The Girl Is Mine その4

〈船外に変化を確認。森が出現しました〉


壁に外の様子が映し出されると、2kmほど先に緑生い茂る小規模な森がポツンと出来ていた。



『今日はなんなの?』


もう沢山、と照美。


〈いくつかの生体反応を確認。人ではありません〉


まるで幻視したオアシスほどの唐突にみな口もきけずにいると、姉さんだけが体を小躍りさせている。


『よしあそこへピクニックに行こう!キルケー、お弁当用意して』


〈了解しました、30分ほどお待ちください〉




『ちょっと待って!まずは偵察機を送って各種データを測定して』


『大丈夫よ照美ちゃん、なんかあっても私が守るから』


姉さんは照美に体を密着させ、それを避けようと身体を逸らそうとする照美の腰を抱きとめて囁く。


『ね?』


サルサダンスでも始めるような体制で顔を近づけゆっくりと口に振れた。


『んーーー!!』



照美は髪の毛を逆立て、転がるように後ろに飛び退くと口元を腕で隠して叫ぶ。



『ちょっと守!なんなのこいつ!!!』


姉さんを見ないように俺の首根っこを掴み、凄まじい勢いで捲し立てると、次第にグルングルンと眼が廻り鼻血を流し倒れた。





「姉さん、これ...」


落ちる寸前に後頭部を支えながら姉さんへ幾つかの質問をすべて視線にまとめて訴える。


『なーんも、ウブなだけじゃない?可愛い!』


ただただ黙らせるためだけに彼女の唇を奪ったことに何一つ感じる様子はなく、いたずらな顔で照美の頬をつついていた。




響は照美を抱きかかえ部屋へと連れていき、俺と姉さん、そして付いていくと言って聞かない依由ちゃんは装備を整えてエアロックの中にいた。


マイクのスイッチを切り、振動通信に切り替えて姉さんの体に触れる。


『あの森も姉さんが?』


そう言うと確かに何かを知っているようなすました顔で首を振りはしたが、こちらもまたおおよその予測はついていた。


『守さん...どうしたんですか?』


「ん?大丈夫、なんでもないよ」






ホバーバイクには俺と依由ちゃんが、そして新たに取り付けられたサイドカーには姉さんがフロントガラスに足を乗せている。


1年前、まさか砂の大地でバイクを駆り、なおかつその背には女の子とそばには姉がいる。


本当に...夢のような....


『守さん、あれって....』


森へ近づくにつれ、見えてくる木々の一つ一つが既視感あるものだと気付いた依由ちゃんは指を指して言った。





樹皮は無機的な見た目ではあるが触れれば有機的な質感を持ったヤシの木に似た葉を持ち、実をつけている。


まるで、船にあったポッドツリーのような見た目に我が目を疑いながらバイクを降りて足を踏み入れた。

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