第15話 二人組と一人組

「西浦君、ちょっといいかしら。」


 一日立った次の日の昼休みの事である。目の前には席に座っている西浦とその横で声をかけている青森がいた。


「……なに」


「すぐ終わるから来てもらえるかしら?」


 そう言うと青森は西浦を引き連れて教室を出ていった。

 これで第一段階だ。青森、うまくやれよな。


 十五分くらいして青森と西浦が帰って来た。

 しかし、そこである疑問が生まれる。何故か西浦が凄く落ち込んで帰って来たのだ。


「おい、青森?何したんだよ。」


「……教えてほしいのかしら?」


 ……西浦、ごめん。察したわ。俺の人選ミスだった。こいつにやらせればそうもなるか。だって……脅したんだろうし。


「西浦君に少し聞いてだけよ?ちょっと、これを見せながら。」


 チラリとポケットからCDが見えた。そのCDにはあるキャラのイラストが描いてあり、明らかにそのCDの正体がわかる。


「それって、アニメのドラマCDか……。」


「ええ、そうよ。岬さんに借りたのよ。ちょっと道具としてね。」


 つまり、そのアニメに西浦が出てるのか。しかも、イケメン役で恥ずかしい台詞を言う。


「何て……惨いことしやがる。」


「ふふ、何を言っているか分からないわね。」


 そのとき気づいたのだか、西浦の方から物凄い圧を感じた。と言うか、こっちを凝視してる。


「……それよりも例の件はどこに決まったんだよ。」


「場所を移動しましょうか。」


 そう言われ俺は立ち上がり青森の後についていった。青森に連れられてついた場所は屋上だった。


「あ!青森さん、萩本君、こっちこっち!」


 屋上に出てすぐにこちらに気づいた岬さんがてを降っている。

 あれ、絶対屋上に出てること気づかれるよな。何で先生達はほっといてるの?


「……あんまり大きな声で呼ぶなよ。わかったから。」


「それには同感ね。」


 青森も少し困ったような表情で俺に同意した。

 ま、残念な子だからしょうがないんだけどね!


「何か私の扱いが酷い気がする!」


「………で、青森。西浦の件は」


「無視!!?」


「……まずは座りましょうか。」


「青森さんも!?」


 俺と青森は岬さんの斜め前に座り円になるように座った。


「で、放課後はどこに呼び出したんだよ?」


「西浦君の家よ。」


「………は!?お前昨日は岬さんの家にするって。」


「岬さんに迷惑かと思って。」


 だからって………。いや、そもそも俺がこいつに頼った時点で俺に何かを言うしかく何てないか。


「それに考えて見なさい。これは逆にチャンスではないかしら。」


「チャンスてどういう意味?」


 岬さんは首をかしげて青森に質問をする。


「今回の件に関しては西浦君本人と話すよりも……。」


「……原因のアイツの姉と話した方が早いってことか。」


 青森がこちらを向き頷く。

 ま、確かにそっちの方が手間が省けるよな。


「けど、問題がひとつあるだろ。」


「ええ、それに関しても考えてあるわ。」


 青森が言うのであれば大丈夫だろう。少なくとも岬さんに頼むよりかはまだ良い筈だ。


「じゃ、今日の放課後に集合と言うことで俺はいくぞ。」


 俺は立ち上がりドアの方に向かおうとした。

 しかし、立ち上がった瞬間袖を捕まれ無理やり座り直された。


「ちょっと待ったー!萩本君、昼御飯食べてないよね?」


「あ、ああ。食べてないけど、それがなにか?」


 そう言うと岬さんは後ろから鞄を取りその中から弁当箱を取り出した。


「一緒に食べよ?」


「嫌だ。」


「即答!?な、何で!?」


 だって仲良しみたいじゃん。勘違いしちゃうよ、俺の事が好きとか思っちゃうよ。


「それに俺教室に鞄置いてきちまったし。」


「あら、それなら問題ないわよ?」


「何言ってんだよ。鞄の中に弁当忘れたんだって言ってるだろ?」


 しかし、青森はこちらの話を聞かずに持ってきていた鞄を漁り始めた。

 無視ですか、そうですか。しかもこいついつの間に鞄なんて持ってきてたんだ?確かこいつ俺の机に来たとき何持ってなかったような?


「合ったわ。これよね?」


 そう言って青森の持っていたものは確かに俺の弁当だった。


「………いや、待て。何がこれよね、だよ!?それ俺の鞄じゃねぇか!?」


「あら、安心して良いわよ?貴方の鞄の中身は何も取ってないから。」


 そういう問題じゃないですよね?しかもちゃっかり自分の弁当まで俺の鞄の中に入れてやがった!


「これで一緒に食べられるわよね?」


「………あー!分かったよ。一緒に食べればいいんだろ!」


 何だかんだ、最近の俺ってこいつらと一緒に弁当食うこと増えたような。

 そんなことを思いながら昼休みが終わり授業に戻った。


「や、やっと終わった。」


「何疲れているのかしら?」


 いや、疲れるだろ。だって最後の授業で体育だぞ?それにバドミントンだし。


「ハァ、ハァ、ハァ」


 隣で息が上がっている西浦がいた。前回と同じように組む相手が俺たちしかいなかったため西浦も同じグループになった。


「大丈夫か?」


「ウウ、無視かも。」


 確かに青森に付き合わされたらそれりゃ、疲れもするわ。休ませないし、気を抜くと顔面に当ててくるし、いつか絶対後ろから刺されるぞあいつ。


「あら、軟弱なのね。」


「はは、体力ゴリラと一緒にしないで下さいよ。俺ら人間なんで。」


 その言葉を言った瞬間俺の頭部に激痛と骨と金属のようなものが当たるような音が頭に響き渡った。


「何か言ったかしら、ハゲ本くん?」


 青森の言葉に反応できないほどの激痛がはしりその場にうずくまってしまった。


「だ、大丈夫!?」


「あら、西浦くん。そのハゲに近づいてはダメよ。ハゲになる感染症を持っているわ。」


 俺はネズミとか蚊かな?


「お前はガキか!?茶々と片付けて教室に帰るぞ。」


「何を言っているのかしら?貴方の帰える場所はそこにある下水道でしょ?」


 お前を下水道に叩き込んでやろうか!?そもそも、何で俺がそこまで言われなきゃいけないんだよ。


「ほら!二人とも早くしないと遅れるよ。」


 岬さんがバトミントン用のネットを西浦と片付けながら俺達に声をかけてくる。


「俺の」


「私の」


「「せいじゃない!」」


 いや、君の罵倒のせいですよね?俺間違ってないよね?


「いいから早く!」


 ………解せぬ。


 ……………………………………………………


「で?肝心の西浦は何処にいるんだよ?」


「はぁ、貴方の記憶力は鶏以下かしら?」


 授業が終わり西浦を待つべく正門前に立っていたのだが………早速こいつは俺に罵倒してきやがった!


「はぁ?じゃあどうやって西浦の家まで行くんだよ!?」


「私が案内するわよ?」


「……は?」


 青森が平然とそう答える。

 いや、待ってほしい。そもそも、こいつと西浦が会ったのはこの前のはずじゃ?


「……お前どうやってあいつの家の場所を?」


「学校の名簿に住所が書いてあったのよ。」


「ど、どうやって名簿を見たんだよ。そう言う住所とかが書いてある物って普通は俺達の見えないとこにあるはずじゃないのか?」


 そう言うと青森はニコッと笑って何も答えなかった。

 …………俺は今日一つ分かったことがある。


「お前怖い。」


「ありがとう。」

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