第4話 まったく、どこの世界にもこういう奴はいるんですね……。

ふむ……。

れいが凄い嫌そうな顔してるから知り合いじゃなさそうだし、あれは俗に言うチンピラか?

案の定絡まれたけど、チンピラ程度で助かった。

いやー、それにしても異世界にもチンピラはいたんだな。

相変わらずカジュアルスタイルだし。

まあ、あんな絶世の美少女ならナンパもされるか。


って観察してる場合じゃねえ。

とりあえず急いで走らなきゃ。




いや、辿り着いたけど走ってきた意味ないな 、人が多くて歩くのと大差ねえ。

まあ、無事にたどりつけて良かった。


……こういう時どうすればいいの?

まずは威圧からかな?



「お、お、おい。な、にやってる、るんだ!」



ちょ待って待って、カッコ悪すぎる!

てかコイツ怖え!デケェ!

ただでさえ一般人に対しても緊張するのにチンピラなんて無理があったんだ!

ましてや高圧的に話しかけるなんて!



「え、あ、ありがとう」



あぁ、れいよ、そんな驚きと哀れみの目で俺を見ないでくれよ……。



「あ?なんだお前、見ねえ顔だなぁ」



そりゃそうですよ、私この世界の人じゃありませんから。

てか「見ねえ顔だなぁ」ってこのご近所の人の顔全員覚えてるんですか?

男も覚えてるってことはどっちもいけるんですか?

バイセクシャルなんですか?

バイセクシャルの方と初めて会いました、どうもはじめまして。


って、そんなこと考えてる場合じゃねえ!

とりあえず反論しろ!



「あ、は、はじめまして」



あー、さっきまでの自分の思考に釣られた。



「は?ナメてんのか?」



確かに今の発言はナメてたな。



「いや、ナメてないですよ」


「いや、ナメてんだろ。つーかお前はこの女の知り合いか?」


「ええ、知り合いです」



知り合いだからなんだって言うんだ?



「そうか、じゃあお前をここで叩き潰すことにしよう」


「え?え?え?何その謎理論。待って待って待って」


「フンッ!」



危ねぇ!

いきなり殴りかかってくるとか野蛮すぎ!

顔面目がけてストレートとか、ヤバいわこいつ!

てか、どんだけ玲をとられたくないんだよ!

まあこの勝負は話しかけられた俺の勝ちなんですけどね。

つーことでとりあえずチンピラを背負い投げしてからの、



「玲!逃げるぞ!」



玲だけ逃がすのは、コイツの本当の狙いがわからないから一人にさせるのはマズい気がする。


一応、闘うっていう手もあるけど体格差がきつキツすぎ。

でも、体育の時の嫌いだった柔道は無駄ではなかったんだな、無駄に投げまでやらされてた甲斐があった。


なんにしても、やっぱり1番は、玲と一緒に逃げる事だよな。

ちょっと手を掴むのはなんか躊躇ためらわれるけど、この際気にしてらんねぇ!


大通りは人で溢れてて真正面から行くと俺たちの行く手すらも阻まれちまう。

だとしたら、ありきたりだけど路地裏しかねえ。


すぐそこに路地裏があって良かった。

とりあえずこの路地裏を曲がりまくって撒く。

ただそれだけだ。

頭悪そうな顔してるし。



「喰らえっ!」


「えっ?」

「熱ッ!」



耳元をなんか赤くて熱いのが抜けてったんだが、あれは火の玉か?

まあでも、アイツのAIMエイム力が低くて良かった。

てか遠距離攻撃使えるとか分が悪すぎる。

なおさら逃げるしかないじゃないか。


とりあえず玲に先を走ってもらおう。

手を繋いで並走してたらあぶねえ。



「死ねぇ!」



クソッ、危ねぇ。

でも、アイツが曲がる時にしか打ってこないのが救いだ。

リロード間隔と路地の直線の長さの問題かな。

しかも、曲がった直後だから狙いもつけづらいしな。


改めて体育で柔道やっててよかった。


てか、アイツ普通に走ればいいじゃん。

こっち女子いるんだから普通に追いつけるだろ。

そんな火の玉脳筋プレイでリロードなんかしてるから追いつけないんだよ。

まあ、そのおかげで生き永らえることができてるんですけどね。

でも、逃げてるだけだと絶対こっちの体力が先に尽きる。



「玲!商店街に出よう!」


「商店街!?まだ逃げ切れてないのにもうお祝いムードなの?」


「ああそうだ!金はあるよな!よし行くぞ!ってか連れてってくれ!道がわからん!でも俺にはいい案があるんだ!」


「いい案?アイデア料理の話か撒くための作戦なのか分からないんだけど?」


「ほら、いいから行くぞ!」



さっきは正面からだったから人混みに入れなかったけど、横からだと変わるとかあるのかな?


まあそれは、アイツも一緒だけど結局人混みに入るから足止めにはなるしね。

あと火の玉撃ってはこれないだろうし。



「ほらとおる、ここよ」


「ありがとう。おお、ちゃんと人混みしてるな」


「で、いい案ってなんなの?」


「いや、そんなこと説明してる暇はない。一応まだ追われてる身だからな、体力回復させないと」


「お祝いしようとしてるあなたが言うのもあれだけど、確かにそうね」


「という事でパンを作るための材料を買おう。俺はパンが好きなんだ。荷物は俺が持つ。あと、見張る。ほら急げ急げー」



パンが好きって言ってもライスも普通に好き。

って言っても、ここライスないか。

多分だけど。



「あ、リンゴあるけどジャムはいる?」


「おお、じゃあ頼んだ」


「私も欲しかったしちょうど良かったわ」


「お、リンゴ好きなの?俺も好きだよ(キリッ」


「ええ、そうだけど。そして、あなたの好みはどうでもいいわ。あと、なぜカッコつけたの?まあいわ。はい、荷物もって」


「ういっす」



さて、アイツはどこかな?

玲が人混みをすり抜けるのが凄い得意だったから、買い物してても距離はそんな縮まってないとは思うけど……。

まあ、このまま撒けることが出来たら最高。

たくさんパンを食べまくるぞー。

あれ?小麦粉とリンゴしかなくね?小麦粉がヤケに多いし。

これ逃げるとしたら某ハンティングゲーの卵運びみたいになるぞ。


……あ、見つけた。

というか見つかった。


「玲!また逃げるぞ」


「はあ、またなのね」


「やっぱ完全に撒くためにはちょっとアイツに傷を負ってもらわなきゃいけないらしいからなぁ」


「さっきまで逃げ回ってただけなのに急に物騒ね」

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