第2話 屋上は決まってイベントが起きる
あれから遡ること数時間、やっと今日の授業も終わり帰りのホームルームが始まった。
しかし、俺にはまだやることがある。それは……宇治姉から逃げおおせることである。
流石に朝のあれを聞かれたのはヤバい!宇治姉の事だ、課題だけで終わるわけがない。
まず最初に制裁鉄拳をくらい、課題を与えられ、帰宅したら宇治姉から奴隷のように身の回りの世話をさせられる。
「もう、一連の流れがわかっちゃってるとか俺マジ宇治姉の奴隷のようだな。」
さて、それじゃあやることは決まったな。
「お前ら~それじゃあとっとと帰れるか、部活に行けよな。後、寄り道してもいいけど迷惑だけはかけるなよな。主に私に。」
宇治姉が言い終わると同時に学級委員が帰りの挨拶を済ませる。
ここだな。もう、逃げるならここしかない。
号令がかかった瞬間に俺は鞄を持ち、少しずつドアに近づく。幸いなことに俺は一番後ろの廊下側の席なのである程度ドアに近づいても誰にも気づかれない。
「起立、礼!」
周りが頭を下げた瞬間俺は勢いよくドアを開け廊下を全力疾走する。
多少目立つが仕方ない。今は宇治姉から逃げるのが優先だ!
廊下を全力疾走する事数秒、後ろから殺気を感じて少し振り向く。そこには案の定宇治姉が走って追いかけてきていた。
教師が廊下を走っていいのかよ!?俺が言えた義理じゃないけど。
かどをまがり、階段までついた俺はあえて下の玄関には向かわずに上へと走った。その後にすぐ宇治姉が下に向かい走っていった。
「ふぅ、あぶね。宇治姉のことだから玄関についた後下駄箱まで確認するんだろうな。」
そう思いながら俺は屋上に続くドアの前まで来ていた。普通なら屋上は鍵がかかっており一般の生徒は全くといっていいほどに来る機会などない。
「俺も宇治姉に鍵の開け方を教えてもらわなきゃ絶対に屋上なんて無縁だっただろうな。」
そういう意味では宇治姉に感謝している。ただ、屋上を使っていていつも思うのだが、生徒に教えていいのだろうか?
「ま、宇治姉が教えたのが悪いよな。少し屋上の風にでも辺りながら休むか。」
と、思いドアノブに触れるとある違和感を感じた。
「あら、開いてるわね?」
「ああ、確か……に?」
突然後ろから声が聞こえ、バッと後ろを振り返るとそこには青森がいた。
「屋上て開かないのではなかったかしら?」
「いや、その前に何でお前がここにいる。」
「それは貴方が此方にいるような気がしたからかしらね?」
何、俺ってオーラでも放ってんの?それとも何、お前がエスパーなの?エスパー青森なの?
「そんな事はどうでもいいとして、何故開いてるのかしら?」
青森は俺の横を通りドアを少しだけ開けた。
「……おい、どうした?何かいたのか?」
「ええ、ホラあそこ。」
そう言い青森が退くと指を指し、ある一点をさした。そちらの方を向くと確かに人がいた。男女がそこにおり、男の方は向こうを向いているのでわからないが、女子の方は髪の色が茶髪で、まぁ美女と言って差し支えない位には可愛い。
「確かあれは……三年の佐藤先輩と一年の岬さんかしら?」
いつの間にか青森がしゃがみ俺の下に入り込んでドアの隙間から二人を見ていた。
近い、近い、近い。しかも、女の人独特の甘い香りが!!!しかも、こいつ無意識にやってるな!そう言う無意識な行動が世の男どもを勘違いさせるんだぞ!
「これって告白かしら?」
「……ど、どうなんだろうな?」
「何を挙動不審になってるのかしら?もしかして告白のシーンを今から見るからかしら?」
「俺はそんなウブじゃねぇよ。何回もアニメとゲームで体験してるしな!」
「誇れることじゃないのだけど。」
青森は呆れるようにため息をついた。
「お前はどうなんだよ?」
「私?そうね。数えられないほどに相手から告白されたわ。しょうがないもの、私美人だから。」
「こいつ、じ、自分で言いやがった。」
「でも、事実でしょ?」
ぐっ、否定できないから腹が立つ。
「……あ、あの先輩フラれたわね。」
視線を元の二人に戻すと先輩の方が何かを必死に言っているが、女子の方がしきりに首を横に降っている。
「はは、ざまぁ!リヤ充どもは皆フラれて、消え去れ。」
「……貴方、まごう事なきグズね。」
若干引き気味に青森が呟く。
青森さん、聞こえてますかね、マジで!
「あ、先輩が此方に来るわね。」
そう言うと青森は俺の手を引き、近くにあった掃除ロッカーの影に隠れた。
「……何で掃除ロッカーなんて物が?」
「うるさい黙ってて。」
すぐに扉が開き先輩が出てきた。通り過ぎるさいに俺は一瞬先輩の顔が見えた。
イケメンだと!けど、何か凄い形相だったな。
先輩通りすぎた後少し待ち、岬が出てこないので青森が再度ドアに近づき開けようとした。
「おい、待て!まだ開けない方が!」
止める間もなく青森はドアノブを手をかけた。その瞬間、ドアが開き岬が現れた。
「あ、あれ、青森さん?」
心底驚いたように青森を見る岬はふと、此方にも目線をやった。
「と、宇治村先生のお気に入りの人だよね?」
「お気に入り?」
「他のクラスで話題になってるよ。あの宇治村先生に気に入られるなんて気の毒だって。」
同情されて話題になるのかよ。何それ、同情するなら、友達くれよ。
「で、二人とも何でこんなところに?」
「あら、貴方こそ何でこんなところにいるのかしら?」
こいつ、よくぬけぬけと嘘をつけるよな。お前の方がまごう事なきグズじゃねぇか!
「え、えっとね。さっき佐藤先輩にこ、告白されちゃって……。」
アハッと笑みを浮かべ少し寂しそうに笑った。
「あら、そうだったの?それじゃあお邪魔してしまったかしら?」
「いや、もう大丈夫だよ!ま、少し先輩には酷いことしちゃったかもしれないけど。」
「……はぁ、止めて貰えるかしら。」
驚いたように青森を見て、一瞬、ホンの一瞬だが、顔を強張らせた。
「え、ど、どういう意味?」
「その、思ってもいないことを口に出す事をよ。」
「い、いってる意味が分からないんだけど?」
「あら?本当は分かっているのでしょ?その、男を道具としか思ってない、悪魔のような本性の事を?」
お前がそれを言うのか?お前こそ悪魔のように………いや、悪魔だろ。
「ちょ、いってる意味分からないんですけど!いきなり何?私がまるで男遊びしてるみたいな言い方は!?」
「あら、間違ってるかしら?」
「!!!さ、最低!」
そう言い岬は走り去っていった。
「お前……最低だな。」
「何?貴方も彼女に騙されているの?」
「は?そもそも俺はあいつの事を知らないんだけど?」
「それはそれで問題よ。あの子は結構学校で有名だと思うけど。」
「知らんことは知らん!」
そう言いきり俺は岬が走り去った後の階段を見た。
「……ま、ビッチと言うのはなんとなくわかるけどな。」
髪染めてるし、メイクしてる、さっき持ってた鞄が妙にキーホルダーがついてたし。
「ま、彼女のことを考えるのは止めましょうか。それよりも、もう良いのじゃないのかしら?」
「何がだ?」
「宇治村先生も諦めた頃だと思うけど。」
ああ、そう言うことか。確かに結構時間たったしな。
「じゃ、俺帰るわ。」
階段を下りようと思い踏み出そうとした時後ろにいた青森にいきなり捕まれ階段を落ちそうになった。
「あ、ぶな!何しやがる!」
「ごめんなさい。ちょっといいかしら?」
青森が赤面して何かを言いかけては、口を閉じはっきりとしない。
「何だよ、さっさと言いやがれ。」
「……そう、付き合ってほしいのだけど。」
「は?」
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