幽霊なんて嫌いだ
買い物をする間、伊織の周りをふわふわ回りながら難しい顔したり、急に喜んだりしながらもカレンは大人しくついてくるだけで伊織はもちろん俺にも話しかけてくるぉとはなかった。
ま正直ほっとした。
カレンと話してるところを見られたら、誰もいないところを見ながら独り言を話している危ないやつだと思われるのはまず間違いない。
俺たち家族に関係ない周りの奴らにどう思われてもいいが、一応なついている?
「お
あれ? いつの間にか家についていていつの間にかリビングに立っている。買い物してたって記憶はあるけど、帰ってきたっことが全く覚えてない。でもしっかりと両手には買い物袋を持っている。
――あれ? マジでいつの間に帰って来たんだっけ……
「お義兄ちゃん聞いてる?」
「お? おお、聞いてる聞いてる。ま。まぁ。急がなくていいからな、うん。あ、手伝うことがあったら言ってくれ。なんでもやるからさ」
「えぇ~? でもお義兄ちゃん何にもできないでしょ~?」
くすくす笑いながらキッチンへと向かう伊織。
ま、たしかに何もできないけどさ。少しは兄らしいことしたいし。
『シンジ君て義妹ちゃんには優しいんだね』
真横に突然現れたカレンに思わずビクッとする。
「おう? 俺は誰にでも基本的には優しいんだよ」
『そうかなぁ? なら私にも優しくしてくれてもいいんじゃない?』
「う、うるさいな! 俺は基本的に人には優しいんだよ!!」
――まったく、なんなんだこいつは突然現れやがって。たしかに伊織には少し甘いかもしれないけど、おれは基本優しい人間なのに。
「っていうか、なんでお前家の中までついてくるんだよ」
『あらシンジ君、女の子を家から追い出そうなんする人が優しいなんて言えないんじゃない?。それにこれから暗くなるし危ないじゃない、ネ?』
「ネ? ってたしかに女の子かもしれないけど、そもそも、お前今は人じゃないじゃん!! 夜とか昼とか内とか外とか関係ねぇだろ!」
『あら、やっぱり冷たい。シンジ君って困ってる人をほっとける人なんだ?』
「そ、それは……」
ごにょごにょと口の中で言いよどむ。
『それに!』
俺に向けて指を突き立てるようにしながら顔をのぞきこんでくる。
「な、なんだよ?」
『その、お前ってやめてくれない? 今はこんなふわふわ浮いたりしてるけど、私にはちゃんとカレンって名前があるんです!!』
「お、おお? ご、ごめん。でも、その…俺は義妹以外に女の子を名前で呼んだことなんてないし、だいたい女の子と話すのだって、あんまりないっていうか……ほぼないいっていうか……」
下を向いて言いよどむ。そう自慢じゃないが俺はクラスの中でも全然目立たない部類の男子だ。当然のことながら女の子と話すのなんてハードルが高すぎる。
「お義兄ちゃん? 誰と話してるの? 電話中?」
キッチンにいたはずの伊織がリビングのドアを開けて顔だけ出している。
そういえばまだ俺はリビングにいたんだなと改めて思い出す。
「い、いや、何でもないよ。誰とも話してない。テレビじゃないのか?」
あははははっと笑ってごまかす。
――とりあえずここで話してるのはまずいな。うん、よし。
「じゃあ、悪いけど出来たら呼んでくれるか? 俺は部屋にいるからさ」
「うん、わかったぁ。もう少しだからまっててね」
おっかしいなぁ、確かに話し声が聞こえたんだけどなぁ……って言いながらも素直にキッチンに戻っていく伊織。すまん義妹よ。兄ちゃんはウソをついてしまった。
――キッチンに手を合わせてゴメンネ。
それから自分の部屋にはいった。
『シンジ君の部屋だぁ~、へぇ~』
「おい! ふわふわしながら何を探してやがる!」
『そんなの決まってるじゃなぁ~い、男の子のへやにきたらやることはエッチな本を探すのがお約束でしょ?』
「いやいやいやいや、な、ないから!! そんなお約束もそんな本も」
『ほんとかなぁ~?』
はぁ~まったくなんなんだよこのお嬢様は。同年代の女の子ってみんなこんな感じなのかな?だったら俺やっぱりついていけねぇや。それ以上にお前ホントに幽霊ちゃんなのか?全然違うじゃねぇか。
ベッドの端に腰を降ろして目の前をふわふわ浮かぶカレンを見つめる。
ほんとに何でこんな子が幽霊なんかになったんだろう?
「ちょっと、話してもいいか?」
『なあに?」
ふわっとした身体をこちらに向けて柔らかい笑みを浮かべるカレン
さっきまでは下を向いたり、横顔だったりで見えていなかったが、こうしてよく見るとやっぱり今時のお嬢様って感じの雰囲気のする、目鼻立ちのしっかり整った顔のアイドルっぽい顔をしている。
どくっ
あれ? なんか変な感じがしたけど気のせいかな。
「少し話してもいいか?」
『うん、そのためについて来たんだもん』
「なら家探やさがししすんのもうやめてくれ」
『はぁ~い』
手を挙げたカレンが素直に机の前にある椅子に腰を下ろす。正確には浮いてるんだけど…。
「カレン……きみは自分の体は生きているって言ってたけど、何か心あたりあるの?」
『……ある……わ』
「そうか……なら話してくれないんじゃ俺にはどうしようもないよ。言いたくない部分は言わなくていいから少し聞かせてくれないか?」
彼女の方を見ると、どうしようか迷った顔をしてうつむいていた。
「お義兄ちゃ~ん! ゴハンできたよぉ~!」
ドア越しに伊織の呼ぶ声が聞こえてベッドから腰を上げる。
何も話してくれないなら、この部屋に漂う冷たい空気と重たい空気から逃れたい。とりあえずメシでも食べに行こうかな。
腹減ったし。
俺は生きてるし。
『セカンドストリート……』
部屋のドアを閉める前にカレンが呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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