Canned Heat その2
ワニ再び口を開け岩石を吐き飛ばし、デブリシューターで相殺しこれを何度か繰り返すと、埒が明かないと言わんばかりに縦に伸びた口を閉じ、のっそのっそと船めがけて進行を始めた。
「響!もっと強いのをあのワニに撃てないのか⁉」
『えへへ、今ので溜めてたエネルギー使い切っちゃった』
〈現在の判断材料を元に計算しました。あの質量を消失させるだけの威力には1時間のエネルギーチャージを要します、それもほとんどの機能を停止した場合の条件付きですが〉
〈しかし対象がこのままの速度で進行する場合、30分後にはここに到着し必要威力に満たないままとなります〉
「なら急いでやってくれ、俺はあいつの気を逸らしてみる」
『どうするつもりですか守さん』
「ツーリング」
心配し愛らしい目で『行かないで』と訴えかける依由ちゃんに冗談めかして外へ出ようとすると照美は俺の肩を掴んだ。
『私もいくわ』
『よーく聞いて、大きく見積もって5分、それだけ仮称ワニを足止め出来ればゲームクリア。もしダメだったら私たちはゲームオーバー。分かりやすいでしょ』
響から他人事のような説明をよこし照美を乗せ、かつてないほど気合が籠った手でアクセルを回す。
地平線を最高速で駆け抜け、ワニとのすれ違い様にターンを切り並走する形となる。
『まずはあの口を潰せないか試すわ』
彼女は胸の下に着けたバッグの中から粘着式の爆弾を、即席のスリングショットで撃ち出し左顔に付着すると、すかさず起爆スイッチを押し込む。
爆煙は顔を包み込むがパラパラと表面の岩が欠けただけに留まり、意にも解さず進行速度は変わらぬまま、まっすぐ進んでいく。
「ダメか、次は足を!」
『言われなくても!』
大きくワニの股下から左へ急なカーブの最中でも、右足2本へ当て爆破するがこれも変わらず。
再び奴の反対側へと回り込もうとすると、今頃こちらの存在に気付いたのか長い口を振り回し始めた。
「しっかり掴まって!」
照美の腕ががっしりと腰に回るのを確認し、車体をバンクさせ間一髪で避け腹の下を潜り、
瞬時に左足へ攻撃を加えるが変化はなく、今度は長い尻尾で後脚の周りを弧を描いて凪払い、急ぐようにして船へ進んでいく。
『雀の涙ね、ブランCに変更!』
「プランC?初耳だぞ!」
『アドリブよ!足を潰せないなら、足元を崩すわ!』
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