いざ、悪魔退治へ

「それじゃ、始めるぞ」


「あぁ!日頃の恨みを晴らすぜ」


俺と、師匠(仮)悪魔の試合と称した、俺の悪魔退治が始まった。





ここまで来るのに多くの苦労とストレスが貯まった。

体術も魔法も、ろくに教えてもらえずに、住ませてるからと言って、炊事から洗濯、掃除に、身の回りの世話まで、こっぴどくコキ使われた。

だが、俺は成長した。

あの日、両親を殺され、死と言う恐怖に腰を抜かし、なにもすることができなかった、あの弱々しく、忌々しい、愚かなあの頃の俺とは、もう違う。

俺は、強さを得た。

そして、その集大成を発揮する!

ワクワクと、ドキドキが止まらない。

練習は積み重ねたが、実践は初めてだ。


そして、俺はフィールドに立った。

魔法の模擬実践等では、半径約百メートル程の円上のフィールドと言う、だだっ広いコンクリートの上で行うらしい。

フィールドでは、戦闘中で使われた魔法による二次災害が起こらないように、回りを囲むように、強力なシールドが張られている。

また、あくまでも模擬戦闘専用なので、フィールド内は、仮想空間の魔法が張られていて、フィールド内での致命的な損傷は、フィールドから出るか、魔法を解くかで、すかさず戦闘前の体へと戻り、傷はすぐさま癒え、傷跡も一つも残らないらしい。

どう考えてもゆとり世代である。

しかし、後の事を考えなくて済むと言うことは、何れ程おもいっきり暴れても問題はないと言うことだ!

思う存分、戦える。

そんなことを思うと、イリシアは嘲笑うかのように俺を見ていた。


「なんだよ!ちゃんと集中しろよ!」


「ハイハイ、了解了解」


軽く遊ばれたかのようにも見えた。

そして、何かと不思議さを感じた。

なぜ、イリシアはこの戦いを受けたのか。

なぜ、いつもみたいに馬鹿にして来ないのか。

どうして、赤子を相手するかのように、軽く、簡単に対応したのか。

今日のイリシアは、いつも以上に怪しかった。

まぁ、気のせいだろう。俺こそ集中しろよ。

俺は、体をならし、準備をしていく。

計画は、簡単。先ずは、相手の動きを見る。今までもたくさん、イリシアとは戦ってきたが、それは体術であって、魔法を含んだ戦闘はこれが初めてだ。

イリシアがどんな魔法を、そして、どんな戦術を使うのかを、見定めるのは、とても肝心だ!

そして、だんだん解ってきたどこで、これまでに学習した魔法と、体術を使って、相手に合った戦術で戦う。

今の俺には、イリシアのストレス発散のサンドバッグの経験から得た、体術と、イリシアの家の書物に合った、魔法本、約七百冊が頭につまっている。

材料は揃っている、後はどう扱うかという問題だが、それについては解決済みだ、俺はこの日を予想して、何通りか作戦を考えていた。

そして、これが今回の戦いの必勝ポイント、それは、俺の成長をイリシアは全く知らないということだ。

イリシアは面倒だからといって、あまり俺には魔法を教えなかった。つまり、見ていない。

それが仇となったのだ!

これら全ての結果からして、今の俺とって、イリシアなんて簡単に見えてくる。

俺は忌々しいイリシアに完全勝利した俺の姿を、頭に浮かべ、準備を整えた。

色々と疑問があるが、その時の俺にとって、全く気にさわることではなかった。

そして、知るのだった。

俺が知らない魔法の世界を。





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