第4話 俺はソシャゲー、彼女はエロゲー

 あれから、青森が岬を捕まえ直ぐさま脅し今に至る。現在、駅近くのファミリー向けレストランに入り青森が永遠と岬を脅している。


 因みにゲーム機と言えば俺の横に置かれている。


「で、何であんなところにいたのかしら?」


「…………」


「あら、黙っているだけじゃ何も分からないのだけど?それとも何か言えないような事でもしていたのかしらね。」


 満面の笑みで先ほど岬が持っていた袋からエロゲーを取り出して「これはなに」とでも、言いたげにじっと見つめている。



「…………………………………死ね。」


 俺の方を見て岬は何かを呟いた。いや、正確には聞こえていたから、暴言を何故か俺の方に吐き捨ててきた。


「…何で俺なんだよ。」


「……あんたが私の名前を呼ばなきゃ青森さんにもばれなかったかも知れないのに。」


「それはないわよ。私会ったときから分かっていたから。」


「だ、そうだ。」


 岬は今だに俺の方を睨んでいる。


 て言うかこいつもしかして青森を見るのが怖いから俺の方を睨んでるんじゃね?それって思いっきり俺がとばっちりくらってるんだけど。


「で、このゲームは何かしらね。とても、大切そうに持っていけれど。」


「そ、それは………。」


 絶対に分かっていってるだろ。ホント、ぶれねぇはこいつ。頗る最低だな。


「ねぇ、萩本君?これってどんなゲームなのかしらね。岬さんが教えてくれないから代わりに貴方が教えてくれるかしら?」


 とばっちりが、凄いとばっちりが来た!何、俺に拷問をしたいわけ!?女子二人の前でエロゲーの説明すんの?何その無理ゲー。


「………分かりません。」


「そうなの、残念ね。教えてくれればさっきの写真は消してあげてもよか」


「エロゲーです!!」


「やっぱり知っていたのね。さっさと教えれば消してあげたかもしれないけれど、嘘をついていたのなら話は別よ。」


 な!!?図ったな青森!俺が恥を忍んで言ったのに!


「で、これがエロゲーと言う事はわかったけれどこれって確かに年齢設定があったわよね。」


「ああ、大体のエロゲーは十八禁だな。」


「なら、何故彼女が持っていたのかしら?」


 岬の目を見てそう言うと岬の方は一瞬たじろぐとその隙を見た青森は一気に畳み掛けた。


「それに確かにこのゲームがおいてある場所は十八歳からしか入れない場所の筈よね?それなのに岬さんはその場所に入っていた、どうしてかしら。それにこの事が学校にばれたら大変よね?」


 最後の一言は酷い。あんなん言われたら従うほか無いだろうな。


「………エロゲーが好きで時々変装して十八禁コーナーに立ち寄ってた。それに最近だとそこまで店員が厳しくないからある程度は許されるし……。」


 ポツポツと岬が白状し始めた。それにしても青森の顔はゲスイ、笑みのまま表情を一定にして手には先ほどのエロゲーを持っている。


 に、してもカオスな光景だよな。女子二人と男子一人がエロゲーの話なんかしてんだから。


「そう、まぁどんなゲームをやろうと勝手だけど……あんなに男どもに愛想振り撒いてた貴方がこんなエロゲーなんてやってるなんて知られたらさぞ見ものなんでしょうね。」


 青森は持っていたエロゲーを岬の目の前におき不適な笑みでじっと監視するように見ていた。


「エロゲーなんて。………エロゲーの事を知らないくせに勝手なこと言わないでよ!!」


 突然、岬が立ち上がり怒鳴り声を発した。


「あんた達が考えるように、確かにエロに要素もある!けど、それ以上にストーリーの方が下手に恋愛シュミレーションゲームをやるよりも面白いんだから!」


「「………………」」


 怒鳴り始めた岬を見ながら俺達は固まってしまった。


 いや、だってしょうがないじゃんか。女子がエロゲーを熱く語ってんだよ?おかしいの何のって。


「そもそも、エロゲーイコールエロ要素しかないみたいな事を思ってるやつがいるみたいだけど、それはそいつがエロ要素の部分しか見てないってことじゃん!」


「ちょ、ちょっと落ち着け」


「もっとストーリーを見ろよ!エロゲーよりも泣けるゲームとか無いからな!そもそも、さっきの青森さんが言った私の愛想振り撒いるイメージの女の子なんてエロゲーみたいなのにしか存在しないし。」


 ハァ、ハァ、と疲れたように息をしている。そんな岬を見かねた青森が問いをぶつけた。


「………貴方恥ずかしくないの?こんな公共の場で変なことを大声でベラベラと。」


「え………。」


 幸い個室で防音素材を使われているらしいが、絶対隣の部屋くらいには聞こえてるだろ、これ。


「………ごめん。」


 顔を赤面させた岬は小さく縮こまり下を向いてしまった。


「でも、私がエロゲーをやろうが勝手じゃんか。二人にとやかく言われる筋合いじゃないと思うんだけど。」


「あら、再度言うけど学校にばれたら大変じゃないの?」


「っう!」


 ま、確かに困るよな。学校はともかくクラスメイトや先輩にバレると流石に不味いよな。ライトなオタクは受け入れられるが、ベビーなオタクは受け入れられないからな。


 特にこういう人に好かれるために愛想を振り撒いてた奴はライトなオタクにさへなれないからな。


「……まぁ、待て。実際に青森はどう思ってるんだ?この事をばらすにしてもばらさないにしても。」


「私……そうね。先ほども言ったように正直岬さんが何をやろうと勝手だけど、まぁ、多少なりと抵抗はあるわね。」


「なるほどな。確かにエロゲーをやってるベビーなオタク女子には抵抗があってもおかしくないよな。」


 チラッと岬さんの方を見ると顔が青くなり少し瞳が涙で光を反射している。


「…………私ってやっぱり気持ち悪いのかな?エロゲーなんて女子がやるのっておかしいかな?私はただ………。」


「……お前それでよくエロゲーなんてやっていられたな。」


「へ?」


「お前は誰かに認められたいのか?それなら諦めろ。エロゲーやってる女子は絶対に受け入れられないからな。」


 岬の頬に涙が流れ始めた。


 す、少し言いすぎたかな?


「けどな、それってそもそも、受け入れられるとか、受け入れられないとか言う話じゃないだろ?自分の趣味嗜好だ、エロゲーやってようが、ソシャゲやってようが、どっちも差ほど変わらないゲームなんだよ。」


「いや、エロゲーとソシャゲでは変わると思うけれど。」


 はい、そこ!今突っ込むところじゃないから!萩本先生が熱弁を振るってるんだから黙っててね!


「女子がとか言うなよ。エロゲーやってる女子なんて探せば多分結構いる。だから、胸はれとは言わん。けど、お前もオタクなら自分の趣味くらい自分は受け入れてやれよ。俺みたいにな。」


「…………萩本君て変わってるね。」


「まぁな!」


「多分誉めてないわよ、今の。」


 ふふ、と岬が涙をふきながら笑った。それを見て俺は少し安堵してしまった。


「でも、私はそれじゃあ認めないわよ?」


「お前………。」


「そうね、黙ってて欲しければ私にオススメのゲームを教えなさい。ただしエロゲー以外でね。」


「え!そんなことでいいならいくらでも!それに青森さんもゲームなんてやるんだ!」


「ええ、今日から始めようと思ってね。」


 青森は目線を俺の隣にある家庭用ゲーム機にやった。


「あ、だからそんなところにゲーム機があったのか!うん、うん!じゃあ今度一緒にゲーム選びに行こうね。」


「ええ、その時はお願いね。もちろん、荷物持ちはキッチリ連れてくるから。」


「荷物持ち?」


 そこで二人の目線が俺の方に流れてきた。


 いや、待て!何で岬さんも俺の方に流れてきたわけ!?青森だけだったらともかく。


「この男が来るけど良いわよね?」


「う、うん!………私も少し萩本君と話してみたいし。」


「じゃあ、今週の土曜日か日曜日どちらかあいているかしら?」


「あ、日曜日なら!」


「俺は土日は無理だ。用があるから。」


 また、二人揃ってこちらを向いてきた。


 仲いいね、お前ら。実は知り合いなんじゃね?


「……嘘はよろしくないわよ?」


「萩本君に用事なんてあるの?」


「おい、ちょっと待て!どうしてそう言う結論に至ったか聞こうじゃないか!」


 二人は顔を見合わせると笑顔で答えてくれた。それはもう満面の笑みで……。


「「だって萩本君ていつも一人だから」」


「なるほどな。よ~く分かったわ。岬さん、来週が楽しみだな。」


「え、ど、どういう意味?」


「はは、皆がブツブツと言ってるからわかるよ。エロゲーやってる岬さんの事を。」


「ちょ、それはもう終わった話じゃ!?」


「俺は終わらせた覚えはない!」


「ご、ごめんて!な、何か奢るから、そ、そうだ!家にある、泣けるエロゲー貸すから!」


 女子にエロゲー借りるとか、多分普通の高校生は経験しないと思うんだけど……。


「や、俺、ソシャゲ派だから。PCゲーやらないから。あと、エロゲーはいらん。」


「いや、面白いよ!泣けるし!笑えるし、エロゲー要素抜いても神ゲーだからね!まぁ、時々外れもあるけど。」


 そう言って、一時間くらいずっと青森の罵倒と岬のエロゲートークを聞いていた。時間はいつの間にか十八時を過ぎていた。


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