第8話 Canned Heat

Canned Heat その1

それは突然だった。予兆に思い当たる間も無く。




激しい轟音と揺れの後、船内のアラートがけたたましく音を上げ、情けない声を出し目覚めると緊急時の集合場所へ駆けて行った。



「みんな大丈夫か!」


『響、レーダーに反応は?』


『引っかかってない!いきなり現れたっぽいよ』


〈北北西、5km先ポイント54に落下〉


『モニター出ます!』


〈未確認の物体、同座標に続々と落下します〉



壁に外の光景が映し出されると砂煙を上げ次々と何かが降っていく。



降り注ぎ地表に散らばった岩石は一箇所に引き合うように転がり、何か形作ろうとしていた。



『なんなのアレ……』



照美は恐怖よりも先にモニターに映るものが信じられないようで、他の2人も同様だった。


みな固唾を飲み煙が収まるのを待っていたが、それよりも早く"それ"は中から姿を現す。


集まった岩々は、長い口に短い足、胴体と同じほどの尻尾、合わせて100mほどの長さの巨体になりこちらへ向かって歩き始めた。



事態を冷静にとらえる間もなく響は船の異常を知らせる。


『動力部と一体化したラフレシアが発光!』


〈それに加え解読不能の信号を発信中〉


ラフレシアはボウボウと光り、まるであの岩の化け物に呼応するかのようだった。



『なんでこっちに向かってくるのよ!』



まさか...これが呼び寄せたのか……?



奴は大きく口を開け、自身の体と同じ岩の塊を船目掛けて吐き飛ばした。



「い"っ!?」



『こんなこともあろうかと!キルケー!』


〈デブリシューター起動〉


響の掛け声の下、別のモニターに映し出された船の上部からは砲身が迫り上がり、先端からは淡い青の光が溢れ飛んでくる岩石に向かってザー、と音を立て照射されるとそれを粉砕した。



その一連の流れからくる童心のくすぐりに言葉も出ずにいると、わなわなと振るえパニックになった照美が言う。



『なんなのこれ、なんであんなものが出てるの!』


照美は堪えきれず困惑した様子で声を荒げている。


『だって....こういうのかっこよくない?威力も出るようにしたし』


『あんな危険なもの、暴発したらどうするつもりよ!』


「まぁまぁ、ちゃんと役に立ったわけだし...?落ち着いて...」


『られるわけないでしょ!なによあの特撮じみた化け物!依由ちゃんもそう思うよね⁉』


『ここに来てこんなことばっかりですし...』




まともなのは私だけ、と照美はうなり声をあげ頭を抱えていると依由ちゃんが律する。


『また来ます!』

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