工藤 怜治と言う男。

 大阪日本橋は不思議で変な町だ。


 オタク街であるのは確かだ。

 同時に食い倒れの町でもある。

 また、やたらカードショップが多い。


 噂では殺し屋が暗躍してたりとか地下に格闘技場があるとか言われてるが本当だろうか。


 などと赤松 リョウヤは考える。


 ふとある少年と遭遇した。


 日本橋版平和島 静雄とか言われてる奴だ。


 平和島 静雄。


 電撃文庫のデュラララ!!と言う作品に出て来る人気キャラクター。


 金髪でサングラスでバーテンの格好をしていてと常人離れしたフィジカル面を持っている。


 日本橋版の平和島 静雄の名前は工藤 怜治と言う。


 体に恵まれ、部活でバスケかバレーやってますと言っても十分通用する体格だ。

 顔が人相が悪く、バーテン服着てサングラス掛けてと髪の毛を金髪にすればまんま平和島さんの出来上がりだろう。


 歩く都市伝説で、大阪日本橋で格闘技齧った半グレ連中が暴れていた頃なんかも全員無傷で殴り倒したそうだ。


 他にも薬を売り捌いていたカラーギャングを壊滅させたりとかそんな噂まであった。


 そんな彼は何故か赤松 リョウヤが通うメイド喫茶、ストレンジに定期的に足を運ぶようになった。


 赤松 リョウヤも工藤 怜治は最初は接点は無く、会話もしなかったがある事をキッカケに知り合う事になった。


 他にも前嶋刑事とか。


 キッカケは単純に赤松 リョウヤが外国人の少女が柄の悪そうなチンピラに絡まれているのを助けようとして、それに割って入るように現れた工藤 怜治に助けられたと言う感じだ。


「男二人でメイド喫茶ってなんか変な感じだな」


「それが普通じゃないんですか?」


「君はそれでいいのかな?」


 赤松 リョウヤとしてはあんまり若い男性がメイド喫茶に足を踏み入れるのを推奨したくないと思った。


「別にどうとも――小説は進んでるんですか?」


 軽く受け流し、リョウヤにとって痛い質問をされた。


「小説は進んでるんだけどね。没される可能性とかあるからね――日本って漫画アニメ先進国みたいに言われてるけど中身はメチャクチャ世知辛いし・・・・・・」


「そうなんですか?」


「他の子にも話してるんだけどね――仮に今書いてる小説書き上げても没食らったらしまいだし。これでも打ち切り連載作家だからね――そう言う前科が付くと中々新作書かせて貰えなくなるんだ。そのためにプライド捨ててペンネーム変える人とかいるみたいだし」


「想像してたよりも大分大変な業界なんですね」


「正直、安易な気持ちでプロになるために人生捧げて欲しくない業界だね――」


「・・・・・・ラノベ作家になりたいって、どうして思ったんですか?」


「え? なんだ急に?」


「いや、ちょっと将来とか色々と考えるようになって――」


「将来ね――」


 将来。

 人生設計。

 人間である限り、誰もがぶつかる向き合わなきゃ行けない壁。

 これを効くと工藤 怜治も学生なんだなと思う。

 

「周りの連中は気楽に、スマフォを弄ったりして――運動部の部活頑張ってる連中だって皆が皆、その部活でプロとして生きて行けないでしょ。遂先日まで中学生になって、たぶん高校生活もあっと言う間に終わりが見えて来て――とりあえず勉強でもしておいた方がいいかなと思うんですけどね」


 今の学生社会そんな風になってんのなとか思いつつリョウヤは口を開く。


「皆、そんなもんだよ。勉強の有り難みを気付くのは大体大人になってからだし。だけど勉強に身が入らない感じかな?」


「いや、まあ勉強とかはしてるんですけど、何の為に勉強やってるのかとか――そりゃ自分自身の将来のためにやるもんなんですけど――そこでふと将来どうなりたいかって考えるようになって」


「難しい質問だなこれ――」


 これは真剣に勉強してる人間ならば誰もがぶつかる壁だ。


 この質問は答えはあってないようなもんだ。

 酷い言い方をすれば「いい大学に入るためにすればいい」、「公務員になるためにすればいい」で終わってしまう。


(だけど皆その前に、勉強しないんだよなぁ・・・・・・)


 だけど多くの学生達はそれ以前に勉強が出来ない、もしくは挑もうとしない。


 それはどうしてか?

 単純に勉強出来ないからだ。

 適当な理由を見付けてメンドくさいからだと逃げてしまう学生が沢山いるのだ。


 それに学生だって馬鹿ではないし大人にも責任はある。

 幼い頃から学歴だけは立派な馬鹿な大人達や頑張った大人達の末路を見てきているのだ。

 ネットを通してそう言う大人達ばかりを見て子供達は勉強しても「ああ、勉強してもその程度なのか」と逃げる口実を自分自身で言い聞かせてしまう。

 

 そして自分のように趣味に半ば逃げて偶々運良くプロデビューするような奴が産まれるのだ。


 目の前の若者がそうなって欲しくないので赤松 リョウヤは真剣に考え込んだ。


「大人でも悩むんですね」


「大人も万能じゃないんだよ。親や学校の教師だってそうだ。もしそうだったら子供は悪事を働かないし、学校でイジメや自殺も起きないよ」


「賢いんですね」


「本当に賢かったら少なくともここにはいないと思うね」


 褒められていい気分ではあるが同時に微妙な気分にもなってリョウヤは苦笑した。

 自分が賢かったら東大生とかは賢者を超えた何かになる。


「んで話を戻すけど、将来の話だったね。取り合えず悩んでるウチは勉強頑張っておけとしか言い様がないね。それに暗殺教室の殺センセーが言ってたみたいに勉強ばかりだけでもダメだ。工藤君の場合はぶっちゃけ格闘技の世界とかでも十分やってけそうだけど・・・・・・」


「よく言われますけど出来ればそう言うのは無しな方面で」


「うんじゃあレスキュー隊とか人助けの職業とかは? とにかく体が資本の職業なら引く手数多だと思うよ?」


「そう言うのもありか・・・・・・ありがとうございます。少しスッキリしました」


「ああどうもこちらこそ」


 工藤 怜治は暴力を服を着て歩いている人間に見えるが実際接してみると礼儀正しい少年だ。

 これも社会に出る時には重要なプラスポイントになるだろうなどと考えた。

 マイナス点があるとすればその正義感のせいで警察のお世話になってしまうところか。



 獅子堂 レオナと新塚 カリンはそんな二人のやり取りを他のテーブルから遠くで見ていた。


「将来か・・・・・・私達も頑張らなければなりませんね」

 

 カリンの言にレオナは頷いた。


「うん。ラノベ一本で食っていける人って極僅かだもんね。それでも書き続けたいなら勉強は必要みたいだし」


「あら? だけど良いラノベを書くためにも勉強は必要ですわよ? それに一般常識とかファッションとか時事問題とかそう言うのも。身近な例で例えるなら今私達がやってる勉強なんかもそう。学生の日常物を描くなら今の私達は相当有利な立場にいますわ」


「そうね――赤松さんもよく学校生活とか今どんな勉強してるかとか聞いてくるし。ラノベの主人公って大体学生設定だからそう言うの気になるのかな」


「まあ、どちらにしろラノベ業界は狭き門。どうなるにしろ人生詰まないように勉強するにこした事はありませんわね」


「う、うん」


 と、二人は勉強の大切さを再認識するのであった。

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