Just The Two of Us その2
プラントにも広場にもおらず、依由ちゃんの部屋を訪ねてみたがそこにもいない。
ふらふらとまるで時間を稼ぐようにうろつきながら彼女を探していると、ふとあの寄生したまま動きのないラフレシアの様子を確認しようと動力部へと足が向く。
大きく巨大な花が見えると、その真下には依由ちゃんがいた。
その手元には発炎筒が力なく握られ、立ち尽くしている。
「依由ちゃん!」
思わず呼びかけると、彼女はグッと強張って発炎筒を胸の前で抱えると、避けるようにして身体を反らした
『違うんです、本当にやろうなんて....』
「うん、分かってる。依由ちゃんは優しいから」
内心は焦りながらも、それでも決して彼女はどこか愛おしくも感じていた。
『今までだって順調に、どんどん事態は好転して、このままだと座標だって燃料だってなんとかなりそうで...』
『私は、帰りたくありません。このまま守さんとここで』
言いかけて止まると、自分にかけていた錠前を外すように続ける。
『もし私だけでじゃ満足できないならみんな、照美さんも響さんもお姉さまも』
『あの人たちにとっても、きっと地球よりここが気に入るはずです』
依由ちゃんは切実に、たまらず声を荒げる。
『ここにあなたといられるなら!返事なんていらない!』
その叫びはとてもじゃないが他人事には聞こえなかった。
彼女は鏡だった。
口にしたくても男の小さなプライドが邪魔をしてどうしたって言えない、それを恥も外聞も捨てて叫んでくれた。
俺が言わせたんだ。
二人はその場で動けず長い沈黙の後、ふっと身体の力が抜けて、頭を空にして俺はついに決意を固めた。
「依由ちゃん、俺はね...この星のことを知ってるんだ」
依由ちゃんは酷く恐れるように一歩後ずさりして言う。
『守さん...?何を言ってるんですか...?』
きっと今のままではいられないだろうと知っていながら、知っていることをそのまま話始めた。姉さんから伝えられたカラクリを。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます