゜Д゜)


 雷に打たれたみたいに体の中を何かが走り抜けていった感じ。俺は康介はカレンの知り合い、同級生だと聞いて疑わず、さらにカレンも知り合いだとがかり思って確認してはいなかった。そう本人なのかどうかだ。

「お、お前誰だよ!! 俺をだましてたのか?」

『う~ん、シンジ君。だますつもりはなかったんですけどね。まぁ結果的にはそういう事になっちゃうかなぁ』

アゴに手を当てながら返答する康介


『で? ホントは誰なのあんた?』

『僕の名前は……っと、そろそろ時間がないようなのでこちらの用事を済ましてしまうかな。カレンさん、あなたは向こう側へ行くつもりはありますか?』

『な、無いわよ!!』

『そうですか……おっとこの辺りが限界のようですね。ではまたお会いしましょう』

 そう言い残すとすぐに康介はスッと消えていった――


「お、お義兄にいちゃん大丈夫?」

 隣で立ち上がろうとしていたはずの伊織が、俺の体(特に顔)を心配そうに見回している。

「だ、大丈夫だ。俺よりもカレンと弟君の方を見てやってくれ 」

「うん、わかった」

 ようやく力の戻り始めた体をゆっくりと持ち上げる。うん。どこもケガしてるところは無いみたいだ。

 大きく深呼吸して心を落ち着かせた。


 そうしてる間にようやくカレン(本体)も気が付いたみたいだ。見る限りケガらしいものは無いみたいだけど、力の抜けて重そうな体を両腕をついて持ち上げようとしている。

 少し前まで[幽霊]になってたんだけど、体力的には大丈夫なんだろうか少し心配になる。


「シンジ君、気になることがあるんだけど……」

 まだせき込むようにして声を出して聞いてきたカレン。俺も今の会話の中で思ったことがある。

「康介は誰かに操られてるって事?」

「いや、俺の考えが合っているなら、康介はもうんじゃないかと思う」

「どういう事?」

「アイツが康介のふりをして、カレンを向こう側へ連れていきたがってるのは、[幽霊]としてもこちらの世界に康介が居られなくなったからじゃないかな」

「それってどういう意味よ? わかりやすく言ってよ!!」

――十分わかりやすいと思うんだけどなぁ……


「簡単にいえば……康介はもういない。アイツは別人――かな?」

「ああ……なるほど……」

 カレンは腑に落ちたのかゆっくりと何度もうなずいている。

 

 ただ、疑問は残る。どうしてアイツは康介のフリまでしてカレンを連れていきたがるのか。このまま何もしないでいれば、たぶんカレンは有無を言わさず連れられて行ってしまうだろう。先ほど、俺達が受けた衝撃の力を考えればアイツにとっては簡単な事だろう。

 フッと浮かんだ考え少し違和感を覚えたが、すぐに違う事を考え始めて忘れてしまった。

「そろそろ伊織を手伝わないとな……」

 まだ重く、思った通りに動かない体をゆっくりと起こして、先に起きてたカレンの弟君とともに後片付けをする伊織のもとへと歩いて行った。

それからしばらくの間、カレン姉弟きょうだいとともに心も体も落ち着くまで一緒にいた。

 家に帰って着いた時には夜十時をちょっと過ぎてしまっていた。


 

 その日の夜、夜中にふと目を覚ました――

 のどが渇いてるのに気づいてキッチンへと歩いて行くと、テーブルに腰かけて下を向いている伊織に気付いた。こちらが近づいてることにも気づかないほど、何か深く考え込んでいるようだ。

 水を汲もうとしていたグラスをもう一つ取って水を入れて、伊織の方へと向かって歩き目の前にグラスを置く。

 

 コトッ

 ビクッ

震える伊織の体。


「ああ、ごめん驚いたか?」

「あ、お義兄ちゃん……」

「どうした? 眠れないのか?」

「うん……ちょっとね……」

 返事をした伊織はまた下を向いてしまう。

 こういう時、かけてあげればいい言葉を俺は知らない。特に伊織には。

 この義妹いもうとは何でも小さい時からできてしまう、俺からすれば超エリートだ。そんな義妹いもうとに何も持たない俺が言ってやれることは無い。時は下を向いてきたこともあるだろうけど、その理由すら俺には理解できないのだから。

「お義兄ちゃん」

「どした?」

「お義兄ちゃん……は、いつからそんなに強いの?」

――えっと、聞き間違えたかな?


「俺が……強い?」

「うん。小さい時からそう……。どんな相手にもどんな時も立ち向かっていける」

「う~ん……」

 俺は真剣に考える。はて、この伊織がいう強さって何だろうか?小さい時からとは言うけど、俺は運動でも勉強でも全く目立ったためしはない。ケンカだってしたことは無い。まぁそれはするだけの友達がいなかったのが要因なんだけど。

「そんなこと……考えたこともなかったな。今気づいたよ。そうか俺はもともとは強かったのか……」

「え?」

 伊織が不思議そうにこちらに顔を向けた。俺は少し笑って。


「伊織がそう見えてたのは意外だったけど、俺は俺が思った通りに行動してるだけだよ」

「ッ!!」

――あれ? また伊織が下向いちゃった。少し顔が赤いけど熱でもあるのかな?


「お義兄ちゃんはやっぱりすごく強いしごにょごにょ……」

――今ごにょごにょって言ったぞ。初めて聞いた!! 意味わかんないけど。


「ありがとうお兄ちゃん。私も強くなれるように頑張るから」

 おやすみって水をゴクゴク飲み干して、自分の部屋へと駆けていく伊織。

 

――ありがとうなんて言われる事してないんだけどなぁ。まぁでも……伊織が元気ならそれでいい。俺も寝よう。


残ったカップを台所にかたずけて、静かに自分の部屋に戻っていった。




それはいつものように聞こえてきた――

『何か考えついた?』

「ん? ああ、ちょっと思い……うわぁぁぁ!!」

 いつの間にか隣にふわふわ浮いてるカレンがいた。

 カレンの家に襲撃(って言っていいのかわかんないけど)があってから一週間後、今俺は昼飯を食べるために一人で校舎の屋上に来ている。考え事をしたいという事もあって、誰もいない屋上へと昇ってきたわけだけど。


『なんでいつも驚くのよ!!』

「なんでって、俺はそういうのに慣れてないんだって言ってるだろ!! いや慣れたくもないし!!」

――危うく今日の昼飯を落としそうになったじゃねか!!

 心の中でマジ切れする俺、しかしふわふわカレンもあまり機嫌がよろしくないみたいで。


『なんで連絡してこないのよ!!』

「え?」

『普通、あんな事があったら心配とかして連絡位するでしょ?』

「いやぁ、俺がいても役立たないし、連絡してもさ。それにほら、俺って女の子と話すの苦手だし」

『はぁ~~、あなたってほんっっっと女の子の気持ちが分かってないのね』

 プリプリカレンさんのようです。 

――まだちょっとブツブツ言ってますけど……やっぱ怖い。


『ま、あなたらしいって事にしといてあげる。それで? 考えってなに?』

 気を取り直したのかあきれた顔をしながらカレンが聞いてきた。

「あ、ああ、康介の事件をネットで調べてて見つけた写真があるんだけど」

『うん』

ふわふわ浮くカレンが俺の隣にきて止まる。

「事故直後の写真に写ってたんだ彼が」

『そうなんだ。あなたってそういう状態の物でも見えるんだ』

「そりゃぁ、写ってればそのモノ達は見えるよ」

 変なとこに感心するんだなぁって思いつつ、カレンに続ける。

「カレン、分かる範囲でいいんだけど、その時の周りの人の様子とか聞いてもらえないかな?俺は関係者でもないし、[康介]本人とは面識がないから難しいだろうからさ」

 ふわふわ浮いていたカレンの表情が少し曇るような気がした。何かを考えてるようで。

『わかったわ。あまりそういう事はしたくないのだけど、今回は自分自身がかかってるもんね』

「すまん、お願いできるか?」

 こくんとうなずいた後にふわふわカレンはスッと消えていった。

 後は自分でやれるだけの事をするだけだな。


 真司は手に持っていにパンを大きくかじりついた。





※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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