Just The Two of Us その3



ここは俺の為に作られた場所だ。



正確に言えば俺のような男の為のもの。




かつて、この星には今の状況と同じような少年が1人と女の子が複数人。



星はその度に姿を変え、ある時は木造と石造りの建造物がいくつも並び立ち、さながらに中世ヨーロッパのような街の様相だったことも。



あるいは近代的な学校を中心とした小規模の都市であったことも。




彼らは俺たちと同じようなハプニングやトラブルに巻き込まれてはそれを乗り越え、互いの絆をより強固にし、互いを想い愛し合っていた。




それが何グループと、ここで夢のようなハーレムを築く。しかし




ある時期を迎えると、男は大いなる意志によって選択を迫られる。




地球へ戻るか、それともこのまま意志と一体化して次のグループへと高い次元での「シンパシー」を得るか。




そうやって大いなる意志は男を取り込んで新たなエネルギーを得て、その存在を長く存続させていく。



街は消え、女たちは自覚する間も無く消え、骨だけが残って風化していく



一体化した者は個体としての概念を失い、原初的な欲求をシンパシーによって満たすことでこの宇宙を長く維持してきた。




そのため、この星は男の望む通りに姿形を変え、生態系さえ生み出してしまう。



だからきっと座標も燃料も近いうちに確保できるだろう。



しかしそこから俺の中の欲求はピークから落ちていくだろう、それが「ある時期」だ。



その瞬間、必ず大いなる意思は現れて選択を迫る。




「だから、君のその気持ちは本物じゃないんだ。そうなるように誰かが仕向けたものなんだ」



「きっとすぐに船の燃料も座標も手に入る、そう望めば直ぐにでも」




互いに目を合わせることなくずっと下を向いていると、照美から船内放送が流れる。



『二人とも!座標が分かったわ。早く来て!』



その声は故郷へ帰れることへの喜びに満ち満ちており、その後ろでは響もとても喜んでいるようだった。




「今ならわかる、俺も君も現実から目を背けてるだけだ」



「依由ちゃん、もう目を覚ます時が来たんだよ。ここでのことは忘れるんだ」



「俺はここでの役を演じてたに過ぎない、君に優しくしたのも、あの夜のことも全部俺の意思じゃないんだ」




あまりに軽薄に、まるで言い訳をするように、あたかも突き放すように、ひたすら頭の中で得体の知れない感情が渦を巻く中、彼女はまっすぐこちらに向かって歩き始める。



微動だにせず下を向いていると、そのまま通り過ぎて部屋を出いく。



コツコツと遠ざかる足音だけが反響していた。




これでいい、みんな....本来あるべき方向に...いるべき場所に帰すんだ

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