Who Let The Dogs Out その3
無心で走り目的地さえ通り越し2ブロックほど離れたところで息を切らし、壁にもたれへたり込むとどこか既視感ある光景だった。
どの通路も似た様相だが特別違和感を感じ、手元にあった裏を向いたプレートを拾い上げると「Pod Room」と記されていた。
『一体何なんですかあれ....』
息を切らしながらパニックになっている彼女をよそに立ち上がり、へしゃげ、隙間の空いた隔壁に手を当て向こうで起きた出来事がフラッシュバックし固まり、依由ちゃんは顔を覗き込むと、察したのか気遣うよう言う。
『私が確認してきましょうか?』
....違う、ここで彼女に任せていいはずがない。
もしかしたらまだポッド内で彼女のように中で助けを待っている人がいるかもしれない。
大きく深呼吸し隔壁の隙間に手を入れ持ち上げようとするが、わずかに動くばかりで上げきれない。
『私も手伝います!』
隣に並ぶ彼女と力いっぱい隔壁を持ち上げ、間に瓦礫を挟みポッドルームの中へと入ると、
そしてこの船全体に広がる木の根元はここから、この天井からだと一目で理解した。
あの密林のごとき神秘性はなく、この部屋全面を天井を基点として樹皮が覆い
中心に空いた大穴へ向かって、いくつものコブのある大樹が伸び、船内全体に行き渡っているようだ。
やはり見間違いじゃなかった、あの時船を突き破って天井に埋まってた塊はこの木の種だったんだ。
そして皮肉なことに潰れたポッドや瓦礫は樹皮の下になり、見えないことで未だ正気を保っていることに鼻を鳴らす。
すると船が駆動音を立て樹皮の隙間からは灯りがつき、同時に男の野太い歌い声が大音量で鳴り響いた。
〈Who let the dogs out!Woof! woof!woof! woof!〉
『ちょっと!全体放送になってるわよ!』
『うーん混線してるみたい』
照美と響の声まで聞こえ始めた。どうやら船のメインシステムは復旧したようだ。
『守さん、お二人と通信できますか?さっきから呼び掛けてるんですが反応がなくって』
照美と響に声をかけるが音声は一方通行になっているようだ
『ちょっとなんなのこいつら』
『....ブルーマン?いやガミラス人?』
照美と響の慌てるような声のあと、通信は雑音にまみれ音楽だけが流れている。
『守さん!』
叫ぶ依由ちゃんが指す中心の大樹を見ると、無数についたコブが白く光り中から破け、ボトボトと中身がこぼれ落ちると
それはメタリックブルーの身体で立ち上がり、先ほどの"奴"同様、ゆっくりとこちらへ迫ってくる。
『あれって...』
破裂したコブの中にはポッドの残骸が埋まっており、依由ちゃんは言葉を失くし
それに気づいた瞬間、’’奴ら’’は一斉に襲い掛かってくる!
隔壁の隙間を縫い通路へ戻ると、奴らもまた隙間から這い出ようとし、挟んでいた瓦礫を蹴り飛ばすと隔壁が落ち胴体を真っ二つに裁断してしまい戸惑う中、
それでも奴等は動きを止めず体液をまき散らしながら上半身だけでこちらに向かってくる!
「あぁぁ!キモイキモイ!」
依由ちゃんの腕を引きどこへともわからずまたしても走り出す。
まずあいつらと合流しないと、俺達と同じ状況のはずだ!
「照美達の場所どこかわかる⁉」
『は、はい!私が先導します!』
こちらが息を切らし全力で走る中、余裕しゃくしゃくと前に抜き出た。
「....はいお願いします」
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