第10話 The Girl Is Mine
The Girl Is Mine その1
朝、どうしてか身体がベタつき風呂に入り着替えると自室には何か異質な匂いが立ち込めていた。換気をし部屋を出て朝食を食べに広間へ向かう。
いつもならば部屋の中心にある円卓を囲むように座っているが、今日は違った。
既に3人が座り誰とも目を合せぬよう、それぞれが離れた場所で食パンをかじり、解禁された目玉焼きをフォークでついていた。
みんな目を泳がせながら俺をチラチラと見ては目を離す。
「おはよう」
いつもなら朝の挨拶なんてしないが、試しに反応を見ると誰も反応しない。
もしかして何かやらかしてしまったのか。
そういえば昨日の夜、夕食を取ってからの記憶がない。朝は怪獣が出て姉さんが現れ、昼間は''あんな''ことがあったのに。
まぁあれだけ色んなことが立て続けに起きれば脳も許容範囲外なのだろう。
どこか居心地が悪く、俺もまた離れた場所に座りオーダーする。
「俺もパンを頼む。バターとはちみつたっぷりで!」
〈もう少し男の矜持というものを持たれてはいかがでしょう〉
「なに言ってんだよ、そりゃはちみつは子供っぽいかもしれないけどさぁ...」
〈あれだけのことがあって尚その態度とは、 ヴァルサルヴァ効果の典型例に記録しておきましょう〉
テーブルの下から、溶けるバターをはちみつで包み込んだ食パンがせり上がり口いっぱいに頬張った。
「さっきから....何が言いたいんだよ」
〈鈍感〉
キルケーはらしくもない一言を添えると、姉さんが白いワンピース姿で広間へ入ってきた。
「それって....」
『そう、誕生日に守が選んでくれた服』
着ているそれは、死ぬ数ヵ月前に店のどれが似合うかと言われ、選び、買ったまま着ることのなかった服だった
「綺麗だよ...本当に」
またも溢れそうになる涙を堪え言うと、周りの3人がこちらをジロッっと一瞥をくれ、それぞれ目玉焼きの黄身を潰している。
『ここってどんな服でも作れちゃうんだもん、女には夢の機能ね』
部屋を見渡すと散り散りに座っている4人を見て、声をひそめ笑みを浮かべて耳打ちする。
『昨日はどうだった?』
「どうって....晩飯を食べた後は疲れて覚えてないんだよ」
『うーん入れすぎたかな?』
「入れすぎた!?どういうことだよ」
『.....』
姉さんは黒目をビクともせず数秒黙ると、すくと立ち上がり手を叩き注目を集めた。その顔には焦りの二文字が書かれている。
『はいはいはい。と、言うわけでファッションショーを開催します!』
「今!?」
『今』
「ここで?」
『ここで』
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