Just The Two of Us その1
「依由ちゃん、俺はね...この星のことを知ってるんだ」
そう、姉さんとこの星で再開したあの日、俺はこの星の秘密を知ったんだ。
依由ちゃんは知らない、何か恐ろしいものを見るような目で俺を見ていた。
でも、それでも言わなければいけないはずだ。それが綻びをもたらすとしても。
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脱出艇の修理には一週間を要するという。
とはいえそれを終えたところで、地球に戻るためのワープ航行にはまず衛星を飛ばしこの星の座標を確認する必要があるのだとか。
しかし、それには莫大なエネルギーが必要とされ、そのエネルギーを捻出するだけの余裕はない。
つまりは手詰まりであり、為す術なくだらだらと脱出艇の修理に取り組みながら、帰った時の地球がどうなっているのか、それを話していた。
『だーかーら、既にもう私たちの知ってる星じゃないかもって話よ』
『それがどう猿が支配する地球って話に繋がるのよ!』
いつものように響は照美をからかって楽しんでいる。
少し離れたところで姉さんは水着で、いつの間にかキルケ―に作らせたビーチチェアに寝そべり機嫌よさげだ。
そしてプラントの確認に行くと、船の修理早々に部屋から出ていった依由ちゃんはまだ帰ってこない。
『じゃあ....タイムスリップしてきた学校とか、未来人』
響はまるで連想ゲームのように延々と考えなくてもいい未来の地球のことを妄想し続けている。
『支離滅裂じゃないの...』
『だっていつ帰るかわかんないんだよ?もしかしたら私たちお婆ちゃんになってるかも!』
『いやよ!なんとしてでも地球に帰ってみせるわ』
『でもさ~もしかしたらライバル、増えちゃうかもよ?』
響はそう言うと照美を連れて行くように俺の方に目を向けた。
『こんな状況でもなきゃ増えるわけないでしょ!』
『へ~自覚あり、っと』
照美は首を絞めるようなジェスチャーで響を追いかけまわしている。
苦笑いで二人の話を聞いていると姉さんが手招きしている。
「どうしたの」
『違う、どうするの』
『選べるのは一つだけよ』
一瞬その意味を捉えられずにいたが、少し考えてその幾つかを捉えた。
地球へ帰るのか、依由ちゃんへどう応えるのか。それともこのまま...
その頭を巡る全てを見透かすような姉さんの眼に、思わずその場を離れた。
「ちょっと依由ちゃん探してくる」
情けなく早足で出ていく俺を見つめて姉さんは悲しげに呟いた。
『時間がないわ守....』
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