第8話 とりあえず、1日目は無事で良かった訳ですが……。

とおる、寝ぼけてお手洗いと間違えたフリして、土下座しながら私たちの部屋に入ってきたらどうなるか、わかってるわよね?」



なんでそんなにピンポイントな上に土下座して入ってんだよ。

自覚症状ありじゃないか。

そこまでして入りたかったのかよ、俺は。

安い土下座だぜ、全く。

なんて言ってもいいけど、もうおやすみなさいのお時間だ。

ここは適当に質問に返しておくとしよう。



「……殺されるんですか?」


「残念ハズレ。正解は両目をえぐりとって入れ替えるわ。そうなった時は是非とも、どんな景色が見えるか教えてもらいたいわ」


「唐突なグロ描写怖いわ!グロ要素来るとか誰も予想してないから!いっそ一思ひとおもいに殺してくれ!」



てか、目を入れ替えても、ちゃんと神経は繋げてくれるのか。

法とか条例みたいな、きちんとした名に恥じない几帳面な奴だぜ。

几帳面なサイコパス外科医だぜ。


ちなみに、殺すことはグロくないのかって言われると怪しいけど、何故か殺すはセーフみたい所あるよね?あるかな?あって欲しいな。


いや、殺して欲しいわけじゃないんだけど。



「透が侵入してくるや否やどんな状況でも殺すなんて、私はそんな浅はかで野蛮な考えはしてないわ」


「両目をえぐりとって入れ替えるのは聡明な行為なんですか?」


「あら、野蛮ってどんな状況でも殺すことを指してたのよ」


「状況に応じて別のグロ描写をするという訳なんですね……」



まあ、様々な起こりうるパターンを予測して、対策を立てていくというのは聡明な判断だな。

だからといって到底許される行為ではないけれども……。



「あら、無駄に冴えてるわね。他にも貴方に向かって時計回りに、四肢を付け替えたりする罰があるわよ。その場合、側転の途中みたいな格好で歩かなきゃで、大変そうね」


「相変わらずグロい罰だな!?てか、いちいち罰なんて考える必要も、それを俺に教える必要も無いからな?なんてったって俺は紳士だからな。玲たちの部屋に侵入なんてしないぞ」


「あら、あらかじめ罰を知っておくことで、一番よさそうな罰を選んで、その罰を受けられる方法で侵入してくる作戦が取れるじゃない? それなのに、教えなくていいなんて言えるの?」


「俺の話、後半の自己PR聞いてた!?てか、どんな罰も選べねえよ!」


「確かにその辺の配慮は欠けていたわね。申し訳ないわ。四肢4分の1回転は、この教会を色々物色しようとしてクローゼットと間違えたふりして、倒立しながら入ってきたら、執行するわ」


「俺の話、前半のツッコミも聞け?!しかも、『選べねえ』って罰の条件がわからないから、選べないってわけじゃないぞ!?てか、侵入する時の言い訳も大概だし、なんか倒立してるし、俺は一体何がしたいんだ!」


ほんとなんで倒立してるんだよ。

そういえば、さっきも側転がなんだとか言ってたし、4分の1回転とか若干のロンダート感あるし、急にマット運動好き系女子だな。

マット運動好き系几帳面サイコパス外科医だな。


「倒立してるのは、土下座だと2箇所しか付け変えれないから、土下座をエスカレートさせて4箇所できるようにしただけよ。だから倒立とは言っても三点倒立ね」


「土下座はパーツを付け変えるためのトリガーだったのか!というか、なんで俺は土下座しながら入ってるんだ?何でそんなキャラになってるんだ?」


「一日に何回も土下座してたらそれはもう、土下座キャラは着くと思うけど?」


「確かに、玲の言うことは万理ぐらいあるな。流石にこれは言い逃れできませんね」


「あと、土下座しながら入って来るってことは、虫みたいにカサカサしながら入って来るってことだし、その姿が見たいのよ」


「ん、虫が好きなのか。野生児か。つまり玲は、ワイルドなマット運動好き系几帳面サイコパス外科医ってことか」


「虫は大っ嫌いよ。あと外科医でもないわ。天才外科医に超大金払ってでもやってもらうわ」


「なるほど。つまり、シティガールなマット運動好き系几帳面サイコパス大富豪ってことか……」



てか「マット運動好き系几帳面サイコパス」の部分は否定しないのか。

誤解生むぞ、いいのか?



「透さん、なんですかその意味不明な単語は」


「おお、芽衣、ベッドの準備は終わったのか。わざわざありがとな。大丈夫だったか1人で?ちなみに、シティガールなマット運動好き系几帳面サイコパス大富豪とは、宝条 玲のことだ」



そんな心配をするぐらいなら手伝えって話だけど──。



「やっぱり意味不明ですね。今日は大変な一日だったらしいので、ゆっくり休んでて欲しかっただけですし、心配しなくてもいいんですよ」



って、言って聞かないからな。

お言葉に甘えさせていただいたんだよ。

許されるよね?許されないかな?許してください、倒立しますから。



「そうか、ありがとう。えー、寝ますか。用意も出来た事だし」


「そうね。透、ちゃんとわかってるわよね?」


「想像もしたくないくらいわかってるよ」


「一体なんの話ししてたんですか……。それでは透さん、おやすみなさい」


「こっちの話だから気にしなくていいぞ。じゃあ、2人ともおやすみ」


「その通りよ。おやすみ」



この後2人で作戦会議して、更にバツがキツくなってたら嫌だな……。

いや侵入する訳では無いけれども……。

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