第1話 当然ながら、異世界なんて嫌なんですが……。


「はあ、異世界ってチートが来るところじゃなかったのかよ……」



というかチートどころか能力すらないよな、これ。

今までと感覚何も変わらないし、神様と一緒にキャラメイクしてないしな。


まあ死んでみたら、能力に気付ける可能性もあるっちゃあるけど。

だけど、それだと完全にリゼ□だしなぁ。

しかもリスク高すぎ。



「やっぱり、無能、か……」



せっかくの異世界なら何かしらのチート能力を持って『異世界チーレム』とやらを満喫してみたかった……。


能力のチート性能を満喫したいって話以前に、能力がニート生活を満喫してるって話だけど。


俺の能力よ、頼むから働いてくれ……。

いや、働く能力なかったわ、今の比喩なしで。

誰かに聞かれてる訳では無いけど恥ずかしい。


……それにしても、異世界、嫌だな。

しかもスマホはインターネット繋がらないし。

高校生活始まってまだ2ヶ月だったのに。


暇だ。


そういや、リュックの中なんかあったっけ?

学校帰りだったしあるとしても教科書くらいか。

まあ、テスト当日だし教科書も少ないけど。


あぁ、これから何をして生きていこうか。

いや、むしろ何をすれば生きていけるのか。



「あー、マジで俺はどうすればいいんだ」



あ、ちょっと待って、なんで俺はわざわざずっと立ってんだよ。

さすがに疲れたわ。


しかも、おそらくだけど春~夏らへんの日差しが普通に辛い……。

多分太陽の位置的に昼だな。


季節とか時間とかわからないけど、前の世界もそうだったしそういう事でいいよね。


あれ?ただテレポートしてきた説ある?

いや、スマホ繋がらなかったし違うか。

テレポートだったら時差あるだろうしな。


とりあえずここに腰下ろそう。

疲れた。



「よいしょっと」



おっさんか。

あと、石畳結構キレイだな。


んで、ホントに何すればいいんだよ。

せっかく、通ってる学校的には、上の下くらいの頭脳の持ってるのにわからん。


まあ、記憶力だけでどうにか上がってきたからね。

これからの日本にはいらない人材なんだよね。


……え、だから異世界に飛ばされたとか?


だとしたら尚更生き延びてやるからな。

この記憶力を持ってな。

いや、使い道ないか。


異世界シミュレーションなんてしてないから、記憶力役に立たないし。


でも、異世界行くと思ってないもん。

ニートが行くもんだと思ってたもん。

そして、どうせチートになるモノだと思ってたもん。


あー、なんか座った時ぐらいからちょっと騒がしくなった気がするけど、そんなことはどうでもいいんだ重要な事じゃない。

もうお先真っ暗だよ。

心無しかまわりも暗くなってる気がするし……。



「ねえ!私の目の前にいるあなたよ!聞いてるの?困ってるでしょって言ってるの!」



ん?もしかして俺に言ってる?

まあ頭上からだし俺だろうけど。

でも、知り合いなんてこんなとこいるわけないし誰だ?


まあでも顔は見とくか、かわいかったらいいな。

ちょいまち首痛い、いやまあいいか、気になる。

あーグキって来そ──



やべ、目が合っちまった。

そして近い。



でも離せねえ、かわいすぎる。

端正な顔立ちに吸い込まれるような綺麗な黒い瞳。

くそ、俺の表現力じゃこの程度のありきたりな表現が精一杯。

でも、もっと可愛さを表現できるはずなんだ。

もっといい表現があるはずなんだ。

でも、思いつかない……。

記憶力だけに頼って生きていた弊害が……。

いや、でもこれだけは言える。

超絶かわいい。


んで……、髪型はこれは……、えっと、ミディアムだかセミロングだか違いわかんないけどそれのハーフアップっていうの?

髪型とか全然わからんけど。

身長は確か俺は175cmちょいくらいだったから多分160cmはあるな。

まあ、近すぎるから合ってるか分からないかけど。


しかも、見るかぎり俺と大体同じ年齢くらいだ、ポイント高いぞこれは。

うん、かわいいな。


ってショートパンツに柄が入った白いTシャツってこの時代の服装の文明レベルどうなってんの?


今気づいたけど周りの人達もカジュアルだし。

なんで異世界にカジュアルスタイルがあるの?


いやでもこれあれだな、絶世の美少女だな。

クレオパトラよりも。

クレオパトラ見たことないけど。



「ね、え、き、い、て、る?さっきからずっと呼びかけているんだけど?」



あ、うん、やっぱり俺ですよね。

いや、目が合った時には恐らくそうだろう、というか確実にそうだと思ったんだけどさ、観察もとい見惚れてたんだよ。

意識させんな恥ずかしい。


あ、ちょっと鼻が。



「ご、ごめん。くしゃみが……」



──あー、スッキリした。



第一声がくしゃみだったけど、ちゃんと手で覆ったし、好感度は下がってないはずだ。

下がってないよな?



「はあ、まったく。なんでやっと目が合ったと思ったら第一声がくしゃみな訳?私がこんなに声を出すなんてすごい珍しいのに。さっきからずっと話しかけてる私をおちょくっているの?」


「いやいやいやいや、この俺がそんなことするわけないでしょう?」



そうか好感度は前科のせいで元から下がっていたのか。

ということは、何をしても悪影響だったか、失敗したな……。

いやでも、顔に向かってくしゃみしてたらと思うと恐ろしい。


というか無視したの2回だと思ってたけど、激怒ってことは、それよりも前からずっと俺に話しかけてきてるってことかな?

他に人はたくさんいるのに?


このに疑問に対する答えが肯定なら、もしかして……、

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