第20話 月下美人

『月下美人』


掌に閉じ込められた

春霞のような未来は

覆い、

包み、

漂いながら

銀の夜空にたなびく


人との出会いに疲れた日には

足元の影を踏むように歩こう


都会は毎日がそんな日の連続だ

昼夜問わず人混みでごった返し

地球に逃げ場がないなんて

僕は大袈裟に喚いてしまう


あゝ、ふと視線を上げれば

芳しい香りを放つ月下美人

あの開花をひとり待つように

静かにひっそりとしていよう


誰も知らない秘密の花園で

僕の人生も二、三度と咲く

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