The Girl Is Mine その2

長く天へ腕を伸ばすと指を鳴らし呼ぶ。


『キルケー!』


〈はい、まどか様〉


『ここランウェイにしちゃって』



〈かしこまりました〉



家主のごとく指示を下すと、床が次々とせり上がり部屋の中心には一本の通りを組み上げ、ランウェイへと仕立て上げた。



滅茶苦茶だ....


気付けば3人は俺と姉さんの元へと避難しており、皆がハッとして再び距離を取った。



「オレ何かやっちゃいました?」


彼女らの反応を見る暇もなく瞬時に平手打ちが3つ、依由ちゃんからさえも飛んできた。


『信じらんない』

『守さん....』

『なんで許しちゃったかな...』


どういうことか3人はそれぞれ呆れ果て、激しく後悔しているようだった。


『それじゃあ行こうか』


「俺は....?」


横座りで頬を抑え聞く。


『ここで正座して反省しなさい甲斐性なし!』


全てを俺に負わせ、姉さん達は広間を出ていってしまう。


一人寂しく取り残され、正座の意味をいくら問い直しても昨夜のことを思い出せずにいるとキルケーが話しかけてきた。



〈盗み見は趣味ではありませんが、昨夜の異様な状態であったため記録していたことを許してください〉


壁には大きな目がウィンクする映像がループしており、次の瞬間パッ切り替わり部屋のカメラの記録映像が映し出された。




口をあんぐりと開け言葉は何一つ出てこなかった。


〈動悸や瞳孔、様々な点で正常ではなく一種の興奮剤の効果が見られます。分かりやすく言えばラブポーションとでも媚薬とでも〉



「そういうことか....」


額に手を当て3人のあの態度を理解すると、キルケーは壁の映像を再び切り替え疑問符が並べた。


〈どうしたのですか?〉




「いや、もういい。今のは消しといてくれ。みんなもこんなものが残ってるのは嫌だろう」


〈随分と冷静なのですね〉


「きっと姉さんが仕込んだんだろ」


〈察しが早いのですね。しかし彼女が食事に何かをした素振りは一切ありませんでした〉


「大丈夫、姉さんなら考えがあるんだろう。みんなは?」




〈既に打ち合わせも終了しこちらへ向かっています。それよりも...〉


珍しく言葉に詰まらせる。


〈守、星野まどかと名乗る人物には気を付けてください。呼吸パターンから表情筋の動きに至るまでどのデータにも当てはまりませんが何かを隠していることは確かで、これはあまりに異常の事例です。骨の件もあります。警戒してください、自身のためにも家族のためにも〉



「家族?」


〈 同じ家に住み生活を共にする、ここにいる4人は家族として定義づけられます〉


「....名前、初めて呼んだな」



〈....私から喋りかけることは滅多にありませんから〉



「ありがとうな心配してくれて。でも大丈夫だよ、姉さんは...」


〈私には絶対的な守秘プロトコルが定められています〉


何を言いたいんだ?と顔に出すと瞬時にそれを読み取り言った。


〈守が抱えているもの、私もお持ちすることができます〉



「嬉しいよ、お前がそんなこと言うなんて」


〈私は今まで身を粉にして皆様のために従事してまいりましたが?〉


「....そうだな、家族が6人なら守る心構えも必要だ」



〈6人?星野まどかを含んだとしても5人ですが、ついに単純な数え方まで〉


「俺、照美、依由ちゃん、響、姉さん、キルケー。ほら6人だろ?」



〈綺麗に済ませようとお思いでしょうが、先ほどの映像から鼻血出ていますのでそれでは〉


キルケーは逃げるようにして話すのをやめると、部屋の明かりが消えランウェイの床は光り天井からは演出照明が現れ、いつものかっちりとしたレトロフューチャーデザインの広間は、この星初のアガる箱へと変化してしまった。


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