第13話 人間は関わりそして……。
本日の授業が全て終わり、放課後を向かえる。放課後になると決まって三つのグループに別れる。
一つ、部活に向かうグループ。二つ、教室に残り下らない話をするグループ。三つ、物音をたてずに素早く帰宅するグループ。
「……何でまたお前達がいるんだよ。」
三つ目のグループにいる俺なんだが。最近になって素早く帰宅出来なくなってしまった。その理由は………。
「あら?まさかとは思うけど逃げよいなんて考えてないでしょうね?」
理由は青森と岬さんが俺の帰宅を阻止するためである。
「………ボク、カエリタイ。」
「………僕も………帰りたい。」
青森の横に何故か西浦が立っていた。
「貴方達は黙ってついてきなさい。じゃないと……」
スッと青森はスマホを取りだし何かを画面に写した。
「ちょっと待って!行きます、行きますから!」
画面が此方に向けられる前に俺は手を前にだし少し大きな声で青森を止めた。
「そう、それじゃ行きましょうか。」
「何処に行くんだよ?」
「それはついてからのお楽しみよ。」
そう言って青森はいく場所を教えてくれなかった。しかし、俺はなんとなくわかっていた。
「それりゃ、ここですよね。」
あれから二十分くらい歩き岬さんの家の前についた。
「で、何で西浦を連れてきたんだ?まさかとは思うけど西浦に音読させるのか?アレを。」
「それもいいけどそれよりも………岬さん例の物を」
「本当にこれやるの?」
「ええ。」
そう言って岬さんが取り出したのは少し前に売られた乙女ゲーだった。
「お前、俺らに何される気だよ?」
「あら、今回はボイス付きだからこれを聞いてればいいのよ?」
………怪しい。いつもの青森ならもっと嫌がりそうなことをしそうなのに?
「どのルートをやるの?」
「そうね。朱矢のルートをお願いするわ。」
「青森さんもこう言うのやりたがるんだ。以外だな。」
その時一瞬、ほんの一瞬だが西浦の方を見た気がした。青森が岬さんの家に来た理由、そして乙女ゲーをやろうとした理由、西浦を見た理由。
「………おい、まさか」
『お前、俺のことが好きなんだろ。』
PCから声優の声が聞こえた。そしてその声は何処か聞き覚えのある声だった。
いや、聞き覚えがあるんじゃない、これはどう聞いても………。
「ぬァァァァァァァァァア!」
西浦がいきなり大声をだし自分の髪をぐちゃぐちゃに掻き回し始めた。
「………お前最低だな。」
「あら、どうしてかしら?私はただ、このゲームをやりたかっただけよ?」
絶対嘘だろ。だってこいつめっちゃいい笑顔してやがるし。それにあのゲームを出した瞬間から明らかに西浦の顔色を伺ってたし。
「青森さん、何で西浦君はこんなに叫んでるの!!?」
「岬さん、もう少し進めてみれば分かるわよ?」
そう言って青森はもう一度PCをいじりボイスを出した。
『…………俺以外の男と一緒にいるの禁止な。』
「分かったかしら?」
「あ、あ~なるほどね。」
岬さん、やっと理解したか。岬さんは青森の脅しのための準備を手伝ってたんだ。知らないうちに。
「ご、ごめんね。私知らなかったから、西浦君が声優だったなんて。」
「い、いや、いいんだ。ぼ、僕は受けた仕事をしただけだし、岬さんはしたかったからこのゲームを買った。それだけだから。」
『いい加減………俺の物になれよ。』
横からまた西浦、いや、朱矢の声が聞こえてきた。その後十回ほど朱矢の声を流しその度に西浦は悶えていた。
「はぁ、はぁ。」
「流石にやりすぎだよ。青森さんも西浦君に謝った方がいいんじゃ?」
「あら、どうしてかしら?私はただ、ゲームを楽しんでいただけよ?」
お前が楽しんでいたのは西浦の反応だろうが。だってお前……いや、もう言うのはやめよう。分かりきってることだから。
「西浦大丈夫か?いろんな意味で。」
「……大丈夫じゃないかも。」
涙を目に溜め込みながらそう呟いた。ただ、俺には西浦を助けることなんて出来ない。
「……で、お前は結局何がしたかったんだ?まさか、西浦の反応を見たかっただけか?」
「そうね、半分はそれが理由だけれど。」
半分はって………半分でも最低だと思うんですけど。と言うか、本当はそれだけなのでは?
「ねぇ、西浦君?貴方が声優と言うことを何で隠しているのかしら?」
「え?そ、それは目立つのが嫌だから。」
「本当にそれだけかしら?」
青森がここまでして西浦に聞きたいこと……西浦が声優と言う職業を隠したい理由か。
その前に青森お前ってめんどくさいな。最初から回りくどくしないで正直に聞けばいいのによ。
「………貴方は、いや、その貴方の足かせは何かしら?」
「青森さんは………一体どこまで知ってるの?いや、そもそも、何でそんな事を聞いてくるの?」
西浦の雰囲気が少しだけ変わった。それはきっと青森が西浦の抱えているモノの芯をついたからだろう。
「私はただ、興味があっただけよ。貴方の抱えている悩みに対して。」
「それは、青森さんに関係があるの?ないよね?」
「ええ、無いわね。けれど、人間と言うとのは外来、興味を持ったものをどこまでも追い求める生き物よ。」
青森と西浦がなんの事を言ってるのか俺と岬さんにはわからない。ただ、話の内容はわからなくとも今の、この空気が重いことはわかる。
「おい、青森が何を聞きたいのかわからないが。そこまでにしとけよ。」
「貴方は黙っていてもらえるかしら?何もわからないのだから。」
チッ、だからこそやめろって言ってんだよ。何もわからないだからこそわかるものだってある。
「俺にはお前達がわからないが、それでも以上は西浦の問題じゃないのか?お前の踏み込んで良いことじゃないんじゃねぇのか?」
「あら、何もわからない貴方だって今、踏み込んで来ているじゃない。」
「だから!おま」
言いかけた所で俺の前に西浦の手が横から割り込んできた。
「萩本君もそこまでだよ。」
「「……………」」
「ねぇ、青森さん。もう、ここまでにしよ?これ以上踏み込んで来たら僕は君達を恨むよ?」
そう言って西浦は鞄を持ち岬さん家から出ていった。
「………ねぇ、青森さんも萩本君も一旦落ち着こ?」
「……悪いけど、俺帰るわ。ちょっと今はこいつの側にいたくないから。」
「あら、それはこちらの台詞よ?」
今、このまま青森といたらホントに心底、嫌いになりそうだ。
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
後ろから岬さんの声が聞こえたような気がしたが俺はそのままその場を後にした。
「お前が言ったんだろ。自分の心すら殺すって。」
そう思いながら、俺は今の自分のこの怒りに対して何処に吐き出せばいいのかわからなくなっていた。
……………………………………………………
「あら、おはよう。」
次の日の朝からまさかの青森と遭遇してしまった。
「………ああ。」
そう呟き、俺は青森の横を通り教室に向かった。何故か、青森の事を見ると無性に腹が立った。
「何で俺、こんなに腹が立ってんだろ?」
疑問に思いながら俺は教室の扉を開けた。
「あら、おはよう。」
そうだった、忘れてたよ。青森と一緒のクラスだったよ!あの時横を通り過ぎても無駄じゃんか!
「……………」
俺は無言のまま席に座る。青森もそれを見て自分の席に戻っていった。
「あ………萩本君おはよう。」
もう一つ忘れていたわ。西浦もうちのクラスじゃん!しかもこっちに至っては前の席じゃん!
「あ、ああ、おはよう。」
「その、昨日はごめんね。いきなりあんなこと言って帰っちゃって。」
「いや、別に気にしてねぇよ。それにこっちこそ悪かったな。」
西浦の様子は昨日のあの時とは違い、落ち着いたていた。
「………あんまり、詮索しないでね。青森にも言っといて貰えるかな。」
「なぁ、一つだけ聞いて言いか?」
「………答えられる範囲なら。」
俺が西浦に対して抱えている疑問それは……。
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