霊感体質ですがなにか?

  『こんにちはシンジ君 』


  色白な顔をした年齢的には高校2年生の俺と変わらないくらいの卵型のかわいい顔をした女の子が目の前に腰を降ろして話しかけてくる。

  現在学校の授業の真っ最中である。


『 今日は晴れて気持ちいいよね 』


  そして別に睡魔に負けて眠ってしまっている訳ではない。

  ちなみにここは三階建て校舎の二階。教室の窓際の席である。

  さらに俺は窓の外側を向いている。つまりその先に席はない。


『 ねえ、無視しないでよ。ねえってば 』


  ガン無視である。

 

 なにより授業中だし、周りにはみえてないし変な奴とは思われたくはない。

  まあ、もうすでにオタクくさい暗いやつという思い込みが周りに浸透しんとうし始めていることは知っているし、それを否定はしようとも思っていない。

口数は確かに少ないが俺はオタクではない。

 俺、藤堂真司はただ霊がみえているだけの学生である。

 そう先ほどから俺に声をかけているのは、みんなには見ていないだろう幽霊の女の子なのだ。今はふわふわと目の前を漂っている。


 はぁ~

 ため息を一つ。

 それからまわりには聞こえないように気を使いながら声を出す。


「 何か用か? 」

『 用ってことはないけど…… 』

「 なら邪魔じゃまするな、授業中だからな 」

『冷た! シンジ君冷たくない?』


――しんじらんな~い! みたいな顔するな! つかやっぱりおまえ幽霊だけどかわいいんだよ、ちきしょおう!!


『 あら、私だってJKなんですけど ?』


 たしかにこの辺りでは知らない奴はいない有名な進学校の制服を着ながらフワフワ浮いている。

 この子の名前は[日比野ひびのカレン]

 出会いは唐突だったが、ある頼まれたことを解決した。

 それからお礼だとか言ってずっとそばについてきているのだ。


『ほらほら、じぇーけーですよぉ。じょしこうせいですよぉ』


  目の前でひらひらふわふわする

  制服のスカートが揺れる。そう見えそうに――


「やめろってば!!」

  ガタガタと机をならし勢いよく立ち上がった。

  もちろん周りは静まる。

  そして授業中である。


「なんだ藤堂、寝てたのか? それとも俺の授業がつまらないとか。まさか……クラス崩壊ほうかいしようとでもしてんのか?」


  先生の言葉を皮切りにクラス内はざわつき始める。


「あ、すいません。ほ、ほんとになんもないです。すいません」

  ペコペコと頭を下げて謝るしかない。

  周りの女子からヒソヒソと話をする声が聞こえる。まぁ、良いことを話してないのは分かる。

  男子からもバカなの? とかやるな藤堂とか声が上がる。

  先生がそれらをうまく鎮めて再び黒板に書き出しを始める。

  冷や汗を背中に流しながら椅子に座る。


『ごめぇ~んネ』

 ペロッと舌を出して胸元で手を合わせて謝るカレン。そしてふわふわ

 もちろん周りには見えていない。


 はぁ~~

 大きなため息を一つつく

 まだ女子のヒソヒソ話が聞こえている。


――あぁ~なんなんだよちくしょう可愛いなおまえ!! 何でなんだよ!!

 俺は机に向かって思いっきり顔を押しつけて、まわりには聞こえない心の叫びをあげるのだった。




 藤堂真司こと俺は生まれてから声を出して言葉を話し始める頃には、[変なもの]が見えていたらしい。もちろん覚えてはいないが、誰もいないところに話しかけていたり、誰もいないところでそこにもう一人いるかのような遊び方をしていたらしい。

  一番最初の思い出せる記憶の中にはもちろん人ではないと一緒に暮らしていたし、それが亡くなっているお祖母ばあちゃんだとわかるのに時間はかからなかった。

 

それから数年して母親が重い病気で家族みんなと闘病の末に亡くなった。

  亡くなる直前の言葉を今でもしっかりと覚えているし、何よりも嬉しかったのだ。

「あなたのその眼には多分私たちの知らない、見えないモノが映っているんでしょ? それはあなたの他にの人には理解できないチカラ。でもねシンジ、あなたならその能力チカラを人の役に立つ事に使えると信じています。今までシンジの事わかってあげられなくてごめんね」


 その言葉が母さんと話をした最後になる。

 母さんはその一週間後に亡くなった。そして亡くなった後の母さんにも会った。言葉は交わせなかったけど母さんは優しく笑っていて、父さんをジッと見つめて薄くなって消えていった。

 それからは会ってはいない。

 

 それから俺はそのことを誰にも言わなかった。いや、言えなかった。父さんは夜遅くまで仕事して帰るようになり、俺は父方の両親に預けられながら育ったがそのことは黙っていることにした。

 そうはいっても見えているモノが急に見えなくなるわけでもなく色々な事が起きる。もちろん怖いことも起きる。

 幼い俺はどうしていいかわからずに泣きながら布団で寝ることが当たり前の毎日になった。

 口数が減っていったのもこの頃からだろうか――


  それからまた数年がたち俺も小学生になっていたある日、父が小さな女の子を連れた女性を家に連れて来た。

  新しいお母さんと今日からはシンジの義妹いもうとだと。

  それは別に俺にはどうでもよかった。家にいる人が増えるだけで父さんの両親のところで過ごすことがなくなるだけのこと。変わったのは小さな女の子が自分の周りをついて回る事。

 その子の名前は伊織といい二つ違いの義妹になった。


  俺が高校を受験する歳になっても、家にいる時は口数が少ないままだった。中学生のころからあまり外に出かける事はせずに家の中、特に部屋の中で過ごすことが多くなっていった。

 けして引きこもり体質なわけではなく、外に出れば余計なが見えてしまうそれが嫌だっただけなのだ。

  そんな俺を義母かあさんは温かい目で対応してくれた。決して無理に外に出させようとせず、かといってやらなければいけないこと特に学校に行く事や行事なんかには必ず出席するように育てられた。

 それでも義妹は相変わらず俺の周りをチョコチョコとついて回る日々が続いた。


  こんこん――

「お義兄にいちゃんいる?」

  こんこんこん――

「お義兄ちゃん?」


  夏の暑い日差しに外の空気が蒸され始める前のある日、あまりたたかれることのない俺の部屋のドアが鳴っている。

  ベッドで横になりマンガを読んでいただきた俺は、重い体を引きずるように起きてドアに向かいゆっくりと開く。

  目の前にいたのかビクッと身体を震わせて少し後ろに下がる義妹伊織いもうといおり


「おう伊織、どうした?」


  今年中学生になった伊織はなかなかに成績優秀らしく、なおかつ運動神経もいいみたいでクラブ活動からいろいろと誘いがあるらしい。それでもどこにも所属することはなくすべて断っているらしい。

  らしいばかりの表現になっているのは、地味で目立たぬ義兄である俺とはあまりかかわらないで済むように接触を避けているから、伊織のことは人から聞いた事しか知らないのだ。


「えと……、 お義兄ちゃん今日出かける用事あるかな?」

「 ……。義妹いもうとよそれを俺に聞くのは意味がないぞ。何しろ用事ができたためしがないからな 」

「それはそれで自慢にはならないと思うけど……」

  顔を引きつらせながら困り顔で顔を掻く伊織

  俺とは血のつながらないおかげか、卵型の小さな造りの輪郭に大きなクリっとした目がついている感じの顔で白い肌が幼さを残している。


「ちょっと買い物に付き合ってほしいんだけど……大丈夫かな? 」

「そんなことくらいいつでも付き合うぞ、別に引きこもりなわけじゃないからな  」

「 良かった…… 」

「え? なんで?」

  そんなことでほっとされてることに疑問を持った俺が頭をよぎった事が素直に言葉になって口からこぼれていた。

「 ふぇ?  なんでって、その……別にお義兄ちゃんには関係ないというか……ごにょごにょ……」

「 ??  まぁ別に何でもないならいいんだけどな? 」


  その言葉を聞いた伊織が「じゃぁよろしくね」っと言い残してパタパタと廊下を走って玄関へ向かっていった。

  ドアを閉めると頭に?がついたまま出かける格好を始める。とはいえいまの格好に上着をはおるかはおらないかくらいしか変わらないんだけど。


ドアを開けて玄関まで歩いていくと、既に伊織は用意を終えていて肩に大きなショルダーバッグを下げてこちらを向いて待っていた。

「待ったか?」

「え? いや大丈夫だよ」

「よし、じゃあ行くか」

  玄関のドアを開けると太陽はもうすぐ真上に来ようとしていたようで、日差しがぎらぎらとしている。

  休みの日はだいたいが家にいて、昼過ぎまでは布団に入って寝ているし、そういえばこんな風に出歩くなんていつぶりだろうかと思う。

  出かけるにしても一人のことが多い俺は誰かが隣またはすぐ後ろを付いてくることはあまりないので、なんか変な感じがしている。それが例え伊織なのだとしてもだ。


「買い物って、何を買いにどこに行くんだ?」

「えっと、今日の夕飯のメニューだよ?」

「あれ? 義母さんは?」

「やっぱり! お義兄ちゃん忘れてるんだ! 今日はお義父とうさんとお母さんが遅くなるから二人で食べてねって、いってたでしょ?」

  ――う~んと考えるがまったく覚えていない。は~ぁっと、ためいきをつく伊織を見ながら少し苦笑いをしてしまう。ほんとにこの義妹はよくできたいい子だなぁって思う。それに比べて俺は……


  外に出て歩くということは、また見たくないモノたちの中に入っていくということ。なのだが伊織との買い物にも一緒についていってあげたい。兄としてそのくらいは一緒にいてあげたいと思っているのだ。

 

 あまり感じのよくないモノには極力避けるように伊織を誘導しながらてくてく歩く。

 俺たち二人とすれ違う人々はもちろん、後ろをあるく伊織にも、元気のがなくラフラと歩く俺のことを頼りない男の子だと思っているかもしれない。

 それはそれでよかった。別におれはどう思われてもかまわないといつも思っていた。

 そう、俺は伊織にも[見えないモノが見える]とは言ったことがないのだ。

 まぁ、言うつもりもないのだけど。


 そんな時――


  二人の歩く道の向こう側に、少し影が薄い見た目は自分とそう変わらないであろう女の子がキョロキョロと辺りを見回している。

 何かを探しているような、誰かを探しているような……

 

 なるべくそういうのには関わり合いたくはない。自分に何ができて何ができないかなんて、小さい頃から随分と経験しているからだ。

 伊織と話してこの場を去ろうとしたとき、少しだけその女の子の方に目線だけを送ってしまった。

 それは完全に無意識の一瞬で自分でも見えたかどうかは分からないほどの時間。


『あなた! ねぇあなた!! そこの男のコ!! 今、一瞬こっち見たよね?』

「え?」

 

  向かい側にいたはずの女の子が目の前でむ~っというような感じで頬を膨らませながら俺の顔を覗き込んでいた。

  線の細い黒い髪の少女である。

  そしてもちろん俺だけが視える[]なのである。


『私が見えたあなたに、頼みがあるのよ!』


  それが日比野ひびのカレンとの出会いであり、この物語の始まりなのである。



※作者の後書きみたいな落書き※

この物語はフィクションです。

登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。

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