第11話 二日目 夜

 投票の30分前、既に皆集まっていてとてもおもおもしい雰囲気だった。誰も顔を合わせようとしない。

沈黙を破ったのは進行の荒井だった。

「初日ははっきり言って情報が少なすぎるの、だから例えグレランがあたっても文句言わないでね?」

「ああ、仕方ない」

脇部も同意する。今度は誰も反対を言わなかった。そして荒井は一時置いて言った。

「私は皆に個別で疑わしい人が誰か聞いたの、それで一番多かった人が……大崎さんなの」

「⁉ちょっと待って‼それってつまり……」

荒井は大崎を指差ししながら言った。

「ごめん、今日は大崎さんに入れて」

「待ってよ‼なんで私が死ぬの?やだよ‼死にたくないよ‼」

大崎は酷くとり乱れていた。無理もない、誰だって死ぬのは嫌だ。しかもこんな理由で……。そんな大崎に脇部が言った。

「ま、まあ、まず落ち着けよ。まだ死んだと決まった訳じゃないだろ?」

「決まってるようなもんじゃん‼朝の寺口君の姿見たらさ‼」

「うッ、それは……」

脇部はいたいところをつけられなにも反論出来ないでいた。新嶋が言った。

「でも大崎さん、狩人とかの役職だったら免れるんじゃないの?」

「それならとっくにしてるよ‼でも私市民だからなにも出来ない……、ただ死ぬ事しか出来ないの‼‼」

「……どうやって投票が集まった人を殺すんだろう……」

僕は思わず呟いた。皆が僕の言葉を聞いてしばし硬直した。

「どこからか銃で撃たれる……とか?」

「でもこの敷地内だと誰もいなかったよ?」

「ッてなると塀の外から撃つのか?」

「でもここは敷地内の中央だよ?他の人に当たる確率もあるし」

皆しばし討論した。……そして討論は次第にいかに殺害を阻止するか?という論題になった。そしてその結果大崎の周りを椅子などで障害物を増やすこととなった。

 そして投票の時間になった。皆が一斉に手を上げる……。


[二日目投票結果]

大崎→荒井

大崎以外→大崎

最多票獲得者、大崎処刑


しばしなにも起きなかった。一応周りを見渡すが、やはり何も起きない。

「なんだよ、やっぱ何も起きな…」

中村がそう言った時だった。

「うッ‼、、あああアぁああああぁああ‼‼‼‼」

いきなり大崎が頭を押さえて膝をついて叫んだ。女子の何人かが悲鳴をあげた。

「お、おい‼大崎‼‼しっかりしろ‼‼‼」

脇部が近くへと近づこうとするが、それを神川が阻止した。

「あぁあ‼‼、うッ‼‼あぁああああ‼」

大崎は頭を押さえたまま頭を上下左右に揺らす、長い髪が頭の動きに合わせていく。まるでロックミュージシャンだ。

「あぁ、ああああああああああ‼」

最後に彼女は後ろ向きに倒れた。ドサッという音が響く。すぐさま神川が大崎のもとへ行く。

「……もう死んでいる」

「「「⁉⁉⁉」」」

全員が驚いた。ほんの数分前まで話していたクラスメイトが目の前で死んだのだ。しかも自らの意思で……

「……おい神川、なんで俺が大崎のもとへ行こうとしたのを阻止した?」

大崎の亡骸を見ながら脇部は菊岡並みの低いトーンで言った。明らかに怒っている。神川が言った。

「それはお前が危険だったからだ」

「危険……だと?なんでだ?」

全員が黙ってこの会話を聞いていた。神川は一端間をおいて言った。

「あの大崎の反応からして死因は……電波だ」

「電波?」

「ああ、大崎は頭を押さえて死んだ。恐らく頭に集中的に高圧力の電波を当てられたことにより死亡した」

皆の頭に?マークがついたのが想像ついた。当然僕もだ。荒井が言った。

「電波なんかで人が死ぬの?」

「……うん」

頷いたのは意外にも白城だった。

「高圧力の電波を脳に集中的に浴びせることでダメージを与えた、戦時中の日本軍もこれを利用して……いや、なんでもない」

白城がこんなにも話すのは教室でもなかったため意外だった。中村が言った。

「……でも死因は置いといてひとつ確定で言えるのは……投票でも死ぬ……」

この事実は僕らを絶望にさせたのは言うまでもない。荒井が言った。

「……とりあえず大崎さんをどこかに埋葬してあげましょう、男子で頼める?」

「わかった」

男子総出で大崎を運んだ。亡骸となった彼女の体は細身の体なのにずっしりとしていた。彼女は例の花畑に埋葬された。倉庫からスコップを取り出した為作業は早く終わった。やはりスコップは対人狼ではなかったらしい。皆はその後夜になるためそれぞれの小屋へと入った。僕も神川と話がしたかったが止めておいた。

 僕はベッドの中で考察していた。

彼女が死んで残り10人、最大3人が黒陣営、、縄はまだ足りるがそれでも……いや、今は彼女が黒陣営だったと信じるしかない……僕はそのうち眠気に負けて就寝した。

 そして人狼は道をあるく、その目的の相手の小屋に到着した。そして、流れるようにそのドアノブをひねる。なんも抵抗もなく扉が開き、中のプレイヤーが恐怖の顔を見せる。しかし、それもつかの間、人狼は相手の間合いへ一気に迫るとその手に持つナイフを相手へと突きつけた。



「残り10人」

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