第9話葉月唄

兄さま兄さま帰りましょ。妖に変化したお手には長い爪、額には長い角。母さまと父さまが化物退治と刃を向けても、私だけは兄さまをお守りします。花魁の血を啜って長らえる妖姫となって兄さまにお侍りいたします。禿が消えたと世間が騒いでも、どこ吹く風と、赤き血を盃に満たして兄さまに献じます。ほの白い乳から流れる三千人の女の血を干して、兄さまがこのお家の裏手に迫る、魔の山の王となりましたら、私は紅椿の打掛を身にまとい、兄さまのお嫁に参ります。さようなら、父さま、母さま。人ならぬ恋に落ちた私を神仏はお許しにならずとも、私の孕んだ玉はやがて竜となり、この地を淵へと変えましょう。


第四十五回Twitter300字SS

お題「帰る」

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