そしてはじまり

『ねぇ、ちょっと、聞いてる?  もしもーし 』


 人の周りをぐるぐる回るなうっとうしい!


 こういうやつもたまにいるから、なるべく目線を合わせないようにしてんのに!


心の中でぼやきながらも何もなかったようにして伊織と話をしながら買い物に行こうと歩を進める。


 その間も周りをふわふわしながらギャーギャー言っているようだが、まったく相手をせずに…いや、やっぱり多少は気になってしまう。小さい頃も何度かそのモノ[幽霊」たちの言う事を聞いてあげたり相談に乗ってたりしていたからだ。おかげでほんの些細な事から事件になりそうになったことまである。いや、確か一回新聞にニュースとして取り上げられたことがあったような気がするが……

 そんなことばかりしていて気づいた事がある。むやみやたらとそのモノたちの言う事、頼みごとを聞いてはいけないということだ。大半はろくなことがない。


『こら、ちょっと話ぐらいききなさいよぉ。ゴメンきいてもらえないかな?』

『 ね? お願いします!』


 回り込んできたそのモノがペコっと腰を折るくらいに曲げて懇願してきた。

「 ッ!! 」

 歩みを止めて額に手をあてて考え込んでしまう。

 そんな俺を少し離れて歩いていた伊織が少し横を通り過ぎて不思議そうに顔を覗き込んでくる。


「 お義兄にいちゃん? 」


 つくづく俺は俺が嫌になる。守りたい大事なもの存在が近くにいるのにそのモノの話を聞いてあげたいと思ってしまっている自分に腹が立つ。

 でもここで無下にしてしまって、伊織にもしもがあってはそれこそ自分が許せなくなるだろう。


「 ん? あぁ、ちょっと寄りたいトコがあるから、悪い伊織、先に店に行っててくれないか? 」

「あ、うん。それは大丈夫だけど、お義兄にいちゃんこそ大丈夫? なんか顔色良くない感じがするけど」


 くっそ、俺の勝手な行動にも文句を言わず、ましては俺の心配をしてくれてるなんて、よくできた義妹いもうとだなぁ

 なのにおれはコイツの話を聞こうとするなんて……


「ん、大丈夫だよ。悪いな。すぐに追いつくから」


 わかったぁ~。じゃ後でねぇ~っと言いながら、素直に歩いて店を目指す伊織をその場で見送る。

『 へぇ~、ああいうが好み? 彼女さん?』


 ま!っというような感じでいつの間にか隣に並んでいたそいつは両手を顔に添えて一緒に伊織を見送っていた。

「な!、ち、違う、妹だ、義妹いもうと!」

 ぶっ!! と噴き出して慌てて否定する。

――俺はともかく、俺の彼女に見られたなんて伊織に失礼だろ。おれはしがない兄貴なんだから..……


「 で、話ってなんだよ? 」

『 あれ? 聞いてくれる気になったの? なんで?』

 ふわふわ浮きながらホントにフシギだな? って顔して覗き込んでくる。


――あれ?  意外とこいつかわいいかも?  義妹の伊織が清純派だとするとこいつはカワイイ系というか、今時風にまとまってるというか……いかんいかん、頭をぶんぶんと振る。かわいくてもこいつは[幽霊]なのだ。変な気をだしてはいかん。


『? どしたの? 』

「 い、いや何でもない。ここじゃアレだから少し奥に行って話そう」


 周りを見渡して細い路地をみつけ手招きして「こっちだ」っと歩き出す。

 そいつも何も言わずに静かに後を付いてくる。

 少し歩くとこじんまりとした公園がある。そこのベンチに腰を降ろして小さなため息をついた。

 そのモノはふわふわと浮いて目の前に立つようにして止まる。


「 で? 相談ってなんだ 」

『 何そのめんどくさそうな顔は』

「 だってホントにメンドいんだもん」


 はぁ~っとまたため息をつく。


『確認してもいいかな? 私の姿が見えてるし、話もできるのよね? 』

「そうだけど」

『じゃあ、私以外にも私みたいなモノがみえてるのよね?』

「そうだけど」

『真面目に答えなさいよ! なんかやる気が感じられないんですけど!』


 ――はぁ?みたいな顔に今の俺はなっていると思う。

「正直、めんどくさいしどうでもいい」


『あなた、ほんとにやる気ないわね……まったく、やっと私が見える人が見つかったと思ったのにこんなにやる気のない人だったなんて、しかも若そうだし、頼りなさそうだし……』

 ブツブツと小さな声で独り言をつぶやいっているようだが、残念ながら俺はそういう事を聞き逃すようには出来ていない。そう簡単に言うとカチーンときた。

「あぁ~そうですか、頼りなく見えましたか。そりゃすいませんね。確かにまだ中学生だからな。んじゃ見える大人な人にでももう一度会えるように祈っててやるよ 」

 じゃあなっと手をあげて腰を上げその場から離れようとした。もちろん買い物に行く途中だし、先に行かせた伊織も気になるし。

『ご、ごめんなさい。ちょ、ちょっと待ってよ!』

 ふわふわ浮いていたのが目の前まで来て両腕をいっぱいに伸ばし俺の体を押しとどめようとする。

 もちろんいろんな意味でスルーしちゃうんだけど(主に物理的に)、それでもそのモノはまた前に回り込み押しとどめようとする。


『ごめんなさい、ホントにもう言いません。話だけでもキイテクダサーイ』


――最後ちょっとふざけたか?


『 聞いてくれないなら、あんたの義妹いもうとにとりくわよ 』


 ――なに?

 それはマズい。冷や汗が背中をつたう。前に一度妹は何者かにとりつかれたことがある。それはもう家の中でたいへんなことになった。本人は覚えてないだろうけど……あの時。


「大事な義妹を……伊織を、お前たちに渡してたまるかぁ!!」


 うーん自分的にも思い出すとめちゃくちゃ恥ずかしい。もう穴の中に入って暮らしてしまいたいくらいに。


『もしもーし、ねぇちょっと帰ってきてぇ~ 』

「 は!! 」


 ――自我復活!


「 わ、わかったよ、は、話は聞くから。イ、義妹、伊織にとりつくのだけはナシで頼む」

『オッケー。なら約束する。妹ちゃんには今はとりつかないから 』


 気を取り直して先程まで座っていたベンチに腰を下ろす。この時点で結構体力は消耗してるけど仕方ない。話を聞かなきゃ伊織が危ない。


『えと、まずは自己紹介します。私は日比野カレン。私立明興めいこう学園中学の三年生です。生きていればだけど……』

 ――ちっ、お嬢様かよ。

「俺は藤堂真司。この近くの中学の三年だ」

『あら、同級生だったの。なら私の事はカレンでいいわ 』

「わかったよさん。俺は……どっちでもいい、好きに呼べよ 」


 俺と同じ歳で[幽霊]になるとは、まだやりたいこともやれるだろうし、未来は広がっていただろうにと、少しかわいそうだなと思う。そのモ・ノ・たちに対しても同情的に接してしまうことも自分ではダメなことだとはわかっているが、心の底からはそうは思えない自分も確かにいることも事実なのだ。


「で、話ってなんだよ」

『あ、そ、そうね。なんだか話せる相手がいるってわかって忘れてたわ』

 おいおいマジかよ。こいつまさかお嬢様学校でもポンコツ系か?

『 実は私……』

「あぁ~っと、ちょっと待ってくれ。一応話は聞くって言ったけど、こっちからも断っておくぞ。俺は確かに君たちみたいなモノを見たり、話せたりはするけど成仏とか、天国とかに送ったりすることはできないからな」

 真面目な顔をカレンに向けながら話す。カレンは「わかった」と言ってうなずいた。しかもこれだけは言っておかなければいけないことがある。

「しかも、俺はお前たちのようなが好きじゃないし、慣れてるわけじゃない!」


 シーンと静まり返る公園に遠くから小さい子供の声だけが聞こえている。






※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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