第10話 働かざる者食うべからず
働かざる者食うべからず……何処かの偉人がそんな事を言った。しかし、働かざる者とはどう言うもの達のことを指すのか……そんなの決まってるか。
「おい、あんたも働けよ。」
「やだな~萩本君。今働いてるじゃないか!」
「ほほう。裏でマンガ雑誌読ん出る人が働いてると……面白いこと言いますね。」
現在、とあるコンビニのバックヤードである。
「………君はなにもわかってない!わかってないよ!」
「へ~、さっきまで裏でマンガ雑誌を読んで笑ってた人の何を解れと?」
「君が働いている間にマンガ雑誌を読む!それは君が働いてるのに俺は働いてない、そう思うことで背徳感を得られる。それがどれだけ嬉しいか!」
「…………」
この人……俺の働いているバイト先の仕事仲間の秋原さんはとにかく仕事をしたがらない。
「………帰りますね。」
「え!?ちょ、じょ、冗談だよ!?アメリカンジョーク、ブラックジョーク、ジャパニーズジョーク!」
「………働け。」
「ハイ、イエッサー!」
そう言ってバックヤードからレジまで秋原さんは駆け足で戻っていった。
「はぁ、こんなことなら妹の所にいるんだったな……あいつ大丈夫かな。」
そう、昨日早めに帰って来た理由、それはバイトのシフトが関係していたためである。
俺がバイトをしているなんて不思議だと思ったやつ今すぐ出てこい、今なら宇治村スペシャルだけでゆるしてやる。
「萩本君!ちょっとお客さんが並んでるから戻ってきて!」
「はい、わかりました。」
俺がバイトをしているって理由、それは妹の所にいくための交通費を稼ぐためである。流石に、毎週、毎週親にお金を出してもらうのは気が引けるので自分で稼げるところは稼ごうと思ったためにここで働いている。
「いや~お昼は流石に混むね。早く帰りたいよ。」
「……秋原さん確か来てまだ三十分くらいしかたってないですよね?」
「はぁ~、もっと楽して稼げないかな。」
「……あんたは十分楽してるだろ。」
しかしながら、ここのコンビニ近くに駅があるわけでもなく、何か有名なものがあるわけでもない、唯一大通りが今いる場所の一本向こうの道にある。そのためにお昼ぐらいしか人が込み合わない。
「……俺なんて今もう五時間位いるんですけど。」
「萩本君は仕事ができるからそんなに苦じゃないでしょ?俺なんて仕事ができないからな。」
「覚えようとしてないだけだろが……。」
秋原さんは俺よりも五つ上の二十一才である。このコンビニの他に家庭教師もやってるらしいがそっちはかなり有名らしい。
何故か教え方がうまくて。
「……後一時間したら帰るんでちゃんと仕事してください。」
「いいな~!俺も帰りたいよ。帰ってアニメみたい、ゲームしたい、お昼寝したい!」
最初の話に戻ろう。働かざる者とはどう言うもの達のことを指すのか……その答えは今目の前にいる人のような者たちを指す筈だ。
「そうだ、最近知ったんだけどさ!近くの白い壁のアパートあるじゃんか。」
「はぁ、左のアパートとのことですか?」
「うん、そうそれ。でさ、そこに最近知ったんだけど、高校生くらいの美少女がいるらしいんだよね!」
美少女て、夢見すぎだろ。誰その噂広めたやつ。
「誰ですか、そんな噂広めた人は。」
「店長だよ!」
あのバカ店長は………。
「はぁ、それで、噂の人物とは?」
「お!気になったみたいだね!」
秋原さんは勿体振るように少し間をおいてきた。
「ちょっと裏で発注やって来ますね。後レジ一生お願いします。」
「ま、待って、ナチュラルに一生とか言わないで!後話も聞いてください!」
「はぁ、で?」
一度裏にいくフリをして秋原さんを驚かせてから話を戻す、これが最近覚えた秋原さんの対策法である。
「そ、それがさ、噂の人物て君と同じ学校の生徒らしいんだよね!」
俺と同じ学校の生徒、しかも美少女?そんなのあの二人ぐらいしか俺には………まさかな?
「どうやら、金髪の小柄らしいんだよね。」
金髪の小柄、そんなやついたっけ?少なくとも俺の知り合いじゃないな。
「しかもだよ!胸がでかい!」
「消えろ。」
「ちょ、本気で言わないでよ!」
「………本気じゃないですよ。」
多分だけど……。
「そ、それに声もアニメ声なんだよ!」
「アニメ声て……秋原さんは聞いたのか?その人の声。」
「ないよ?店長の時間に来るらしいから。」
オタクの店長め、もう五十後半のおっさんなんだからアニメ見すぎるなよな。
「俺も聞きたいな!アニメ声の胸でか金髪の少女!」
「あ~はいはい。寝言は寝て言え。」
「俺歳上だよね!?」
「じゃ、一時間たったんで上がります。」
そう言ってレジから出ていった。その時後ろから何か聞こえたような気がするが無視してバックヤードに戻った。
アニメ声の金髪の小柄な同じ高校の人か……ちょっとだけ気になるな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます