第13話片恋

さあ私の涙を召しませ。骸の盃で受けるもよし、漆の盃に注ぐもよし。この涙の一粒があなたさまの渇きを癒せるのならそれでよし、満たされぬのなら千人の女を泣かせればよし。すまし顔で女の頤に手をかけて、寄せられた柳眉を愛でては寸刻ともたずに飽きるあなたさまでございますから、私のことももうじきお忘れになるでしょう。どうかそのうるわしい唇に私の名を載せてくださいませ。日々琴を弾じるあなたさまの白い御手で首を絞められたって構いません。お琴の爪で虐められたって本望です。あなたさまに惚れてしまったのが私の今生の最たる過ちでございました。左様、あなたさまはご存知ない。私があなたさまのお拾いになった黒猫であることを。


第五十一回Twitter300字SS お題「涙」

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