第14話かぐや姫の花園

少女の頃に夢見た桜も今となっては散り果てて、乙女と云うには恥ずかしく、老嬢と称するには忍びない、さらばこの身を何と呼ぶ。桜のスコーンにクロテッドクリームをたっぷり塗って、春摘みのニルギリで茶会をしても、饗応するのは兎のぬいぐるみばかり。四羽も五羽も居並んで、ティーカップを手に月のお話。故郷は飽いた、とうに捨てて降りてきて、もう千年が経つというのに、未だ少女は崇められ、儚い命を咲かせて衰える。天人すらも五衰を免れぬさだめ、ならば我が花園に招きましょう。不死の薬はいちご水、不老の薬は薔薇のシロップ。ひとたび服せば男の腕など忘れます。月の光に包まれて、十重二十重にも花を開いて共に眠りにつきましょう。


第五十二回Twitter300字SS お題「咲く」

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