第6話 非常は無常で、現実はリアル

 あれから一日たった昼休み。青森には少し頼みをして岬を見張っていてもらった。


「で、結果はどうだった。」


「……その前にいいかしら?」


「あ、ああ。」


「何で分かったの?」


 疑問に思うのも仕方ないか。まぁ、俺はラノベも読むしソシャゲもやる。物語の先読みなど簡単にできてしまうのだよ!


「まぁ、勘だよ、勘。そんな気がしたからだ。特に理由なんてないよ。」


「そ、そう。まぁ、それは後々聞くとするはそれよりも案の定……佐藤先輩が岬さんに近づいたわ。」


 やっぱりか……これで確定だな。この件を起こしたのは佐藤先輩だな。


「しかし、何であの先輩がこんなことを?」


「……プライドかな?」


「プライド?どういう意味。」


「振られたからプライドが傷ついたんだろ?」


 いかにもイケメンだったしな。イケメンは自分の容姿にプライドを持つものが多いから仕方ないちゃ仕方ないよな。


「そんな理由で……そう、そういうことなら、私は手加減しないわ。潰してやる。」


 怖い、怖いから。俺に言ってるみたいになっちゃってるから。


「それよりもこれからどうするの?」


「ああ、その件だけどお前にはまだ、岬さんの近くで監視していてほしい。もしも佐藤先輩がもう一度告白しようとした時に止めにはいってほしい。」


「何故?一度降られたのだからまた断られるでしょ?」


 そうもいかないから困ってるんだよな。


「心ってのは隙が生まれると簡単に左右されるものなんだよ。お前も経験したことくらいあるだろ?いつもなら卒業ソングなんて懐かしい程度聞かずに終わってたのに卒業式が近づくと何故か聞きたくなるあの衝動、それと同じようなもんだよ。」


「ん?よくなからないのだけど?」


「だから、心ってのは簡単に揺らぐ、降ったのに優しくしてれる先輩マジカッコいい状態に陥ったらどうなると思う?」


 青森は考えるように手を口ぶるの近くに持っていく。


「……正直答えにくいけど、魅力的ではあるかしらね。」


「そうだ、だから困るんだよな。そこでお前だ!もしもの場合あやふやで終わらせておいてくれると助かる。」


「分かったわ。少しでも足止めはしておいてあげる。でも、早くしないと多分明日の放課後には告白するはずよ、あの調子だと。」


 なら、少し早いけど今日の放課後にでも決行するか、fastフェーズを。


「じゃあ、俺は放課後にでもちょっと用事を済ませてくるよ。」


「ええ、分かったわ。私は放課後に岬さんのところに行くわね。」


 昼休みが終わりそうなので俺達は解散して席につく。それから授業は進み、直ぐに放課後が来た。


「青森、じゃあ後は頼んだ。」


「ええ、貴方のほうも。」


 そう言い青森とわかれて俺は前に行った岬とぶつかったゲームショップに立ち寄った。


 確かここって……。やっぱりか。このチラシの横にはってある紙。


「店内の写真撮影の禁止、もしも、写真撮影をした場合は罰金か……。」


 これなら使える。後は首尾よく店員さんを使えれば……。


 そこでレジまで行き暇そうにしていた中年の男の人に話しかけた。


「あの~すいません、ちょっといいですかね?」


「はい、何でしょうか?何かご不明な点でも?」


「え、そのなんと言いますか、確かここって写真撮影禁止でしたよね?」


「は、はい。そうですけど。」


「あの、自分写真撮影をしてる人を見かけたんですけど。」


 その時に店員さんの表情が少し変わったのが分かった。


「いつですかね?できれば何時ごろかも教えてもらえると。」


 よし、これなら行ける。後は写真を見せて時間とあの人の名前を出せば。


「えっと、その人が取った写真もあるんですけど見ますか?」


「はい、出来れば見せてもらえると助かります。あと、ここではなんですから事務所方で話しましょうか。」


 その後、四十分近く事務所の方で話を済ました。


「確かにこれはここですね。それに監視カメラにも顔とカメラがキッチンと写っていました。ご協力ありがとうございます。」


「あ、いえ、自分は少し気になっただけですので。それと、出来れば自分の名前を学校側に出すのは避けてもらえると助かるのですが?」


「そうですね、その先輩の人だけにしておきます。でも、最悪の場合は出させてもらうかも知れないですが。」


 まぁ、学校側もいきなり先輩の名前を出されたんじゃ疑うよな?いや、でもこの店もう岬さんのことしってんだよな?


 まさか学校側から直接この店に岬さんの件で謝りと注意の電話がかかってるとはな。


「では、これで。もし、何かあった場合は後日連絡してしまうかもしれませんが。」


 ふぅ、終わった。後は学校とこの店の問題だな。


 それにしたって佐藤先輩てバカなのかな?私服に着替えただけで顔は一切隠さずに十八禁コーナーにはいってるんだから。


「さて、明日が楽しみだな。」


 その時にポケットに入っていたスマホが鳴り始めた。


「……俺のスマホが鳴っているだと!」


 約3ヶ月スマホが鳴ったことなんてない、それなのに俺のスマホが初めて鳴った。なに?これってオレオレ詐欺的な、そう言う系のあれですかね?


 そう思いながらもスマホを見てそっと画面をスライドさせ電話に出た。


「ちょっと何でもっと早く出ないのかしら?」


「あ、なんだ、お前か。」


「………はぁ、そんな事よりも大変よ。」


「何が?」


 また、ため息をつきスマホ越しでもわかるぐらいあきれられている。


「先輩が思ったよりも早く行動に移したわ。」


「それって…つまり岬さんに告白したのか?」


「いや、まだ告白自体はしていない筈よ。けど、今学校の屋上に向かっていった。多分だけど、これから告白するのではないのかしら?」


 思っていたよりも行動力が合ったのか。計画がどんどん早まってくな、おい。


「青森悪いが……」


「止めにはいればいいのよね?」


「ああ、こっちの首尾は良好だし、明日には多分噂になると思う。それと、今から学校に戻る、丁度今学校の近くだからな、五分間くらいでつける。」


「分かったわ。私は、私なりにやれることをやってみるわね。」


 そう言い青森は電話を切った。俺もそれと同時に学校に走り、向かった。


 ……………………………………………………


「全く、萩本君も酷いわよね。私に告白の邪魔を知ろなんて。」


 そう呟きながら、岬と佐藤先輩の後を追うように階段を上り、屋上に向かった。


「……やっぱり、屋上だったのね。余程、あの時のことが気になっているようね。」


 二人が屋上に出た後にドアを少し開けて様子を見る。


「……前と同じ状況ね。」


 二人は屋上に出た後、向かい合い何かを話している。


「……何ですか、佐藤先輩?」


「あ、何て言うか。大変だったね。」


「…………」


「え、その、何て言うか、ぼ、僕は君の趣味を否定とかしないよ!」


 ………どの口がいってるのかしらね?貴方があの写真を貼り出したくせに。


「それにさ、あんな写真気にすることないよ、あの二人が出したんだろうし。」


「……………」


「だ!だから、僕は君のことをあの二人みたいに否定したりしない!それに僕なら絶対に裏切らない、だから、あの日のことをもう一度考え直してほしい。そして……出来るなら今答えがほしい。」


 岬は涙を流しながら何かにすがるように先輩の方に手を伸ばしていた。それは昨日のあの時のように………。


「だめよ、岬さん。」


 その瞬間飛び出して二人の間に割り込んでいた。


「な、何で君が!」


「……青森さん。」


「あら、少し邪魔をするわね?」


「青森さん、何で来たの?どうして……」


 そう言いながら先ほど伸ばしていた手を引っ込め涙声で微かに呟きが聞こえた。


「そうだ、邪魔をするなよ!これは僕たちの問題だろ!」


「随分と必死なのね。」


 佐藤先輩の方に振り向き睨み付けながら私は呟く。


「何か、早くしなければいけない理由でもあるのかしらね?」


「そんなんある分けないだろ!」


「そう、なら、一ついいかしら?」


「な、なんだよ!」


「簡単よ?何で私たちが彼女を否定しただの、裏切っただのって昨日の話を知っているのかしら?」


 ……それはきっと見ていたからだ。それは私にだってわかる。今、彼が写真を出した犯人なんて言っても岬さんは信じてくれない。


 なら、少しでも、少しでも信頼をして貰えるように振る舞う。


「そ、それは!彼女を傷つけられそうになったら割り込もうと思ったから……。」


「嘘ね、そんな気があるなら彼女が泣いた時点で割り込もうとするはずじゃない。」


「……彼女!彼女が泣いていたから、落ち着くまでそっとしておいてあげようと思ったから」


「嘘よ、貴方は」


「うるさい!青森さんには関係ないじゃん!」


 横から佐藤先輩の前に割り込むように岬が入り込んできた。


「さっきから、何?佐藤先輩を疑うような真似して!佐藤先輩は、佐藤先輩は貴方達が見捨てたときに助けてくれた!二人が……二人が置いてったあの場所から。」


「……み、岬さん。」


 無常にそして非常、そこには佐藤先輩を守る岬とそれと対峙するように青森がたっている。

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