Uranium Fever その6
ありもしない主機関と伝導管を繋げるという’’口約束‘’をしてブリッジを出たその瞬間、
響は無言で走り出し思わず後を追いかけると、背後のブリッジ内でバリバリと激しい電撃が。
『守!こっち!』
彼女は先ほどまでのゴテゴテとしたスーツからぴっちりとした軽装用のスーツに姿を変わっており、
丹田にあるスーツの一部に手を伸ばし操作すると、身体の至る所にあるパーツが剥がれ落ち軽装用スーツに切り替わった。
〈なにをしたのですか?なにも見えません、どこへ行くのですか?〉
追い立てるようまキルケーの声、スーツの変身に驚く間もなく、響は四つん這いでなんとか通れる程度の通気口へと入り込んでおり慌ててあとへ続く。
すると目の前には1mmほどの生地に覆われ、引き締まった大臀筋が目と鼻の先にあった。
『動きは止めたから復旧に10分はかかるはず』
「……あ、あぁその間にコアを取りに行くってことだな」
『もし次ガン見したらはたくからね』
釘を刺されはしたもののついつい見ては狭いダクトを進んでいく。
「コアのある部屋のルートは分かってるのか?」
『もちろん、ちょっと寄り道するけどね』
その言葉通りある部屋へ立ち寄ると、そこは倉庫部屋のようで壁一面がいくつもの引き出しになっており、響はそこから何かを中から取りだし工具箱の中へ仕舞う。
〈コアに向かっているのですか?〉
キルケー声が船全体に流れている。
〈適切なプロセスと承認を経てのみコアの取り外しは可能となります〉
〈現在...A-13付近ですね〉
〈そこで何をしているのですか?〉
〈船長権限のないAクラス庫へのアクセスは禁止されています〉
〈今すぐブリッジへ出頭してください〉
「おい、場所バレてるんじゃないのか?」
なにかされるんじゃないかと響へ問いかけるが落ち着いた様子で答える。
『でも何もできないよ、この分ならまだ復旧には時間はあるしね』
「だからってこんなことやってる暇ないだろ!はやくここから出ないと...」
『まぁまぁ、後で感謝することになると思うよ?』
はぐらかすようにして再び通気口に戻り、這って進む。
「なぁ...あのキルケーを何とかできないのか?」
『何とかって?』
「船がほんとはどうなってるか教えてやるとか、敵意はないって分からせるようなさ」
『あの子は今もまだ宇宙を飛んでると思い込んでる』
『船は既に墜落して半分は折れてなくなってる。もしそれを口頭にせよ機械的にせよ教え込んじゃうと、パラドックスに陥って何兆もの終わることのない計算の果てにコアごと崩壊しちゃう』
またしても出来ることはなく歯がゆさを滲ませると、響は言う。
『本来ならキルケーは一人しかいない、でも今は二人に分裂して性格も違う。
こんなこと普通ならあり得ないし、どうしてそうなったかなんてわからない』
『でも動くこともできず幻肢で徐々に弱って狂うのを待つより、今終わらせて上げたほうがよっぽど人道的なんじゃない?』
「そりゃそうなんだけどな....なんだか可哀想な気がしてさ」
『もうジョニーは戦場に行っちゃったってこと』
煮え切らず迷っている俺を諭すよう言う。
『自分の手の届かないとこまで考えるのよくないよ、守』
『そこがいいところでもあるんだけどね...』
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