第16話 閑話の1
「夏祭り?」
「はい。この街で来週末の休みに行われます」
訪ねて来たビルボさんが言う。
「もうそんな季節か…」
叔父ちゃんがボソッと呟く。
聞いてみればこの国、連合王国と言って、小国が集まって大きな国家を作っているらしい。
自分達がいる子の城塞都市も、元々は小国なのだとか。
なので、各城塞都市に国王がいるらしい。
そして、そのすべてを束ねる皇帝が王都にいるのだとか。
で、祭りと言うのは、春の復活祭、夏祭り、秋の収穫祭が行われるらしいのだが、春と秋は毎年各都市で持ち回りでやるとの事。
だが、夏祭りだけは日程をずらして、各都市全部でやるらしい。
政治体制の事も祭りの事もあまり興味が無かったので、初めて聞いたw
「で、その夏祭りが何か?」
ビルボさんが家に来て、自分にその話をする意図が解らない。
「……その~…出店をお願いできないかと…」
あまりの素頓狂な台詞に、
「は、はぁ???!」
こっちの声も裏返った。
聞けば数百年前の魔王討伐後の夏祭りの折、曽祖父ちゃんと叔父ちゃんが屋台を出していて、それが好評だったらしい。
元いた世界の祭りの屋台が物珍しさもあって、この世界では人気になるのだとか。
とか、言われても俺テキ屋じゃないし、屋台何て高校の文化祭位でしかやった事ないんだけど…
「叔父ちゃん何やったの?」
ジト目を向けて聞いてみる。
「ガマの油売り」
簡素な答えが返って来た。
「儂、焼き芋」
曽祖父ちゃんが応える。
両方とも縁日に無い様な気がするのだが、気のせいだろうか?
「あの傷薬は今でも伝説になっていますね!」
オイオイ、ガマの油が伝説の薬かよw
「出来ましたらカズキさまにも何か…」
ちょ、おま…
◇
目の前に数本、ソースの入ったペットボトルが並んでいる。
容量は1本1800cc、つまり一升。ラベルには『焼きそばソース』と書かれていた。
ソースも麺も、こちらにパスタやソースが有るために簡単に持ち込めるらしい。
「で、焼きそばの屋台をやれと…?」
他の選択肢はないだろう。
「これが一番簡単だからw」
叔父ちゃんは笑顔で言う。
まぁ、あとは肉とキャベツが有れば作れるからねぇ。
鉄板何かは楽に作れるだろうし…
でも俺、料理は苦手なんだけど~
「あぁ、大丈夫。テキ屋で料理が上手な奴なんていないから」
だから脳内の思考に返事するなよ…、もう諦めつつあるけど。
それと、その意見は偏見だと思うぞ。
その後、叔父ちゃんは「少し留守にする」と言って出かけて行った。
何か準備が有るのだろうか?
曽祖父ちゃんが倉庫の中をかき回していると、丸一日ほどで叔父ちゃんも帰って来た。
しかし「ちょっと作業」とか言って工房に籠ってしまう。
曽祖父ちゃんは倉庫から何やらでかい壺を2つ、抱えて戻ってくる。
何だろう? あれ?
その壺の中を丁寧に洗っていた。
「できたぞ~」
工房の扉が開くと同時に叔父ちゃんの声がした。
両肩に大型のボンベらしき物体を担いでいる。
「何これ?」
疑問の第一声に向けて、叔父ちゃんは、
「プロパンガ~ス!」
作ったのかよ!
「爺ちゃんコレ」
ポケットから何やら大量の溶岩の様なものを取り出す。
ガスを作ったならガスガラ、つまりコークスだろう。
そこまで本格的にやるかね…
その後、庭で試作が始まった。
いつの間に作ったのやら、焼きそばの屋台まで完成している。
面白そうなことに関しては手際の良いおっさんだ。
曽祖父ちゃんは、最前の壺の中でコークスに火を起こしていく。
そして壺が温まった辺りで、針金に突き刺したサツマイモ(と、思しき物)を壺の中に吊るしていく。
焼き芋じゃないの? とか思っていたらコップ一杯ほどの水を中に投げ込むようにしてから蓋を閉じてしまった。
「あれは壺焼き芋。和樹が知っているのは砂利で焼く石焼きいもだろ? 他にも大きな鍋で焼く窯焼きいもってのもある」
叔父ちゃんが解説してくれた。正直、石焼きいも以外知らなかった。
そして焼きそば。
熱した鉄板で細切れの肉を炒め、キャベツ(らしき物)を投入。
水が出て来た頃合いで麺を投入して、ヘラで細切れにする。
そしてソースと醤油(これが大事らしい)を絡めて炒め上げる。
全部叔父ちゃんの指導だ。
最後に器に盛って青のり(あおさではなく本当の青のりだった)を振って完成。
試しに味見をしてみる。
「うんまっ!」
思わず声が出た。
「上々の出来じゃないかw」
叔父ちゃんが言ってくれた。
何やら、浅草蕎麦とか言う、古い形態の焼きそばらしい。
曽祖父ちゃんも、
「こりゃ美味いな!」
と喜んでくれた。
曽祖父ちゃんの焼き芋も、出来立てを食べてみる。
「あぅ、ほふ、ほふ、これうまつ!」
ほっくほくの焼き芋が出来上がっていた。
何か飲み物が無いとのどに詰まりそうな位、甘くてほくほくだった。
◇
そうこうしていると、ビルボさんが庭に顔を出す。
「良い臭いですな~」
ニコニコと笑顔だ。
だが、叔父ちゃんは、
「頼むだけ頼んで自分は何にもしない奴には食わせな~いw」
笑顔で言いきった。
ビルボさんは、それを聞いて「この世の終わりか」みたいな表情を浮かべていたw
「だから、やりゃ良いじゃん?」
叔父ちゃんがビルボさんに向かって言う。
「へも、しかんのかろあいが、はれにもはからず…あつっ!」
焼き芋を口いっぱいに頬張りながら喋るなよ。
「しかし、久しぶりですな、この焼き芋。懐かしい…」
「こっちも食ってみ」
叔父ちゃんが、俺の作った焼きそばを差し出す。
ビルボさんは眉をひそめて受け取ってから、怪訝な顔で臭いをかいでいる。
と、その顔が急に明るくなり、口にした瞬間、
「美味い!」
焼きそばを吐き出しながら叫んだ。汚ねぇな、もう。
本当にエルフか? この人。
凄い勢いで掻きこんだ後、こっちに向いて、
「さすがカズキ様! これなら間違いございません!?」
だから、焼きそばを吐き出しながら喋るなボケ!
◇
祭り当日の朝、中央広場やメインストリートは出店の設営でにぎわっていた。
裏道なんかもそこここに布を広げただけの露店が出始めている。
ちなみに、中央広場は割当制で出店料がかかる。メインストリートは安めの出展料だが、商店が多いため、店の前はその商店が優先権を持っているらしい。
出店を出さない商店は他に譲る事が出来る。勿論有償らしいが。
裏道は誰でも自由に出店できるらしい。
屋台は武器、雑貨、薬等、多種多様だが食べ物の屋台が割合としては多いように見える。
俺たちは、中央広場のかなり良い場所に屋台を準備していた。
とは言っても別に出店料は払っていない。街のギルドに割り当てがあるらしく、冒険者ギルドの割り当て場所だからだ。
それで、ビルボさんが依頼に来てたのね…
準備と言っても大したことはしていない。
四次元ポケ…じゃなかった、魔法袋から屋台と道具を取り出しただけだ。
それにしても、この魔法袋とか言うポシェット、容量どんだけあるんだ?
「大型のドラゴンが2~30は楽に入るよ」
叔父ちゃんの声がする。入れた事あるのね…
曽祖父ちゃんと叔父ちゃんが何やらボソボソと話している。
と、叔父ちゃんがポケットから何やら取り出した。
塩に醤油、バターとじゃが芋(らしき物)。ジャガバタやる気か。美味そうだ。
で、肝心の叔父ちゃんはと言えば、まだ何も用意していない。
目の前のスペースは完全な空き地になっている。
そこへ、簡素な台、ダラムさんが使っていたような物をいきなり取り出し設置する。
そして平たい缶を積み上げて行った。
ふと見れば、いつの間にやら黒紋付きに袴姿になっている。
そうこうしている内に、ドンドンと祭りの開始を告げる花火が上がっていた。
◇
慌てて焼きそばを焼き始める。
曽祖父ちゃんはサツマイモ(らしき物)とじゃが芋(らしき物)を次々と針金に通して壺の中に吊るして行く。
叔父ちゃんは紋付き袴姿で腕を組んで往来を眺めているだけ。何しているんだろう?
人の流れができ初め、炒めたそばにソースと醤油をぶっかけると良い臭いがあたりに漂う。
「…ん? 何だ、この臭い?」
周りの人がざわつき始める。
串焼きや煮物の屋台も出ているので、それなりに良い臭いが漂ってはいるのだが、ソースや醤油が焦げる臭いは独特だ。
いち早く、臭いの発生源に気が付いて、目の前に来た人が鉄板の上を見て怪訝な顔をしている。
「これは何だ?」
見た目はあまりよろしくない、と言うかこちらには無い食べ物なので警戒している様だ。
焼き上がったので、火の無い鉄板の端に寄せながら、
「俺の故郷の祭りの定番で『焼きそば』って言うんだ。良かったら試してみるか? 金は要らないよ」
「ぜひ!」
その男性が言うので、一番小さい紙皿に焼きそばを盛りつけ、少量の紅ショウガを添え、青のりをかけて渡す。
男性はそれを口に入れ、ムグムグと噛んだかと思うと、
「う、う、う、美味い!!!」
叫び声をあげる。
どうでも良いけど口の中の物を飲み込んでから喋れよ。汚ねぇなぁ…
その声に周りの注目が集まり、ワラワラと人が寄って來る。
「これ! 凄く美味いぞ!」
口角泡を飛ばすではなく、焼きそばを飛ばしながら力説している男性。
食うか喋るかどっちかにしろよ…
「兄ちゃん、俺にも一つ!」
声がかかったので、
「大中小とありますが?」
応えると、
「大で!」
「俺も!」
「こっちも!」
次々に声がかかった。
大慌てで盛り付けて行く。
と、隣から、
「次、焼き始めないと間に合わないぞ」
叔父ちゃんの声がした。
必死で肉とキャベツ(らしき物)を鉄板に広げながら盛り付けて行く。
最初の分は、あっという間に売り切れてしまった。
それでも屋台の前には行列が残っている。大丈夫かこれ?
今度は叔父ちゃんと反対側の隣、曽祖父ちゃんの屋台から焼き芋の良い臭いが漂ってくる。
「さて、600年の伝統の味、焼き芋じゃ! 良かったら食って行けい!」
曽祖父ちゃんの声が聞こえた。
こちらもかなり好評の様だ。
曽祖父ちゃんは焼き上がりを取出すと、すぐに次を吊るしていく。
特にジャガバタは人気の様だ。
お客さんが2件に分散してくれたおかげで、少し楽になった。
「さあさ、お立ち会い。御用とお急ぎでない方は、ゆっくりと聞いてくれ。遠目山越し笠のうち、物の文色(あいろ)と理方(りかた)がわからぬ。山寺の鐘は、ごうごうと鳴るといえども、童子(どうじ)来立って鐘に鐘木(しゅもく)をあてざえば、鐘が鳴るやら鐘木が鳴るやら、とんとその音色がわからぬが道理…」
叔父ちゃんの良く通る声が聞こえて来た。
声だけは良いんだよねこのおっさん。音痴だけど。しかも絶対音感が有るくせに音痴、カラオケで自分の唄で悶絶した事が有るらしい。
完璧超人みたいなふりをして変な所が抜けているw
それにしても、良くこんな口上覚えてるな…
「だがしかし、お立ち会い、投げ銭や放り銭はお断りだ。手前、大道に未熟な渡世をいたすといえども、投げ銭や放り銭はもらわないよ。では、何を家業にいたすかと言えば、手前持ち出したるは、これにある蟇煎噪(ひきせんそう)、四六のガマの油だ。そういうガマは、おのれの家の縁の下や流しの下にもいると言うお方があるが、それは俗にオタマガエル、ヒキガエルといって、薬力(やくりき)と効能の足しにはならん。手前持ち出したるは四六のガマだ!」
「四六、五六は何処で分かる。前足の指が四本で後足の指が六本、これを名付けて四六のガマ。これが住めるのは、これよりはるーか北にあたる常陸の国(ひたちのくに)は筑波山の麓、オンバコという露草を食らい成長をする。これが捕れるのは、五月に八月に十月、これを名付けて五八十(ごはっそう)は四六のガマだ、お立ち会い。このガマの油を取るには、四方に鏡を立て、下に金網を敷き、その中にガマを追い込む。ガマは己(おのれ)の姿が鏡に映るのを見ておのれと驚き、たらーり、たらりと脂汗を流す。これを下の金網にてすき取り、柳の小枝をもって、三七(さんしち)二十一日の間とろーり、とろりと煮詰めたるのがこのガマの油だ」
一気に口上を述べ始める。
ガマの油売りの口上なんて、俺も聞いた事が無い。
それを立て板に水と並べているこの人、本当に何者?
「ご覧のとおり、抜けば玉散る氷の刃だ、お立ちあい。おん目の前の白紙を一枚切ってお目にかける。白紙一枚切れるときは人間の甘皮が切れるという。さあ、一枚の紙が二枚に切れる。二枚が四枚、四枚が八枚、八枚が十と六枚、十と六枚が三十と二枚。三十と二枚が六十と四枚。六十と四枚が一束と二十八枚。春は三月落花のかたち、比良の暮雪は雪降りの形だ、お立ち会い」
結果、自分の刀で切った傷口を、瞬く間に直して見せた辺りから飛ぶように売れ始めた。
安いのだ。初級ポーションと呼ばれる回復薬、擦り傷や切り傷程度ならあっという間に治る物が、大体大銅貨一枚と行った所が相場だ。
だが、それは一回分。傷薬としては高い。
叔父ちゃんの薬は軟膏なので数十回分で同じ値段。
しかも、口上の中に有ったのだが「ニキビ、腫物、いぼ痔に切れ痔…」みたいなのも効いたらしい。
すぐに売り切れてしまったが、その間だけでも曽祖父ちゃんと俺の屋台が楽になったのでありがたい。
だが、何故か一人だけ、口上を聞いていた客が叔父ちゃんの屋台の端に掴まって、へっぴり腰で立っていた。
「そ、それ、痔にも効くのか?」
「効くぞ。だが売り切れだw」
叔父ちゃんの返事を聞いたその人は、もうこの世の終わりを見た、と言った表情を見せていた。痛そうw
叔父ちゃんは自分の口上で使った缶を差し出し、
「これで良きゃただでやるよw」
飄々とした笑顔で言う。
「い、良いんですか???」
「痛いんだろ?」
簡素なやり取りを聞きつつ、このおっさんやった事あるな、とか思っていると
「親父が酷かったんだよw」
言われた。あ~、何か聞いた記憶が有る。爺ちゃんいぼ痔がひどかったとか。
その客は、薬の缶を握りしめて屋台を後にしようとしたのだが、叔父ちゃんが屋台をひらりと飛び越えて、
「ちょい待ち…」
言いながらその人の尻に手をあてがう。
すぐに魔法陣が指先から展開して消えて行った。
「あ、あれ? 痛くない!?」
何か驚いたような声を上げる。回復魔法って奴だろうか?
つか、叔父ちゃん魔法使えるのね…
「応急処置はしといたけど、根本治療じゃないから。その薬を一日一回塗って置く様に」
真面目な顔で告げた叔父ちゃんに対して、相手は何度も頭を下げながら去って行った。
そんなこんなを見ている内に、曽祖父ちゃんと俺の屋台の前が凄い事になって来た。
正直捌き切れない客が殺到している。
叔父ちゃんは、売り切れた屋台を片付けてから、新しい屋台、あんず飴とかき氷の屋台を広げている。
「あんず飴にかき氷だよ~」
気の抜けた声が聞こえていた。
と、こっちに並んでいた客の一人が、叔父ちゃんの屋台を目にして目を見開く。
大きな氷に窪みを開けてそこに木の棒に刺した水あめが並んでいるだけだ。
まぁ、あめの中にはフルーツ何かが入っていて、こちらでは変わっているかもしれないし、梅ジャムやオレンジジャムなんかも混じっていてある意味凄いのだが…
あれ、確か製造元が廃業しちゃってもう手に入らないはず…、だが、この世界の人がそんな事を知るわけはない。
「そ、それは氷か!」
最前の人が声を上げる。
「そうだよ~」
やる気無さそうな叔父ちゃんの声。
さっきの口上売りで精力を使い果たしたのか?w
「その氷を売ってくれ!」
「別に良いけど、すぐ溶けちゃうよ~。それよりかき氷でも食って行って~」
本気で気力が無いな、このおっさん。
「かき氷?」
疑問形で言葉を発するその人に対し、もう言葉を紡ぎながらシャリシャリと氷を書いている叔父ちゃん。
「氷菓だよ~、上げるから食べてみ」
その人に手渡す。
それはもう昔ながらのかき氷。紙皿にふわっと盛られた氷にカラフルなシロップが掛かっている。
「これは…」と言いながらそれを口にしたお客さんは、でかい目をさらに見開いて慌てて掻きこんでいく。
「「あ!」」
俺と叔父ちゃんの声がハモった瞬間、その人がこめかみを押えてうずくまる。
正式名称アイスクリーム頭痛、氷を勢いよく食べると來るキ~ンとしたアレだw
何とか立ち直ったその人は、
「本物の氷菓だ!!」
大声で叫んだ瞬間、広場にいた人の視線が集中する。
何なんだ???
◇
その後、叔父ちゃんの所にも良い具合に客が分散してくれて、少しだけ楽になった。
でも、一日中焼きそばを焼く羽目にはなったのだが。
その日の祭り終了の花火の音を聞いてから、叔父ちゃんに聞いてみた。
「何でかき氷ってあんなに人気だったの?」
叔父ちゃんはコクリと頷いてから、
「氷がな、上級魔導士でもないと作れないんで、夏場の氷菓は王侯貴族でもないと口にできないんだよ」
あ~、なるほど。解りやすい話だ。
「焼きそばがあんなに人気だったのは?」
「そりゃ目新しくて美味しいからだろ」
「焼き芋も?」
しばし思案顔の叔父ちゃん。
「お前には話してなかったっけ?」
何を? つか、焼き芋と何か関係ある話なのか?
「家ねぇ、戦中戦後の一時、焼き芋屋だったのよ。その店主が爺ちゃん、売り子が婆ちゃん、後に母ちゃんもやってたみたいよ。だから爺ちゃん焼くのは得意なんだ。あそこの商店街の古い店だと『海老原芋屋さん』で通じるくらいだったからw」
………ちょっとびっくり。年季の入った焼き芋だったらしい。
つか、焼き芋屋と言う固定商売(屋台ではなく)が成り立っていた時代が有るんだ。今度詳しく聞いてみたい。
それ以前に、色々なソースもあるし、材料も全部そろっているこの世界で、焼きそばと言う物が発生しなかった理由も解らない。勿論、焼き芋に関してはもっと解らないけど。
二日目の祭りも、ほぼ同様な展開だった。
ただ違ったのは叔父ちゃんの屋台であんず飴が人気になっていた位だろう。
こっちの忙しさは相変わらずで、もうず~っと焼きそばを焼き続けている。隣の曽祖父ちゃんも同様だ。
全部終わって屋台の片付けをしているとビルボさんが顔を見せる。
「お疲れ様です。お蔭さまで物凄い好評でした!」
元気に言う。
叔父ちゃんは、そのビルボさんにジト目を向けながら、
「お前も何かやれよ…、人にばっかり任せてないで…」
ボソッと言った。
「あ、いや、わたしは…、ギルドの仕事も…」
明らかに言い訳な言葉を口にしている。
「お~、秋は楽が出来そうだな。俺とカズキがギルドの仕事をやってやるから、お前は出店を頑張れ! 俺もカズキも事務仕事は得意だ!」
ニヤ付きながら言い放つ。だが、事実だw
「あ、あの、えと、でも…」
抵抗するビルボさん。
「いいよな?」
叔父ちゃん、笑顔だけど目が笑ってないよ。
「しかし…」
叔父ちゃん、ポケットに右手を突っ込んで、出したらナックルダスターがはまっていた。
「いいよな?」
ビルボさんは顔を真っ蒼にして機械的に頷いていた。
それ、脅迫って言うんじゃ?
その後、打ち上げの宴会に突入したのは毎度の事。
でも、ビルボさんだけは複雑な顔をしていたw
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