第8話 女の子の家は夢と希望でできて……いない
「……嘘だろ?」
「……………」
「ん?何が?」
岬の家につくと直ぐに岬の部屋まで案内された。
「この、エロゲーの数って」
「ざっと、50作品くらいあるかな?」
「………流石に……思いもしていなかったわ。」
青森は先ほどからあっちこっち視線を向け岬の部屋の中を見ながら驚愕している。
「……やっぱり変かな?」
「……すまん、正直に言う。お前は変だ。」
「ちょ、萩本君!?」
「いや、いくらオタクでもこんな数持ってるやつはそうそういねぇだろ。岬さん、もしかして手当たり次第気に入ったのを買ってないか?」
岬さんはそう聞くと「あはは」と笑いそっぽを向いた。
「まさか、積みゲーとかないよな?」
「ど、どうだったかなぁ?無かったような、合ったような。」
はい、わかりました。そう言うやつに限って積みゲーがあるんだよ。ソースは俺。
「そ、そんな事よりも!青森さん、どうかな?」
「え!?な、何がかしら?」
「やってみない?」
そういうと、岬さんは棚から一つエロゲーを取り出すと青森にジリジリとよっていく。
「いや、わ、私は、べ、別に…。」
「そ、そんなこと言わずに!これとか泣けるよ!最後に主人公が死んじゃうんだけど、その時に見せるヒロインの表情とか言葉とかに私は泣かされたし!」
おお、やっぱり何度見ても凄いな。この、女子が女子に詰めよりエロゲーを熱く語ってる光景ってのは。
「………は、萩本君とかがやりたがるんじゃ無いかしら?」
「え!?萩本君も一緒にやってみる!と言うかやろ!」
青森め、こっちにまでとばっちりを……。
「悪いが俺はエロゲーを卒業したんだ。中学の時に散々やったからよくわかるけど、一度手を出したらなかなかやめられないしな。」
「そんなこと言わずに!また、再開してみれば、エロゲーライフを!」
やっべ、岬さんに変なスイッチが入った。このままだと青森もろとも俺で巻き込まれる。
「あ、えっと、あれだ!俺はソシャゲ命なんだよ。人には人の趣味がある。それを押し付けるのはどうかと。」
「……確かに。そうだよね、趣味は自分の物だし、相手に押し付けるものじゃないよね。」
そう言って落ち込むような姿を見せた岬さんは持っていたエロゲーを近くのテーブルに置いた。
「……岬さん。」
「ご、ごめんね!無理いって押し付けようとして。」
「………分かったわ。」
おい、まさか青森さん?
「や、やるわ、エロゲー!」
「おい、ちょっとまてー!お前正気か!?確かに可哀想に見えたかもしれないけどあれ絶対嘘だぞ!」
「あら、信じてもあげるのではなかったのかしら?」
お前、この家に来る前に騙されたんだぞ?
「お、俺はやらないぞ?やるんならお前がやれよ。」
「ふふ、貴方はこんな言葉を知っているかしら?死なばもろとも。」
「いや、何で道連れにされなきゃなんねぇんだよ!」
それに女子二人の前でエロゲーやれとか男として終わってるから!
「………萩本君、タスケチェヤルヨ。」
「……わかりました。」
この人マジで弱み握った瞬間から強気に出てきやがった!萩本一生の不覚だわ!
「それじゃあ!最初っからスタートと言うことで!それと、エロいシーンは全部スキップで!」
「「……お、お~!」」
その後、一時間ほど俺だけがエロゲーをプレイさせられた。マジで、青森のアマ一回も交代しなかったな。
「もう、いい時間だから帰ってもいいか。精神的にも、肉体的にも限界だから。」
「あ!もう、こんな時間だったのか!もしよかったら家でご飯食べてく?」
「いや、俺は家に帰って飯作んなきゃだから。」
「私も遠慮させて貰うわ。この後用があるから。」
俺と青森は鞄を持ち玄関で岬と別れた。
「じゃ、また明日ね!」
「ああ、じゃあ。」
「ええ、また明日。」
俺は岬さんの家の前で青森とも別れ、帰宅を急いだ。帰宅すると既に宇治姉は帰ってきており、前と同じように叱られた。勿論宇治村スペシャルと一緒に。
……………………………………………………
次の日、学校につくともう、噂は広まっていた。
「……ねぇ、そう言えばさ、あの岬さんの写真を貼ったのって三年の佐藤先輩だったてホントかな?」
「私、朝佐藤先輩が先生につれてかれるの見たよ。」
「うわ、マジで。しかも十八禁コーナー入ってたんでしょ?同族じゃん。」
女子のいくつかのグループがヒソヒソと先輩のことを話している。
「……それがさ、もう一つ噂があってさ。」
「何、何?」
「それが、岬さんが十八禁コーナーにいた理由って脅されてたからなんだって。」
「あ、それ私も知ってる。確か……」
俺が教室に入り席に着いた瞬間、一斉に女子のグループが話をやめこちらを見てきた。
「萩本くんに脅されてたとか。」
「……萩本君ちょっといいかしら?」
青森が廊下にたっており、俺を呼んできた。
「………分かったよ。」
席をたち、青森の後に続くように歩き始める。青森が歩いて着いた先は屋上だった。
「これはどう言うことかしら?」
そう言いながら青森は自分のスマホの画面を俺に見せてきた。
「………学校のLINEアカウントか。」
「そうよ、そしてこれには佐藤先輩の事と……何故か貴方の事が書かれている。」
画面には先輩の事の他にこう、書かれていた。
『岬さんが十八禁コーナーにいた理由はどうやら一年二組の萩本伸也とか言う奴のせいらしい。』
そんなことが書いてあった。
「これ、最初は佐藤先輩が書いたのかとも思ったけれど、でも、佐藤先輩は確か私達の名前を知らないはず。つまり、貴方の名前が出てる時点でこれは佐藤先輩ではない。」
「そうか。じゃあ俺に恨みでも持つ生徒が書いたんじゃないのか?」
「それもないわよ。貴方の下の名前なんて誰も覚えてるわけないから。これは、もしかして……貴方が自作自演をしたのじゃないかしら?」
いや、待って。俺の下の名前知ってるやつもきっといるよ?誰も答えないだけで。
「……は!俺はそんなお人好しじゃない。それに俺が岬さんにそこまだする必要ないだろ?」
「そう……。貴方がそう言うのならこれ以上の追求はしないわ。けれど、覚えておくことね、そんな事を平然と続けられる人間はいつしか自分の心すらも殺すわよ。」
そう言い放ち屋上から青森は出ていった。一人残された俺は辺りの景色を見ながら無意識のうちに呟いていた。
「自分の心すらも殺すわよ、か……。」
ま、確かに今回の件は俺の自作自演だ。岬さんの件を引き起こしたのは先輩だ。けれど、岬さんがエロゲーを趣味でやっていたのは本当のことだ。
なら、先輩を捕まえたところで根本的な、岬さんの印象は何一つ変わってないことになる。もし、岬さんの印象を少しでも和らげるのだとしたら、それはきっと………。
「青森、きっと人は何かを犠牲にするしか人を助けられないんだよ。」
呟き、そっと屋上のドアを開け教室に戻る。やはりと言っていいほどに噂は噂を呼び、あっという間に全クラスに俺の噂は広まっていた。
教室ではニヤニヤとしているもの、此方を見て憎悪をいだくもの多種多様な眼差しを送られる。
そんな状態で一日をすごし、途中宇治姉に職員室に呼ばれ事情を聞かれたが、知らばっくれてなにも答えなかった。
「さて、帰るか。」
鞄を持ち教室を後にする。しかし、正門前でとある人物たちに捕まった。
「……何だよ?何かようか?」
「「もちろん」」
そう言うと青森と岬さんは俺を両方から腕をつかんで引っ張り出した。
「お、おい!何処に連れてく気だよ!」
「青森さん、そんなの決まってるよね?」
「ええ、萩本くんは黙ってついてくればいいのよ。」
だ、黙ってついてこいって……俺はてっきり朝のことを引き合いに出されるのかと。
「さ、ついたよ!」
「おい、ちょっと待て。何でここなんだよ」
そこは学校から東の方、俺の帰り道の途中にあるゲームショップだった。
「そんなの決まっているでしょ。まさか忘れたのではないでしょうね?」
「な、何のことだ?」
「はぁ、貴方は鶏か何かかしら?五日前の記憶を思い出してみなさい。」
五日前……確か青森とゲームショップに行って、そこでエロゲーを買ってる岬さん会って、それから。
「もう、遅いよ!一緒に青森さんのゲームを選ぶんでしょ!」
あ、そう言うことね。つまり、俺を荷物持ちにしようと思ったわけですか。
「と、言うことで、ゲームを選んだいる間私達の鞄を持っていてくれるかしら?」
青森はそう言い放つと鞄を此方に渡してきた。それに続き岬さんも鞄を渡してきた。
「これは貴方への罰よ。」
「そうそう、罰だよ、罰!それと罰はまだ終わってないからね!」
渡された鞄を持つと、二人はそう言った。
「おい……何だこの鞄の重さは。」
「あら、知らないの?女の子のバックは夢と希望がつまっているのよ?」
「ま、私のにつまってるのはエロゲーだけどね。」
夢と希望もねぇじゃねぇかよ。エロゲーが夢と希望なら俺はいらねぇぞ。
「さ、という事で!早速、ゲーム散策開始!」
こうして、岬さんのエロゲー騒動は少しずつ落ち着いていった。俺の噂も興味を失ったのかあまり騒がれなくなったが、それにともない俺に近づこうとするものもあの二人以外いなくなった。
因みに、岬さんからの罰はまさかの二人の前でエロゲーをやり、しかも音読させることだった。勿論、エロい部分はカットされたけど。
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