第6話 Accidentally In Love
Accidentally In Love その1
キルケーのメインコアを土産に船へと戻る最中、来た時の道とは明らかに違っていた。
方向はあっている、タイヤの跡も所々残っている。
しかしその跡は滲み歪んでいた。
「どうなってるんだ...」
進んでいくと次々と砂の大地に水気が増し、至る所にオアシスかのような水たまりが現れた。
『不思議な星だね~』
同じ景色を見ているはずがいたって落ち着いた様子で響は言う。
空はいつものように紺色の空に星雲模様が広がっており、コアを取りにいった数時間の間に雨が降ったわけでもない。
船へ帰ると、すぐさま照美、依由ちゃんの元へと外の状況を知らせに行く。
既に船のほとんどの区画が密閉されスーツなしで行動できるようになっていた。
飛び入りざま声をかけようと照美の元へ駆け寄り、口を開くとすかさず手で塞がれる。
『言わなくてもわかってるわよ、今調べてる最中』
『おかえりなさい守さん、響さん。コアは無事でしたか?』
依由ちゃんは駆け寄り手を握ってくれる。あぁ彼女は癒しだ...
響は背に隠していたコアをここぞとばかりに掲げ口上を垂れる。
『静まれい!静まれい!この玉が目に入らぬか~』
『こちらにおわす御方をどなたと心得る!畏れ多くも独鈷杵級スーぺリアのメインパイロット、キルケーのメインコアにあらせられるぞ!』
「一同!コアの御前である頭が高い、ひかえおろう!」
つい響に乗ってしまい静まると照美は呆れ、依由ちゃんはその場で正座し小さく拍手をしていた。
『終わった?早くそれを繋いで欲しいんだけど』
照美は冷たく嗜め言う。
『はいはい、てるみんは冷たいなぁ。それに比べて依由ちゃんは可愛い子!んじゃこれ取り付けてきますかねっと』
依由ちゃんに頬ずりするとそのままコアを片手に部屋を出て行ってしまう。
〈解析不能 水源は存在していません〉
「でもそこら中に水たまりがあるじゃないか」
〈あなたがコア奪取の時ほどお役に立てず申し訳ありません〉
「見てたのかよ!」
〈ヘルメットのカメラを通して。響の体に触りそして泣かせたところもしっかりと〉
照美からの侮蔑を、依由ちゃんからは失望の目を向けられているような気がし焦り弁明した
「違う!泣いた後で触ったのであって....いや触る気は無かったけど....いやそうでもなくて!」
〈見苦しい言い訳は返って逆効果となる場合があります〉
『大丈夫ですよ、わざとじゃないのは私たちも見てましたから』
見てた...?
「依由ちゃんも、てるみ...」
名前を呼ぶと照美は叱るような口調と鋭い眼光で『葉山!』と訂正した。
「葉山、さんも....?」
『キルケーと同じ、あんたが足手まといで響のお尻ばっか見てたのもしっかり見てたわ』
見られていた...泣いた響を抱きしめたり、つい尻に目が行っていたことも。
恥ずかしさのあまり顔を覆っている間に、響から手伝いとして依由ちゃんが呼ばれ俺と葉山の二人きりになってしまった。
とても気まずく、なにか話のとっかかりを探していると彼女は部屋を出て行きざまに言う。
『こっちにきて、手伝ってくれる?』
良い印象を一切持たれていないように思っていた照美から手伝いを求められ、御安い充足感に彼女の後を追う。
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