はじまり

 その夜、大森はとても眠れる状態ではなかった。心身の疲労が大森を強制的に眠らせた昨日とは違って、大森にはまだ冷静に考える体力が残されていたのだ。


 それが幸いだったのか、あるいは不幸だったのかはわからない。ただ鳴り続ける雨音と時折刻まれる雷鳴を聞きながら、大森は薄明かりをつけたままのベッドの上で、天井を相手に考察を巡らせながら深夜0時を迎えた。


 それは大森の人生において最も苦痛に満ちた二日間のはじまりだった。

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