第11話摩天楼奇譚

あかあかやと詠んだのは遥か昔のこととなり、今は月を愛でるいとまもなく空蝉の宴に呼び立てられて、妄言妄語を弄しては御仏の御顔も拝さぬ日々を送っております。宗旨を変えて結ぶ庵は摩天楼の二十七階、空近けれど字は体をあらわすと申します。いいえ、この一室も観音菩薩の羂索の糸で吊り上げられておるのやもしれません。不空という御名もありがたいものです。おや面妖な顔をなさる。そこに池がございましょう。ご覧なさい、睡蓮の浮かぶ水面の下に眠るのは、生きながら御仏となった我が兄です。その睡蓮にこうして燭台の灯を移せば、あかあかと輝いてほうっと消えます。あなたさまのお命はきっと紫紺の焰となってうつくしく燃えましょう。


第四十九回Twitter300字SS お題「灯す」

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