第7話月蝕譚
雨雲たれ込める午後のカフェに、異国の調べが流れる蓄音機がもの憂く響く。雨の日の猫は一日の大半を眠って過ごすが、僕もこの珈琲を飲んだら枕頭の書と眠りたい。『月蝕譚』と題されたその本は、月の民である異形の青年と、この星の少年との交歓を描いたもので、半陰陽の異形の青年は、年頃の少年の精を奪い、声変わりする前の声を奪って高らかに歌うのだった。僕がもしこの青年と出会うことがあったとしても、指一本触れられることはなく、ただの路傍の犬と見捨てられるだけなのだろう。憧れは日毎に高じて、枕頭の書はグラシン紙に包まれたまま、汚れを知らない。本の見返しには蔵書票が貼り付けられている。インクで印刻された月は笑わない。
第四十三回 Twitter300字SS
お題「空」
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