Who Let The Dogs Out その4

案内を頼みながら崩れ落ちた手すりを広い、進むこと3ブロックほど。すでに目前に迫っていたが最短のルートは崩れ通れないことがマップでわかり遠回りする羽目になっていた。


道中、音楽の上から照美と響の奮闘する声が入り足を早めていると、依由ちゃんは我慢ならず口に出してしまう。


『守さん、あの青い人達って....』


「多分、この船に取り残された人たち.....」


考えないようにしていたことをとうとう口に出してしまうと、後はただ気分が落ち込み激しい無気力感に襲われた。


彼等の顔こそ知らずとも、あの青く身体が半分になっても俺に向かってくる激しい形相は人としての名残はなく...


恨みを、見殺しにした恨みをぶつけてくるようで酷く恐ろしかった。



道を進み二人のいる場所が目前まで迫るとその通路は青の樹木で塞がれ来た道を戻らざるを得ず、無駄とわかっていながらも木を蹴ってみたり殴ってみるがビクともしない。




再び来た道を戻ろうとすると、既に’’奴ら’は数十体と列をなしている。


「万事休すか...」


捨て身覚悟で両手に発炎筒を持ち、襲い掛かる’’奴ら’’に突き刺した。



発炎筒から噴き出す摂氏600度の炎が青い身体を一瞬で包み、炭化し灰になってしまう。


唖然としていると背後から喝が飛んだ。


『守さん!刺して!』


次々と迫ってくる’’奴ら’’を突き、燃やし、灰にしているとあることに気づき、背を向け前を塞ぐ樹木へ発炎筒をあてがうと同様に灰化し道が開けた。




次第に発炎筒の炎が勢いを失っていき、残るは一本となるところで二人のいる部屋へ辿り着くと、数体が扉の前で溢れかえっている。


大声で扉の向こうの二人に呼び掛けた。


「今からそっちに入る!扉を開けてくれ!」


奴らは狙いを移しこちらへ歩き始めると、最後の一本に点火し依由ちゃんを抱き寄せ、次々と奴らを灰にしながら進み扉が開く。


中から照美が手を伸ばし、飛び込み手を掴み室内に引き込まれた。



壁のレバーを降ろし扉を閉めると奴の腕が切断され中に入り込み、それでも尚こちらへ這いよる青い腕に発炎筒を突き刺したところで火は消えてしまった。


「こいつらには火だ!」



『わかってるわよ!』


照美が指差す先には既に使い捨てられた発炎筒が転がっている。


「このまま籠城するのか!?」


『響!』


『はいはい、丁度仕上がりましたよっと』


ずっと部屋の隅で何かを弄っていた響はそれを両手で重々しくこちらへ運び出してきた。


それはまるでチェーンソーのような胴体に先端からは長いバレルが伸びている。



『開店時間だよ!』


響は意気揚々とそのデカブツについた二つのハンドルを握り構え、照美は閉めたドアをこともあろうに再び開け奴らを招き入れた!


『響さん!どうするんですか!』


依由ちゃんは俺の疑問を代弁するように叫ぶと押し寄せる青い波をよそに、見てな、と言わんばかりに笑い後方のハンドルを引き出す。


するとデカブツのバレルの先端から吹き付けるような猛火を発射し、奴らは見る見るうちに灰へと変わり、ものの数分で奴らはすべて消えその場には塵の山が積もっていた。


〈皆さんお疲れ様です、しかし一人は登校拒否のようです〉


キルケーの声が全員に伝わりギャリーからの映像がバイザーに表示され、そこには逃げるようにこの船を出て離れていく青いシルエットがあった。


生き残りの一匹か、全員が目を合わせ追う気力がないことを確かめ合いその場に4人して大の字で倒れ込んだ。


〈せめてベッドに戻っては?〉


「もう」


『なにも』


『したく』


『ない』

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